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【漫画】寄宿学校のジュリエット11 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

禁断の恋

情報

作者:金田陽介

試し読み:寄宿学校のジュリエット (11)

ざっくりあらすじ

2年生となり、雑務係として1年生の指導係を任された露壬雄とペルシア。しかしその仕事はかなり大変なものであって――。

感想などなど

さて、第十巻から本格的になってきた監督生選抜選挙に向けての戦いは、まだまだ続くといったところの第十一巻。玲音と蓮季の学業完璧の二人と、喧嘩最強の露壬雄という三人で争うことになっている。

玲音の白猫に対する憎悪の強さと、藍瑠の雑務係に選ばれるだけはある彼女の手腕に脅かされつつ、他の人を巻き込みつつ愛される蓮季のリーダーとしての素質に惚れ直しつつ、露壬雄は世界を変えてペルシアと一緒になるという目的のために今日も奮闘する。

まずは学業。お世辞にも成績はよろしくなく、順位としては290人中110位という何とも反応しずらい位置。10位以内に入れば、名前が張り出され知名度の向上につながり、皆からの信頼を集められるということで、100人抜きの10位以内を目指すことに。

しかも蓮季や玲音は頼れない。いくら友人であるとはいえ、一応は彼女らもライバルである。露壬雄は一人で勉強して、10位を目指すという覚悟を決めた。その覚悟は本物で、なんと4日以上も徹夜するという逆に良くないのでは……? というような勉強方法を実践していた。

しかも雑務係としての業務を並行して、だ。そんな彼の姿を見て、心打たれたのが彼の上司に当たる手李亞である。彼女は露壬雄の負担を少しでも減らすため、彼の元に舞い込んだ仕事を自らが片付けていくことに決めた。彼女の献身には、思わず惚れそうになってしまった。危ない危ない。

そんな露壬雄のテスト結果は、是非とも読んで確認して欲しい。

 

そんな第十一巻の本筋は、露壬雄とペルシアに任された1年生の指導である。雑務係としてそれぞれクラスを担当し、問題を起こさなように厳しく目を光らせ、困っている生徒がいたら助け、いわば教師のように振舞う。

かつての露壬雄は相当に迷惑をかけたのだろう。喧嘩、喧嘩の毎日だったことは露壬雄は自らが語っている。先輩からしてみれば、あまり関わりたくない生徒だったことだろう。そんな生徒がこうして1年生を指導する立場になるとは、色々と感慨深いものがある。

そして露壬雄が任されたクラスは、蓮季の弟・晃葵が率いるクラスだった。

このシスコン君、露壬雄に対してかなり反抗的な態度を取る。かつて姉である蓮季を傷つけた露壬雄に刀を突き付けた過去があり、その因縁はもう解消されている。だとすれば、この弟は一体何に対して怒っているのか?

そんな少年の心情は複雑だった。彼は姉との一見で、露壬雄のことをかなり認めていたようなのだ。そして露壬雄と一緒に白猫の野郎どもと喧嘩できることを期待していた。しかし実態は、露壬雄に喧嘩をしないように止められる日々であり、その期待とのズレが反抗として現れていたのだ。

とはいっても露壬雄としては白猫との喧嘩はして欲しくない。それでも白猫と黒犬との間にある対抗心は、そう簡単に止められるものではない。それらを上手く解消していくこと、戦いには喧嘩だけではなくスポーツや勉強もあるということを知って欲しい。

そんな露壬雄の想いが、晃葵を始めとする一年生に伝わるか。そこが物語の肝となる。

 

人に自分の考えることは難しい。相手がこちらの意見に耳を傾けようとしてくれているとすれば、こちらとしてもやりやすい。しかしそうとは限らないのが、実際の現場における辛いポイントだ。

こちらの意見を聞く気がない相手には、相手と同じ目線になって話す、相手がどうして聞いてくれないのかを理解する、というような工夫が必要になってくる。ペルシアと露壬雄は、そういった工夫をかなり変わった形で行っていく。

例えば。

この第十一巻ではギャル化したペルシアを観測することができる。美人はどんな格好をしても美人で可愛いということが学べた。ギャルもありかもしれない、と無駄に性癖が追加されるところだった。危ない危ない。

そんな危険に満ちた第十一巻。安定した面白さであった。

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