工大生のメモ帳

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【漫画】少女終末旅行⑤ 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻】

※ネタバレをしないように書いています。

絶望と仲良く

情報

作者:つくみず

試し読み:少女終末旅行 5巻

ざっくりあらすじ

文明が崩壊してしまった世界で、ふたりぼっちになってしまったチトとユーリ。愛車ケッテンクラートに乗って、廃墟を当てなく彷徨う彼女達の日常。

感想などなど

「水路」

黒い建物(船、もしくは潜水艦だろうと思うが)にて、魚の缶詰などを補充したチト達は、謎の生物達の言葉に従って、最上層に行くための昇降機へと向かっている。その道中、地面に大きな亀裂が走っており、その下には水がいくらか流れているようだった。

亀裂にロープを下ろし、水路で水を補充しながら、SAKANAとローマ字で書かれた缶詰を開け、魚を食べるチトとユーリ。魚を食べるのは一巻での「洗濯」以来だ。この世界ではもう一匹しか残っていない魚を、美味しそうに食べる二人の様子は微笑ましい。

魚を一杯食べさせてあげたい。だがそれは叶わぬ夢である。

 

「怪我」

頭上から瓦礫が落ちてきた。

終末の世界において、それはいつ起きてもおかしくない事故であると思う。それにより脚を怪我してしまったチト。命が助かっているのは不幸中の幸いだが、食料や水を求めて動き続けなければいけない彼女達にとって、運転手である彼女が動けなくなるというのは致命傷であろう。

だが、彼女達にはまだ元気に動き回れるユーリがいる。

辛うじて、記憶の片隅にケッテンクラートの運転方法が残っていたユーリの運転。進んでいるかと思えばバックし、スピードが不安定な運転に対し、後ろで乗っているチトは生きた心地がしなかったであろう。

事実、その運転で死にかけたり。逆に無茶な運転で救われることもしばしば。

「運転は絶対に二度としなくていいから」とチト。「私 けっこう上手かったと思う」と自信満々なユーリが彼女らしくて好きだったりする。

 

「美術」

美術は心を豊かにするという。そんな美術は余裕がある時にしか生まれないともいう。奴隷制度が素晴らしい芸術を生んだという文言を見たのは、一体なんの作品だったか。

この終末世界にも、過去の人達が作った美術作品は残っているらしかった。人を形作った石像に、風景を切り取って描いた風景画。それらに対し、「カメラで撮ればいいじゃん」というもっともなことを言うユーリ。その発想は、すでに過去の芸術が辿っている。

そのままを描き抜き出すのではなく、絵でしか表現できない抜き出せない世界を描く。

そうして芸術は様々な形に変貌を遂げる。そうして出来上がった絵画達を見たチトとユーリは、感情の赴くままに感想を呟く。そんな絵画達の果てには、一枚の絵画が追加された。

ユーリが描いた人類最期の一枚は、是非とも漫画を買って見て欲しい。

 

「衣服」

久し振りの水場、着ていた服を洗濯しつつ、飛び込んで遊ぶ二人。良くある終末のワンシーンだ。

そして少し周囲を探索。大量の布を発見した。それらを繋いだり穴を空けたりして、お洒落をしてみる。二人にお洒落という意識はないだろうけれど、端から見れば少女二人のファッションショーだ。

衣服の歴史は長いけれど、お洒落の始まりは何となくから発展したのかもしれないと、適当なことを思うブログ主だった。

 

「煙草」

ブログ主は煙草を吸ったことがない。ただ友人に吸っている人がわりといたので、ちょっとだけ詳しい。

正直なところ、煙草を吸いたいと思ったことは一度も無い。ただこの漫画のこのエピソードを読んだとき、二人が感じた不思議なイメージを、自分も感じてみたいと思った。

ちょっぴりビターで不思議な世界。煙草の煙を吐き出す姿を、魂が抜けると表現したユーリの発想力が、個人的には愛おしい。

 

「爆発」「忘却」

「…私 爆発って好きだな」「なんか生きてるぞって感じがしない?」

昇降機のある建物の扉を開けるため、爆発させた時のユーリの台詞だ。これにはチトも同意した。

その爆破でも開かない扉、夜になると勝手に開くその先にいたのは、建物を管理する人工知能だった。その彼(彼女?)に、私の役目を終わらせて欲しいと頼まれた。永遠に死ぬことができず、ただ時間だけが過ぎ去って、無為の記憶ばかりが積み重ねられていく世界を、生きていくのが辛いのだと語った。

その死ぬために必要な処理が、忘却だった。忘却と死が等号で結ばれる。その処理が救いになることを願うばかりだ。

 

「故郷」

ここでチトとユーリが辿ってきた過去の記憶の一端。幼い頃の故郷のシーンに移る。そこで語れるのは、二人が上を目指していた理由だ。

「…私 思い出したよ」「上に行けっておじいさんが言ったんだね」

忘却していたことの寂しさを、二人は噛みしめ、最上層を目指して旅を続ける。

二人に幸あれ。

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