工大生のメモ帳

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安達としまむら7 感想

【前:第六巻】【第一巻】【次:第八巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

関係が、少しだけ変わる日

情報

作者:入間人間

イラスト:のん

試し読み:安達としまむら 7

ざっくりあらすじ

安達としまむら、二人の関係が変わっていく日常。

「君の笑顔を感じながら」「ひとときでいい安らぎに」「ありふれた言葉を並べて」「小さく祈ってる」

感想などなど

「君の笑顔を感じながら」

 恋愛が成就した先の物語はあまり読もうとしたことがない。

「君に届け」で思いが届いてしまってから先の展開に興味が沸かなかったり、森見登美彦作「四畳半神話体系」の締め(だったと思う)のワンフレーズ「成就した恋愛ほど語るに値しないものはない」に妙に納得してしまうような人間だから、第六巻を読んで第七巻を読むのは止めようかと思った。

花火の上がる夏祭りで付き合うことになった安達としまむら。堂々の完結……と言っても差し支えはなかろう。

しかし、読んで感想を書いている。これは如何なものか?

色々と考えたが、あの告白に特別な意味を見出せなかったのだと思う。安達としては緊張と感情が複雑に入り乱れての決死の行動だったことに違いはない。それを受け取ったしまむらの胸中はとても穏やかであった。付き合ったとしてこれから先に二人でどんなことをするのか考えて、「なんだ、これまでと変わらないじゃないか」という結論を出して付き合うことにしたしまむら。

二人の抱く感情にどうにも差を感じた。思いを伝えた安達と、それを受け取ったしまむら。二人の物語はここからスタートなのではないだろうか、と。

これまで誰かと深い関係になることのなかったしまむらにとって、安達は深いところにまで入ってくる初めての人になる。それにしまむらはどう向き合うのか、それが見たくなったのかもしれない。

このエピソードは、しまむらと安達が電話でいちゃいちゃする話だ。しまむらのデレは強烈であることが証明された一話と言い換えてもよい。安達の努力が報われたと言ってもよいかもしれない。

安達もしまむらも互いに思わず零れる幸せそうな笑みが、これから先も続いていくことを願う。

 

「ひとときでいい安らぎに」

夏休みも終わり新学期が始まる。ということで一緒に登校するために、早朝からしまむらの家へと赴く安達。しっぽを振って駆け寄ってくる犬みたいで微笑ましい。そんな安達を迎えるしまむらとしまむら母(と宇宙人としまむら妹)達の朝食風景は、家族公認みたいな関係性である。

そんな中、「ここで付き合ってると告げたらどうなるだろう?」などと考えるしまむらの小悪魔感とでも言うべきか、付き合っているということに浮足立っているとでも言うべきか、きっちり恋人関係であると受け入れていることが、とても微笑ましく思える。

しまむらは付き合ったとしても何も変わらない、という風に考えていた。しかし、それは間違いだったと思う。

たかが告白、されど告白。好きだと言って言われ、それによる影響を受けないことなど不可能だったはずだ。これまで通りの関係性を維持などできるはずもなく、日常的に、朝から晩まで互いのことを思い合う日々が続いていくことになる。

そんな日常の些細な切り取り、良い話であった。

 

「ありふれた言葉を並べて」

安達の愛は重い。第五巻の感情爆発してから超絶長い電話騒動の時点で、いや、もっともっと前の段階――一巻で宇宙人と仲良くしているだけで嫉妬するような彼女の恋愛感情が、軽いはずなどなかった。

しまむらは誰かと深い関係になることはなかったかもしれないが、誰とでも仲良く話をすることはできる程度のコミュ力は兼ね備えていた。それにどこぞの誰かのように、周囲に人を寄せ付けない氷の女みたいな壁を作ったりもしていない。クラスは変わったとは言え、日野や永藤とは会えば話をする仲ではあった。

しかし言ってしまえば、しまむらにとって本当に仲良くしている相手は安達だけである。樽見との電話を無視しがちであったり、クラスで一緒にお弁当を食べた相手の自己紹介を聞いたはずなのに名前を認識していない辺りからもそれは伺える。

それなのに安達は不安で仕方がない。ことあるごとに浮気だと宣う。いやはや、二人の将来は前途多難。そんな嫉妬する安達を軽くあしらうしまむらの心情にも注目して読むべき話であった。

 

「小さく祈ってる」

祈りに効果があるのだろうか。きっとあるのだろう。この話を読む限りは。

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