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【漫画】嘘喰い4 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

至高の騙し合い

情報

作者:迫捻雄

試し読み:嘘喰い 4

ざっくりあらすじ

ポーカー勝負に逆転勝利した梶に対し、賭郎立会人・能輪は『次期立会人候補の李とマルコの一騎打ち勝負』を持ち掛ける。

感想などなど

この第四巻、珍しく賭けらしい賭けが行われない。ここでいう賭けらしい賭けというのは、騙し騙される頭脳戦が行われないということだ。冒頭、賭けで梶に負けた屈強な男達の取り立てシーンから始まっていく。

賭郎の取り立ては絶対、命までも取り立てるという話はこれまで描かれてきた。そんな絶対の暴力を有する賭郎の取り立てが目の前で行われるのだ。これは見物である。立会人・能輪の後ろにいた立会人候補・李が動き出し、金が足りない男から命を奪わんと拳を振るった。すると軽々と男が一回転して宙を舞う。その絶対的な力の差に、誰も止めることなどできない……そう思われた。

ただ一人マルコだけが、その一方的な暴力を止めようと割って入るまでは。

マルコは暴力を好まない男として獏の仲間となった。獏だけが殺さなくていい、と殺し以外の生き方を教えてくれたのだ。その教えに従うかの如く、暴力団組員という屑男を庇い、李との殴り合いに乗り出した。

さて、それを見た立会人・能輪は梶に賭けを持ち掛ける。どっちが勝つか……梶としては「マルコが負けるはずがないだろ」と賭けを受ける。一方、能輪としては状況を冷静に鑑み、李が負けるはずがないと結論を下した。

その根拠はかなり説得力のあるものであった。その根拠はただ一言「マルコの拳には殺意がない」。なるほど、マルコにはロデムという裏の人格があり、注射によって切り替わる。かつてQ太郎の廃ビルにて猛威を振るっていたのは、そのロデムの方だった。

マルコの身体能力はロデムのそれかもしれないが、殺すという意思は薄いと言わざるを得ない。それをロデムとマルコの二重人格のことを知らないはずの能輪が、そのことを瞬時で見抜いたのは流石と言うべきだろう。

そんな予測通り、マルコの拳は李の意思を奪うには足りず、逆に倒されてしまう。

つまり梶とマルコの負け。崩れ落ちる梶。マルコが負けるなんて予想外だったのだろう。絶対的な暴力を持って賭けの正当性を保持する賭郎にとっては、負けてはいけない戦いではあったのだろうが。

しかし、能輪はここで欲を出し過ぎた。賭けで勝ったということで、マルコを自身の物にしようとして注射を刺してしまった。すると現れるのはロデオである。先ほどまではなかった殺意が拳にこもる。絶対的な暴力が振るわれるシーンというのは、男の血がたぎる。

そんな状況になって現れる班目獏が狂気じみていて最高だ。

 

さて、後半は佐田国一輝というテロリストの男と、班目獏の賭け事が始まるまでの過程を描いている。過程だからといって侮ってはいけない。ここからすでに勝負は始まっているのだ。

互いに自分が有利な空気に持ち込もうと画策し、相手の心を折ろうと言葉を紡ぐ。相手となる佐田国一輝の持つ狂気はかなりのもので、命を命と思わない気迫を描く作画は見事なものだ。

そしてもっと見るべきは、各所に散りばめられた違和感である。この第四巻の感想を書いている時点で、第五巻は既読済みであるのだが、「なるほど」と思わずうなってしまうようなシーンが多い。

後になって違和感が違和感と認識できるとでも言うべきか。これぞ伏線という漫画だと思う。丁寧に読むべきシーンの連続であった。

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