※ネタバレをしないように書いています。
至高の騙し合い
情報
作者:迫捻雄
試し読み:嘘喰い 34
ざっくりあらすじ
梶たちがショウドの砦奪取に向かうが、あともう少しというところでラロの協力者・フロイドが立ち塞がった。梶とフロイドの矛盾遊技が始まる。
感想などなど
闘技場の諸々でレベルはそれなりに上がったマルコを引き連れて梶達が向かったのは、ショウドの砦である。言わずもがなラロが支配している砦であり、全国統一を目指す本ゲームの目標達成の上で重要な拠点でもある。
そこを守るようにラロから派遣されていた人物がフロイドであり、ラロの協力者の一人だ。彼は梶を迎え撃つためにゲームのルールを上手く利用した嵌め技を仕掛ける。
リアルRPGの本ゲームにおいて、タブーはいくつかある。その一つが「同国のプレイヤーを攻撃すること」であり、それを破った者にはペナルティが課されてしまう。それでは砦攻略をしているどころではなくなって、砦から逃げ出すどころではなく、ゲームに参加して獏さんを助けるといったことが今後できなくなってしまう。
それを瞬時に見破った梶。そんな梶を認めたフロイド。
これまでも梶の成長には何度も驚かされてきた。しかし土壇場で疑うことができる胆力、敵の行動の全てを見ていた洞察力、その全てが研ぎ澄まされている。これまでくぐり抜けてきた修羅場の数だけでは説明できない梶の成長に拍手を送りたい。
二人は賭郎を仲介役としたゲームによって決着をつけることに決めた。そのゲームの名前が「矛盾遊技」である。
「矛盾遊技」というタイトルが示すように、このゲームでは「矛」と「盾」が存在する。プレイヤーは「矛選択側」と「盾選択側」に別れ、それぞれ用意された矛と盾の中から「次のフェイズ」で利用する矛/盾を選択する。
次のフェイズでは、まず「BETするビオス」を決める。ここまで読んできた方ならば分かると思うが、ビオスは通貨であり、それぞれの所持している分が上限となる。ここで考えるべきは、相手の所持しているビオスの上限が分からないということ。理想は「相手がBETするビオスの少し上をBETして勝つこと」となるが、相手の上限が分からない状況ではかなり難しい。
次のフェイズではBETしたビオスが多い方が攻撃する矛側に立ち、少ない方が防御する盾側に立つ。2秒という制限時間の間に、矛側は選択された矛を持って攻撃を仕掛け、盾側は盾を持って防ぐ。盾側を○すことができたら勝利である。
このゲームにおいて重要なのは、「盾と矛の間にある関係性を理解すること」にある。用意された盾は下記の3つ。
- 木の盾
- 鉄の盾
- ゴムの盾
次に用意された武器は次の3つ。
- 刀
- スタンガン
- 拳銃
例えば。
スタンガンを使われた場合、それを防ぐには「木の盾」か「ゴムの盾」を使う必要がある。「鉄の盾」の場合、もろに電撃を受けてしまう。しかし「木の盾」では完全に防ぐことはできず、次のターンまでダメージを引き摺ってしまう。
刀が使われた場合、それを防ぐには「鉄の盾」か「ゴムの盾」を使う必要がある。しかし「鉄の盾」は10kgという重さにより、取り扱うのは困難。もしも直前のターンで電撃を受けていた場合、そのダメージを引き摺って防ぐのは難しいかもしれない。
拳銃の場合は、防ぐには「鉄の盾」を使うしかない。
それら選択肢の中からどれを選ぶか。しかも大事なのは、「自分が選択した矛/盾を使えるとは限らない」ということである。もしも自分が矛の選択で拳銃を選んだ場合、何が何でもビオスのBETで勝たなければならない。盾を選択する相手が、鉄の盾を選んでいるとは限らないからだ。
この複雑なゲームの上記力関係は、最初には分かっていない。鉄の盾の重さを考慮するには、実際に取り扱ってみるしかない。スタンガンを受けてのダメージは、実際に受けてみるしかない。
それら全てを実際に攻撃を受けて整理し、次の一手を考えるしかない。この手探り感、死ぬかもしれないという緊張感、梶君だからこそどうなるか分からない。これまで成長したとはいえ、甘さが残る梶君故の展開。
その全てがとても面白い。
フロイドという敵も魅力的だ。
作中にて彼は "暴く者" と説明されており、これまで獏が仕組んだKY事件(テレビ番組で闇を暴いた話)の裏で獏が糸を引いていたことなどの全てを知っていた。彼がラロの協力者として参加したのは、警察に追われている現状を助けてもらうため(まぁ、彼は大して焦っていないので大きな問題ではないのだろう。これまでも散々追われていたようだし。)という打算と、ラロの裏を暴きたいという彼自身の欲望を利用してのものだ。フロイドを動かす原動力は、暴きたいという欲ということをラロは理解していたのだ。
フロイドにはギャンブラーとしての知略と度胸はかなりのものだった。これまで梶のことは調査していたらしく、どういう人間なのかはある程度、理解しているらしかった。だからこその作戦で梶を追い詰める。
しかし梶は常にギャンブラーとして成長し、獏に近づかんとしている。ここまで読み切ることが、果たして彼にできるだろうか。先の読めない展開が続くゲームであった。