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天才王子の赤字国家再生術 〜そうだ、売国しよう〜 (2) 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

隠居したい

情報

作者:鳥羽徹

イラスト:ファルまろ

試し読み:天才王子の赤字国家再生術 2 〜そうだ、売国しよう〜

ざっくりあらすじ

帝国の皇女ロウェルミナとの縁談話が突如として持ち上がり、旨すぎる話に罠の気配を感じるウェイン。実際に会ってみると、彼女から帝国の乗っ取りを持ちかけられてしまう。その話にも裏があると考えたウェインは、面倒なことに巻き込まれないように画策するが――。

感想などなど

政略結婚という言葉がある。力がある者の家に娘 / 息子を嫁がせることで、その家との繋がりを作り出し利益を引き出す。単純だが実に効果的な生き残り戦略であろう。しかし家のためにと、親が子に望まぬ結婚を強いるという側面も否定できず、それが起因して生まれた悲恋は物語として定番である。

ナトラのような弱小国の王子が、帝国の皇女と結婚ともなると、それによって動く政治や金は大きくなる。ナトラ国民にとっては実に喜ばしいことであるが、帝国からしてみれば皇女が弱小国に取られたという風にも見える。

だがそんなことを考えたところで捕らぬ狸の皮算用。天地がひっくり返っても帝国と弱小国との間で縁談が持ち上がることなどあり得ない……と思っていたのに。ウェインの元に皇女ロウェルミナとの縁談話が持ち上がった。

先ほども書いた通り、帝国には何一つとしてメリットのない婚約である。ナトラだけがただ得をする話に裏があると感じたウェインは、ひとまず皇女と会ってみることにした。もしかしたらウェインのことが好きで好きで好きで仕方なくなったからかもしれないし……なくもないし。

 

しかしながらロウェルミナが実は、学院で一緒に絡んで悪さをしてきた人間だと分かった。

ウェインはかつて、帝国の学校に身分を隠し平民として通っていた。そこでトップクラスの成績を修めていたことは第一巻で明かされている。その学校で出会い、地方の貧乏貴族の娘を名乗っていた人物ロワが、実は皇女だったという訳だ。

そのロワはヤンチャな女であったという。密売された骨董品などを盗んで売り捌いたり、あくどい貴族を騙したりと、考え得る限りの悪さを働き、その発起人は全てロワだったという裏の顔を知るウェイン。この縁談もまた、その悪さの一つであろうと推測した。

その裏を探ろうと、ニニナとロウェルミナとウェインの三人だけで話し合う場を設けると、意外過ぎる話を持ちかけられる。なんと帝国の実権を自分が握りたいというのだ。

現在、帝国には国王がいない。その実権争いが三人の王子の間で起きている。その争いには皇女であるロウェルミナは入ることができていない。理由は単純だ。彼女が女性だから、その一言に尽きる。

帝国には女性が実権を握るなんて……という根深い差別意識がある。これは長い歴史の積み重ねによって生まれた意識であり、誰が悪いという話しではないのが厄介だ。そこでウェインに協力してもらい、帝国の実権争いに自らも強制的に参加するということを考えているようだ。

なるほど、実感がこもっている。これが本当だとすると、ウェインは帝国の今後を左右するような重大な騒動に巻き込まれることになる。しかしウェインはそんなロウェルミナの言葉を信用していなかった。

もっと裏があるはずだ。さらに探りを入れていくと、アントガタルという伯爵の名前が浮上し、さらには最近になってナトラ国を流通し始めた武器との関係性にまで発展。これはナトラ国も避けられない机上の戦争に巻き込まれていくことになる。

 

帝国は東側を治める巨大な国であり、その国力はナトラとは比較にはならない。そんな帝国の国王の席を争って、三人の王子が争っている。つまり今は無政府状態という訳だ。帝国を討ちたいとしている者達にとって、今は狙い目である。

しかしながら腐っても帝国。ちょっとやそっとではその礎は揺るがない。

ではどうするべきか?

敵は馬鹿ではない。頭を使う。どうすれば帝国の根幹を揺るがし叩けるのか、その最善手を模索し、利用できるものは利用するだろう。その利用される対象に、もしも自分が選ばれたとして、そのことに気付いたとして、ウェインはどのような行動を取るのだろうか。

その答えがこの第二巻にはある。複雑な物語であった。

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