※ネタバレをしないように書いています。
至高の騙し合い
情報
作者:迫稔雄
試し読み:嘘喰い 38
ざっくりあらすじ
ラロが三国統一し、貘の敗北で終わったかに思われたが、それは新たな戦いのきっかけにしか過ぎなかった。状況は混沌を極め、運営・賭郎・アイデアルの三つ巴のリアルな戦争の幕開けである。
感想などなど
賭郎の支配者・お屋形様になるための勝負・屋形越えへの挑戦権を賭けたMMORPG「プロトポロス」での争いは、食料の物流を支配し、薬物を混ぜてばらまいて地獄絵図を作り出したラロが、三国統一を果たしたことで幕引き……かと思われた第三十七巻。
実際はそんな単純ではなかった。
今回のゲームの勝利条件は最終日12/31に皇帝になっていること。
ちなみにラロが皇帝になったのは12/23、これから一週間は「カイザーフェスタ」と呼ばれる皇帝が誕生したことを祝うお祭りが始まり12/30にはリセットされる。つまり、12/31にはラロは皇帝ではなくなる。
12/31にゲームのルールに則った選民が行われ、次の皇帝も選定されることになる。しかし、この時に皇帝の前任者は選ばれない。つまりラロは詰み。どう足掻いたところで屋形越えへの権利は得られない。
追い込まれたラロだが、諦めた様子はない。
ラロに出来ることを考えて見よう。ラロとしては賭郎という組織の支配権が欲しいのだから、貘を脅迫するなりして自らの傀儡にして屋形越えをさせるという方法……ふむ、これが一番現実的か?
別の方法として、運営を乗っ取ってしまうという方法も考えられる。まぁ、でも、30巻にて決めたゲームのルールにおいて、「ゲームの協力者は4人まで」と賭郎立ち会いの場で決めている。ちなみに、このルールを提案したのはラロだ。
さて、ラロが選択した作戦は「運営の乗っ取り」であった。
しかし、先ほども言った通り、ラロの協力者は四人。しかもラロの協力者の一人・ジョンリョは伽羅との争いの末に死んでいる。この戦況で運営を乗っ取ることなど出来る訳がない……と思ったところに、島に乗り込んでくるラロが運営するアイデアルの人間が乗り込んで来た。
これは賭郎が取り仕切るギャンブルの公正さを損なう重大な問題であり、立会人にとっての粛正対象となる。さらにゲームの運営側にも不穏な動きがあるようだ。こうして賭郎×運営×アイデアルの三つ巴の争いが始まった。
暴の強い者が全てを制し、秩序が完全に失われて混沌と化した。あらゆる犯罪行為がそこら中で発生し、敵も味方もない全員が敵のような状態である。先ほどラロがこの状況から勝つ方法を二つ提示したが、 "やるべきではない" と一度は判断されたが可能性の一つの方法として、貘の殺害がある。
なにせ貘が死んだところでラロが皇帝になれなければ意味が無い。ラロも貘も、共に皇帝になれなかった場合は両者の敗北、すなわち死。考えれば考える程、ラロが貘を○すことへの意味を最初は感じられなかった。
とはいえ、そもそもこんな状況で貘が死んでしまうという可能性もゼロではない……それくらいに運営も血生臭く蠢いている。賭郎も単純な一枚岩ではないような嫌な感じがあり、もう何が起きても驚かないくらいには……そう思っていた。
この第三十八巻の展開はあまりに怒濤である。死んだ人の数もさることながら、この壮大なMMORPG「プロトポロス」が作られた背景や、ラロの残りの協力者の存在が明かされていく。これまで姿だけ見せていた立会人達の戦う姿……あれほどかっこ良かった立会人達が死に、彼らを相手取ったアイデアルや運営の人間も死に、そこら中に死体の山が積み上がっていく。
特に語りたいのはゲームを作り上げ、神と敬われる男リチャード・アラタの崇高な目的である。詳細はネタバレになるため語れないが、ゲームを作り上げながらアウトローの長としてゲームに参加していた意味や、隠されていた莫大な紙幣の存在、それら全てが繋がっていくと、ラロや貘ですら喰いかねない化物の顔が現れた。
そもそも真っ当な人間には見えなかったが、その裏の顔がはっきりとした時の恐怖は最高に面白い。
ラロは皇帝になる手段を失ったが、それがつまり貘の勝ちにはならない。貘は12/31に皇帝に選ばれる必要がある訳だが、そのために満たさなければいけない条件というものがある。
まず上級職であること。そしてLv80であること。
Lvは滅多なことでは下がらないが、ゲーム中来ていなければならないインナーの充電を切らしてしまった際、ペナルティとしてLvが下がるようになっている。ゲームではお馴染みのLv79からLv80まで上げるのは簡単にはできない。これまでのようなお膳立てのレベル上げが、この状況でできるとも思えない。
となると、いつの間にか命を狙われることとなっていた貘は、インナーを充電できる場所に移動しなければならない。しかし、どうやら充電ができる場所=運営が探知できる場所になっているようだ。
あとは一週間生き延びるだけという簡単なゲームではない。これは使えるものは全て使って利用して喰って、最後に笑っていた者が勝つゲームだ。そのことが嫌というほど分かる第三十八巻だった。