※ネタバレをしないように書いています。
姉妹の新生活
情報
作者:柊ゆたか
出版:電撃コミックスNEXT
試し読み:新米姉妹のふたりごはん 3
ざっくりあらすじ
父が再婚し、急に妹ができた。食べることが大好きな姉・サチと、料理が大好きで無口な妹・あやりの二人による美味しい匂い漂う生活は始まったばかり。
「クレームブリュレ」「マカロン」「鹿肉のロティ」「生春巻き」「アイスクリーム」「ローストチキン」
感想などなど
「クレームブリュレ」
新米姉妹がガスバーナーを買いに行くという料理漫画とは思えない導入で始まっていく本作。読み進めてみれば、ガスバーナーもお洒落なものがあるということ、あれば料理で一工夫を加える際に便利ということを学ぶことができた(〆鯖とか、焼き豚をさっと炙ったりとか)。料理好きを自称する女子には、ガスバーナーをプレゼントするというのも一考かもしれない。
さて、そうして購入したガスバーナーを使って作る最初の料理は、クレームブリュレというお菓子である。
作り方は超簡単。第二巻でサチが一人でも作れるようになったプリンに、グラニュー糖と粉砂糖をかけてバーナーをを使って炙って焦がし、五分ほど冷やすだけ。それだけでパリッ、とろっのプリンが完成する。
……喰いてぇ。
「マカロン」
あやりのことをほとんど知らないということに思い悩むサチ。そんなサチを優しく諭し、「お互いのことは少しずつ知って行けば」「家族なんだし」と声をかけてくれる友人・絵梨のロッカーにラブレターが入っていた。
この情報化社会において、ラブレターは絶滅危惧種だと思っていたが、生きていたんだな……などというブログ主の的外れな感想は置いておくとして。サチは「今後は一緒にご飯を食べてくれなくなる! それは嫌だ!」というこれまた不思議な感想を抱いているようだった。
どうやら絵梨に彼氏ができたら、自分よりも彼氏のことを優先するようになって、それにより一緒にご飯が食べられなくなるけどそれは嫌だ……ということらしい。頭の回転が速いんだか遅いんだか。
そんな自分の思いを伝えるため、あやりの協力でマカロンを作り始めたサチ。このマカロンというのが、作るのがかなり手間なようだ。しかし無事にサクッ、ふわっなマカロンが完成、絵梨にも彼女の思いは通じただろう。
この作品はゆるーい百合が分かりやすい構成で描かれていて、それが本作の魅力だと個人的に思っている。この話はその王道を貫いて、絵梨のことが可愛らしく見える内容であった。
「鹿肉のロティ」
ロティとは高温で一気に肉を焼く調理法、ということをこの漫画で学んだ。やはり一人暮らしでせせこましく料理を作る程度では、このような知識は身につかないのかもしれないと思案する今日この頃である。
ちなみに鹿肉を、ブログ主は食ったことがない。調べて見ると、通販で買うことができるようだ。「脂っこさのない牛のおいしい赤身肉ってかんじ!」というサチの感想や、「牛のヒレ肉に似てますよね」というあやりの感想を読む限り、下手な安い牛肉よりも旨そうに聞こえてくる……今度、買ってみるか。
そんな鹿肉は、猟師であるあやりのおばさんが、血抜きから冷却まで済ませた持ってきてくれたところから始まっていく。このおばさんが、美人で良いキャラをしているのだ。しかも姪であるあやりを心配して、鹿肉をお土産に様子を見に来てくれているというのも嬉しい話だ。
そんなおばさんを通じて、あやりのことを知り、さらにあやりとの距離が近づいたサチ。そういったストーリーにも注目である。
「生春巻き」
生春巻きとは、専用の皮で野菜や肉などの食材を巻いて食べる料理である。正直、コンビニの弁当くらいでしか見たことのない料理なのだが、この漫画を見ると身近に感じることができるから驚きだ。
理由はこのエピソードの大半が、鮮度の良い食材を選ぶために妹が姉に色々教えていくことにページを割いているからなのではないかと思う。それらの情報は、生春巻きを作らないにしても、すぐにでも役に立つ情報であるからだ。
そうして選ばれた食材が、手際よくカットされ、生春巻きの皮に巻かれて完成するというシンプルさ。それに加えた一工夫により、さらに美味しさを増していくという料理漫画の醍醐味まで詰まっている。シンプルに分かりやすく面白い話であった。
「アイスクリーム」
一応、今の季節は、雪が降り、吐いた息が白くなる冬である。
だがたとえ家の外が寒くとも、炬燵を出せば温かい。そんな炬燵の中で喰うアイスは、これ以上無いほどに贅沢であり、かつ旨い。今回は姉と妹の二人でアイスクリームメーカーを引っ張り出し、最高のアイスを作ろうと奮闘する。そうして出来上がったアイスは、売られていてもおかしくないほどのクオリティであったことは言うまでもない。
二人の微笑ましい空間と相まって、読者の心はホッと温かくなる。そんな話であった。
「ローストチキン」
え? ローストチキンって家で作れるの?
それがこの作品を読んでの感想であった。クリスマスを目前に控え、互いに贈るプレゼントを考えていた二人の姉妹が、クリスマス当日になって二人並んで作るローストチキン。中をくり抜いて現れたチキンの中にリゾットを突っ込んで、手足をタコ糸で縛られて「あっ、これがローストチキンだ」と分かる形になる。そして焼くこと一時間。
完成したローストチキンのこれまた旨そうなこと。「鶏のとこっむちむち!」「おいしーっ!」という分かりやすいサチのコメントに微笑ましさを感じつつ、互いに互いのことを考えて決めたプレゼント交換。
二人とも考えていたことは同じであって、それはまるで長い時を一緒に過ごした本当の姉妹のようでした。二人のこれからが幸せでありますように、と願わずにはいられない。
微笑ましい話であった。