※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
制服が水着です。
情報
作者:さがら総
イラスト:カントク
ざっくりあらすじ
ポン太の妹・エミが学校見学をしたいっ、て言うから僕は彼女を連れて学校に行くことにしたんだけど、何かおかしい気がするんだ。みんなの制服が水着だし、みんなが僕のことを王子って呼ぶし……うん。何かこのままでもいいや!
感想などなど
相変わらず変態的語彙力は顕在である。キャラの変態的性質は鋭さを増し、変態は変態として立派に変態してくれている。この作品で「勉強する」がインドネシア語で「ブラジャー」ということも学んだので、自分の語彙力も順調に増えている。今後、「ラノベで語彙を学びました」と胸を張って言うことにする。
さて、毎度頭を空っぽにして読むことができる『変態王子と笑わない猫。』であるが、今回は少しばかり考えて読まないと混乱する。
まず読者が最初に突き当たるだろう困惑ポイント、エミって誰やねん。1と2巻に登場していたというならば謝罪する。流石に頭を空っぽにして読み過ぎただろうか……。
ツインテールのツルペタ、可愛らしい笑顔に言葉使い(?)、横寺を「おにーちゃん」と呼ぶエミ。ロリコン王子である彼にとって、ロリ要素の玉手箱ことエミはかなり魅力的に見えたらしい。流石、変態。憧がれないが、その熱量だけは見習うべきかもしれない。また、このエミというキャラに対する印象で、本作の評価は大きく分かれる気がする。
そんなエミと共に学校を巡るが、彼女は「つまらない」とぼそりと呟く。まぁ、それもそうだろう。だって普通の高校なのだから。体育祭や文化祭があっていれば楽しかったのだろうが、彼女の都合一つでイベントを開催する訳にもいかない。
そんな時。状況が変わっていく。
まず、制服が水着になる。どこを見てもスク水女子高生しかいない状況は、変態さんどころか世の男子高校生は皆喜ぶことだろう。まぁ、いつも見てたら逆にどうでもよくなるという可能性もあるが。
次に、横寺という変態王子が、周囲の同級生達に王子と呼ばれている。うっかり女子更衣室に侵入してしまった王子に対してブラジャーを分け与える同級生、小豆梓を追いかける王子にピンク色の声援を送る女子高生達……なかなかにシュールである。
さらに学校の至る所に現れるイタリアの遺跡群。何故イタリア? という疑問が思い浮かぶが、考えても仕方がないのだろう。
……さて、状況の奇妙さが分かって貰えただろうか。
そんな状況を作り出すことが可能なのは、『笑わない猫の象』ただ一つである。ここで考えないといけないのは、『誰の願いによるものか』ということである。その誰かが、「取り消し」を宣言すれば状況は変わり解決となるのだが、誰がどんな願いをしたのかが分からないのだ。
「制服をスク水にして、同級生達に王子と呼ばせるなんて願い、横寺が犯人だろ!」と思われるかも知れないが、シーンとして横寺が『笑わない猫の像』に願ったシーンは存在しない。横寺の一人称視点で進んでいくため、彼の困惑が読者にも伝わってくる。
つまり、彼が直接の犯人だとは考えにくい。
……横寺が願いそうなことを願ったのは一体誰なのだろうか。
全体的に変態だが、どこか物悲しいような、切ないような雰囲気が背景に存在する。「なんでだろう」と思ったら、この作品、女子の泣くシーンがかなり多いのだ。筒隠月子は泣くことが出来なくなってしまったが、彼女の「泣きたくても泣けない」といった台詞が直接的に心情を示してくれる。
変態さんは今回、どこかの誰かさんを救うことができるのか。中盤以降は一気読みになること間違いなしの作品だった。