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探偵はもう、死んでいる。5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

探偵はもう、死んでいる

情報

作者:二語十

イラスト:うみぼうず

試し読み:探偵はもう、死んでいる。 5

ざっくりあらすじ

夏凪渚の心臓が鼓動を止めた。彼女の冷たくなっていく手を握っていた君塚君彦は、彼の前に現れた、かつての名探偵と共に、世界を救い、渚を救う最後の戦いが始まる。

感想などなど

ハッピーエンドとは何なのだろうか。少なくとも君塚達は、シエスタと斎川の死によって紡がれる平和を望まなかった。彼女達が生き残り、それでいて《世界の敵》であるシードが倒された世界を求めた。

そのために力を合わせて、《暗殺者》もぶん殴ったし、《巫女》も仲間に加わった。

これでハッピーエンドに一歩近づいたと思いきや、シードを追い詰めたという時に夏凪渚の死という結末を迎えた第四巻。希望が絶望に変わり、ハッピーエンドが遠のいていく音が聞こえる。

しかし、そんな時に現れたのが、死んだはずのシエスタだった。

……ん? シエスタを生き返らせることが目的だったのでは? 彼女、自分で生き返ってきちゃいましたよ。

神ではあるまいし、この復活には種も仕掛けもある。十二人いるとされている調停者の一人《発明家》が、彼女の死体を冷凍保存し、いざという時――誰かの心臓が空いた時――心臓を移植することで生き返らせることができるようにしていたというのだ。

かなーり衝撃的な展開である。「あれ? このブログってネタバレをしないんだよね?」と気になった方もいるかもしれない。安心して欲しい。このブログにおいて、ネタバレは存在しない。

この程度、ネタバレの範疇ではない。これらの真実は、ほぼシエスタが語ってくれる。夏凪は生前、自分が死んだ時のことを考えていたことも、同時に明かされる。

この世界の探偵は、自己犠牲に走りがちなようだ。

 

さて、もう一つだけネタバレをしよう。この第五巻において、シードを倒すことに成功する。

こうして《世界の敵》を打ち倒し、世界は平和になりました。完。

第五巻という丁度良い感じの巻数で完結しましたね。いやぁ、いいラノベでした。

……と思ったら、まだ半分以上ページが残っている。どうやらこの物語は終わらないらしい。それもそのはず。シードを打ち倒す時点で、夏凪渚はまだ死んでいる。

この物語は、まだハッピーエンドに達していない。

《名探偵》と助手は、調停者達が集う《連邦会議》に呼び出され、《魔法少女》《情報屋》《革命家》といった一癖も二癖もある調停者の面々に、《巫女》の出した聖典とはズレた未来となった責任を追求される(ブギーポップ好き厨二病ブログ主にはたまらない空間である)。

聖典においては、シエスタは死ぬはずであった。

しかし、いつの間にか蘇っている。常軌を逸した能力を持つ調停者達といえど、その事実は重く受け止めているようだ。その原因は誰にあるのか。この未来になったことで、世界はどのような変貌を遂げるのか。

世界を救う上で、この問題は早急に解決すべき事項なのかもしれない。

だが、彼らはその原因は誰なのか、話し合うまでもなく知っているらしかった。

君塚君彦……名探偵の助手に過ぎなかった彼を、調停者達は《特異点》と読んだ。聖典の未来すらも覆し、あらゆる事件を呼び込む彼とは一体なんなのか。

 

世界の敵が倒されても、また次の世界の敵が現れる。シードが死んだとしても、彼が蒔いた種はまだある。その種を利用して、何かを企む者もいる。種に蝕まれ、苦しんでいる者もいる。

やはりハッピーエンドは難しい。彼らの戦いはまだまだ続きそうだ。

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