工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

探偵はもう、死んでいる。3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

探偵はもう、死んでいる

情報

作者:二語十

イラスト:うみぼうず

試し読み:探偵はもう、死んでいる。 3

ざっくりあらすじ

シエスタの死の真相を知り、放心とする君塚君彦たちの前に現れるシエスタにそっくりの謎の少女。彼女は映像の中には、一つ間違いがあると語り出した。

感想などなど

第二巻で語られたシエスタの死の真相――それはアリシアという少女に宿ったヘルの人格が、シエスタを殺したということ。そして、そのアリシアの正体は、夏凪渚であるということ。

つまり、『夏凪渚は探偵の心臓が移植されて生き残った』という第一巻の話は嘘である。なにせ彼女は、アリシアとしてロンドンの街で切り裂きジャックとして連続殺人をするくらいには元気であったし、君塚君彦と共に行動していたのだし。病院で暇だったとか寂しかっただとかの記憶は、植え付けられたものだった訳だ。

正直、かなりややこしい。第二巻を読み終えて、しばらくしてから第三巻を手に取ったブログ主は苦戦を強いられることになるが、皆さんはそんなことがないように第二巻を読んで記憶がしっかりしている内に読むようにして欲しい。

そもそも自分が書いた第二巻の感想に『アリシア』という言葉が一度も出てきていない……あれ、俺って本当に読んでいるのか? と疑問に思う今日この頃。君塚君彦にとってのプロローグが終わる第三巻の感想を書き殴っていこう。

 

とにもかくにもアリシアの死の真相が解き明かされた第二巻。

ロボットである《シエスタ》は、映像には一つ間違いがあると語ることで第三巻は始まっていく。間違いと言われても、君塚君彦の思い出した記憶と、映像の間に差異があるようには思えない。この物語は、シエスタが語る間違いを追い求める物語となっている。

そう考えて読み進めると、おそらく大半の読者がストーリーにとっちらかった印象を受けることと思う。この第三巻は時系列がいったりきたりし、様々な方向から新情報が次々と湧き出てくるのだ。

例えば。

シエスタは世界の危機を陰ながら防ぐ調停者の内の一つ《名探偵》という役割だったことが明かされる。調停者は他にも、《暗殺者》や《吸血鬼》がいるらしい。ラノベラノベしてて個人的には好きだ。

また、《SPECE》は子供たちを集め種の適合者を探すための施設を作っており、アリシアは過去にそこにいたことが明かされる。夏凪渚にヘルの人格が宿っていたのは、それが原因であり、シエスタとシードとの因縁はそこから始まっていったということも分かる。

さらに、シャルはかつてシエスタを殺そうとしたのだが、返り討ちに遭ってしまったことまでも明かされる。「やっぱりシエスタは強かったんだな」と感心している場合ではない。そもそもシエスタに暗殺される理由があり、それを命じた誰かがいるのだ。

さらにさらに、(うざ)可愛いアイドル・斎川唯の両親に多額の献金事件疑惑が浮上し、マスコミから叩かれまくる。心身が消耗した彼女は、これからのアイドル人生について思い悩む。そして献金事件は、まさかの《SPECE》に繋がっていく。

そんなことが分かっていく間に、飛行機ジャック事件で刑務所に入れられていたコウモリが脱獄していたり、調停者《吸血鬼》が現れて、彼は何かの比喩とかではなく本当の吸血鬼だったりする。まぁ、地球外から生命体がやって来るくらいだから、吸血鬼くらいはいてもおかしくないか。

 

つまりは慌ただしい作品だった。だが、それらの話が繋がって、アリシアの犯したミスが分かっていく流れは鮮やかだった。そして、彼女の残したという遺産の意味が分かった時、このシリーズのプロローグは終わりを迎える。

探偵の助手に過ぎなかった男が、掴む必要があった真実。真実を知った者が抱くべき覚悟。それらが第三巻で得られたことである。

君塚にとって、これまでは過去の話。ここからが未来の話だ。彼が最後に願い、叫んだ言葉が叶われる日が楽しみである。

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻
作品リスト