工大生のメモ帳

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忘れえぬ魔女の物語2 感想

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻】

※ネタバレをしないように書いています。

絶対に忘れない

情報

作者:宇佐楢春

イラスト:かも仮面

試し読み:忘れえぬ魔女の物語 2

ざっくりあらすじ

今日を五回繰り返す相沢綾香は、そのすべてを記憶し、同じ失敗は二度と繰り返さない。そんな彼女に初めて友達ができた。そんな魔女の物語。

感想などなど

第二巻はあまり読む気がなかった。

第一巻で綺麗に終わっているし、以降の物語を見たいとはあまり思えなかった。理由としては、『相沢と千散、二人だけの世界から物語が広がらないと思った』から。相沢と千散を除いた登場人物を、ブログ主は相沢の従姉妹・優花しか思い出せない。第二巻以降も、相沢と千散の二人だけの閉じた世界で展開していくならば辛いなぁ……そう思っていた。

あの二人だけの甘々の世界も嫌いではない。ただそれは第一巻でお腹いっぱい。ここから先、二人のいちゃいちゃを延々見せつけられるとすれば、少なくとも自分の好みではない。

それがまぁ、予想外の展開を魅せてくれた。期待値が限りなく低かったということもあるが、思いも寄らない世界の広がりをしていく。

新たな魔女の出現である。

 

魔女とは何か?

相沢のように一日を五回繰り返すといった超能力染みた力を持った存在のことを、魔女という風に呼称している……作品を読み進める上では、この程度の知識で問題ない。

魔女はどのようにして誕生するか?

……第一巻を読んでも解決しない命題である。相沢は生まれながらにして、一日を五回繰り返すという力を持っていた。ここだけ見ると魔女か否かは生まれたその瞬間に決まっているような気がする。

それは間違いであった。

この第二巻では相沢と千散のいちゃいちゃ生活の裏で、新しい魔女が誕生し、二人の生活――いや、人生を脅かしていくまでの過程が描かれ、それにどう立ち向かっていくかという葛藤が描かれていく。

そう、能力は後から出てくる可能性がある。まぁ、素質自体は生まれた瞬間に決まって、覚醒するか否かが生きていく過程で決定するという仮説は否定できない。我々読者が、魔女という存在を本当に理解するには説明があまりに少ない。

読者は相沢と千散の葛藤を見ながら、魔女という存在の理解を深めていく。

魔女とは、本人の意思とは関係なく周囲の世界を壊していく者なのだ。

 

最初の方に読む気がなかった理由を、『相沢と千散、二人だけの世界から物語が広がらないと思った』というように説明している。第二巻以降、ただいちゃいちゃするだけで終わるような気がして、その展開ならば嫌だと思っていた。

ただいちゃいちゃする、つまり物語における終着点がないと勝手に思っていた。それは一読者としての勝手な思い込みだったなと反省している。

第二巻始めの方は、ただいちゃいちゃする二人を描き、「わたしたちは付き合っているのか?」「キスはしたしなぁ」といったようにもどかしい葛藤をしている。もしかして、このまま付き合っているか否かを考えるだけで一巻終わるのか? と嫌な予感が脳裏をよぎる。

それが新しい魔女の出現という良い意味での裏切りを受け、世界は広がっていく。そして相沢が明確な、自分の夢を提示してくれたことで、物語の終着点というものがくっきりとした形を持って現れた。

周囲の関係を本人の意思とは関係なく壊していく魔女、そんな彼女が望むささやかな夢は、それはそれは難しく険しい。この夢を叶えるまでは、本シリーズに付き合ってもいいかもしれない。そう思えた第二巻であった。

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