工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました2 感想

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻】

※ネタバレをしないように書いています。

ラスボス飼ってみた

情報

作者:永瀬さらさ

イラスト:紫真依

試し読み:悪役令嬢なのでラスボスを飼ってみました 2

ざっくりあらすじ

魔王クロードと婚約を結んだアイリーン。一方のクロード自身も本格的に皇帝を目指して行動を開始した。そんな中で起きた魔物反乱事件を解決するため、乙女ゲーム2作目の舞台であるミルチェッタ学園に男装して潜入し、ラスボス・ゼームスの攻略を開始したが……。

感想などなど

聖剣の乙女リリアに婚約者セドリックを奪われたアイリーンは、魔王クロードと婚約を結び、自分が殺される結末を回避した。セドリックに拉致され、犯されそうになった時、クロードの暴走を想像し、「ゲームのエンディングは避けられないのか」と絶望した読者も多かったのではないだろうか。

そこからリリアに聖剣を突き立てられたアイリーンが、逆に奪い返すシーンの美しさよ。竜と化したクロードを竜に戻すためのキスの美しさよ。

ラストの追い立てるような急展開に感動した読者の一人であるブログ主は、第二巻以降を読む気はあまりなかった。

この辺りのブログ主の心情は、あまり理解されないらしい。なんというか恋物語は成就するまでが楽しいというか、そこから先は完成された恋を破壊しようという展開が用意されるばかりで悲しくなるというか……とまぁ、そんな物語に心躍らない。

とはいえ、クロードとアイリーンの関係は、よく考えてみるとまだまだ発展途上だ。クロードは皇帝になるために行動を開始した訳だが、そのための道のりはまだまだ険しい。クロードもアイリーンも互いにベタ惚れということは疑いようもないが、それにしたってぎこちない。

第二巻も買ってしまったし、という一種の諦めも込みで読み進めると、思った以上に二人が婚姻するための道のりは長かった。その諸問題の一つが、魔物の全てがクロードに従っているわけではないという状況である。

どうやら人に媚びへつらう、特にアイリーンとかいう聖剣を持っている女に熱を上げているという事実が、気に入らない魔物がいるらしい。まぁ、魔物にとってしてみれば聖剣は大敵であり、できることならば滅ぼしたい相手である。そんな聖剣の持ち主と仲良くどころか恋仲という状況が面白くないのは分かる。

そのため魔王を困らせようという動きが目立つようになる。

その事件を解決すべく、ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の続編の舞台・ミルチェッタ学園に男装して潜り込んだアイリーン。目的はラスボスであるゼームスの攻略である。

 

続編のあらすじをざっくりと語るならば、学園を舞台にして起こる事件を解決に動く生徒会活動をしながら、男ヒロインを攻略していくというものだ。主人公が巻き込まれていく事件の鍵を握るのが、魔香と呼ばれるアイテムである。

この魔香が漂わせる甘い香りは、魔物を興奮状態にさせる効果があり、ひとたび嗅いでしまえば理性を失い周囲の人々を襲って回るようになってしまう。そんな危険アイテムは、魔物と敵対している組織である教会が管理しているようだが、それがどうやら流出したらしい。

その魔香の流出先は学園であるらしく、その目的は半分魔物の血が流れているゼームスに嗅がせることで暴走させることなのでは? ということが徐々に分かっていく。

そもそもゼームスが半分魔物の血が流れているという情報は、ゲーム内ではかなりどんでん返し的な要素のようだが、そんなことプレイ済みのアイリーンはご存じの情報である。魔香というアイテムの効果も知っており、意気揚々と学園に乗り込んでいく。

まぁ、そこまで知っていれば楽勝に解決できると思うのも無理はない。しかし、状況はそう簡単ではない。

まず第一に、続編の時点ではクロードは死んでいることになっている。第一作『聖と魔と乙女のレガリア』では、どのエンディングに行ってもクロードは死ぬことになる。それが生き残ってしまった状況となると、考えるべき最悪の事態がある。

もしもクロードが魔香の匂いを嗅いでしまったら……?

クロードが暴走したとして、誰が止められるのか? 聖剣はアイリーンが持っている状況である。アイリーンにクロードを殺さずに止める実力があるかと言われれば、ないと言わざるを得ない。

もう一つ、第二巻の冒頭で『実はリリアもゲームをプレイした記憶を持ち越している』ということが判明する。そしてどうやら第二作もプレイ済みで、何かを暗躍しようとしているらしい。

リリアが何をしようとしているのか?

不穏な空気に押しつぶれそうになりながら読み進めることになる。

 

不穏な要素はまだある。

なんとアイリーンはクロードに隠れて、男装して学園に潜入することに決めた。なぜ理由やら目的を話そうとしないかといえば、アイリーンにベタ惚れのクロードが、アイリーンに危険な行動をさせないように釘を刺していたから。

本気で危険なことをさせたくないならば、城にでも幽閉しておけばいいのだが、そんなことをしないことは読者もよく知っている。ただ自分の言ったことを守って城にいると信じているクロード様。一方、元気よく外に飛び出して男装し、学園に潜り込んでいることを知らないアイリーン様。

そんな二人のすれ違いが面白い。学園祭にお忍びでやって来たクロード様と、見つからないように奮闘するアイリーンなど、展開としてよくできている。

面白い第二巻であった。

【前:第一巻】【第一巻】【次:第三巻】