※ネタバレをしないように書いています。
姉妹の新生活
情報
作者:柊ゆたか
出版:電撃コミックスNEXT
試し読み:新米姉妹のふたりごはん 2
ざっくりあらすじ
父が再婚し、急に妹ができた。食べることが大好きな姉・サチと、料理が大好きで無口な妹・あやりの二人による美味しい匂い漂う生活は始まったばかり。
「プリン」「フライドポテト」「ローストビーフ」「たこ焼き」「お弁当」
感想などなど
「プリン」
子供の頃、プリンは贅沢なお菓子であった。カラメルの苦みと甘みのハーモニー、プリンの舌の上で一瞬にして溶けていく触感など、値段の割にすぐなくなってしまうというのも、贅沢さを加速させているような気がする。
そんなプリンは思いのほか簡単に作れるらしい。この漫画を読んだ後、自分で作ってみようと思い立ち、卵を買ったが仕事の忙しさに負けて作らなかったことはここだけの秘密にしておいて欲しい。
とにかく。プリンは自宅でも作れる。材料も卵と砂糖と牛乳というシンプルなもので、コンビニで買いそろえられそうに思う。その他、色々と工夫を凝らそうと思えばできそうな感じが好きだ。
そんなプリンを作るに至った過程も可愛らしい。姉であるサチは、家庭科の調理実習でプリンを作ることとなった。「やったー、プリンが食べられる!」と喜んだのも束の間、友人である絵梨はいつも食べるだけで作ろうとしない彼女に業を煮やし、「自分で一から作るように」と言われてしまった。
だがそんなことできそうにない姉は妹に泣きつく。だが目玉焼きですら失敗する彼女に、プリンという高度技術(?)を要するお菓子が作れるのだろうか? 結論から言うと作ることができた。目玉焼きですら失敗する人間ですら作れるのだ。きっとしがない一人暮らしの社会人男性にも作れると信じている。
帰りはさっそく材料を買って帰ろうと思う。これで休日の過ごし方は決定した。
「フライドポテト」
フライドポテトもまた、自宅で作れるらしい。マックやカラオケといった手軽に摘まめる食べ物が欲しい場所でしかお目にかかれない食品ではあるが、自宅で作れるとなると、映画鑑賞やゲームの片手間に摘まむには便利なので、是非とも習得しておきたい。
だがこちら、プリンよりも難易度が高くなっている。
材料はじゃがいもと強力粉、サラダ油にオリーブオイル。
恥ずかしながら強力粉というものをスーパーで購入しようとしたことがない。オリーブオイルも同様である。それでもフライドポテトを家で作るためならば、その程度の出費は厭わない。
そして大事なアクセントとして、あやり(妹)がベランダで育てているというローズマリーが活躍する。ベランダ……ふと目を向ければ対して掃除もされていない洗濯物が干されるだけの場所であるが、ここで家庭菜園というのも悪くないかもしれない。
実家では割とそういったハーブ系を使った料理を、作ってくれたりしていたことが思い出される。それがどうして……こんな男の料理しか作れない社会人になってしまったのか。悲しい。
「ローストビーフ」
今日はサチの誕生日であったらしい。だが、そのことを知らされていなかったあやりは、「どうして教えてくれなかったんですか⁉」と珍しく大きな声を出す。「目が本気だった」「私 怒らせちゃったのかな」と悩む姉。誕生日くらい教えてあげてもよかったのではと思わなくもないが、彼女には彼女也の悩みや遠慮があるようであった。
そんな心配をよそに、とてつもなく頑張って部屋の飾りつけなどを奮闘する妹。可愛い。そして肝心かなめなのは用意された料理『ローストビーフ』である。これがかなり手間をかけた料理なのである。
まず用意されるは分厚い牛肉。前準備として常温で一時間ほど置き、塩コショウで味付け。低温でゆっくりと中まで加熱するという焼き方をするため、かなり時間がかかる。焼き上げても、袋に入れた状態で60度ほどのお湯に漬け一時間。さらに30分休ませて完成。
これほどの時間をかけて出来上がった肉は、とてつもない贅沢な一品として仕上がっている。こうして書いているだけでも、食べたくなってきた。肉塊買ってくるか……。
「たこ焼き」
たこ焼きを自宅で作ろうとしたことはあるだろうか? 大学自体、友人がタコ焼き機を買ったということでご相伴にあずかりに行ったことがある。そしてタコの下ごしらえなどを男所帯でスマホで検索しながら進め、最終的には思いのほか美味しく出来上がったことが思い出される。
素人が四苦八苦しながらも、たこ焼きというのは何とか形になるのだ。それを達人がやったらどうなるのか?
たこ焼きの生地にすりおろした山芋を投入する。出汁にも拘り抜いて、出来上がった最高の一品。いつもは二人の食卓に絵梨も加わり、みんなでクルクルと回しながら奇麗な丸いたこ焼きを作っていく。そして熱々を喰らうのである。
あぁ、たこ焼き喰いたくなってきた。
「お弁当」
職場にお弁当を持っていく偉い社会人であるブログ主は、お弁当の中身にもこだわっている……と言いたいが嘘である。全てに値段と時間が優先されるという持論に則り、茶色が目立つことも珍しくない。肉ってある意味楽だから仕方がない。魚は面倒すぎて久しく使っていない。
姉が購買で買ったパンで昼飯を済ませているという衝撃の事実を知った妹は、栄養のバランスを考えた完璧な弁当を作ってあげることに。あぁ、これは最高の幸せだわ。ごはんによく合う塩鮭の切り身とか、ブログ主のレパートリーにはない。卵焼きは未だに上手く作れない。色味について考えたことなどない。
……あれ、これ自分の恥を晒しているだけなのでは……?
とにかく、あやりがサチのことを考えに考え抜いて愛情の詰まった弁当が完成。これが幸せなのだ。