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【漫画】新米姉妹のふたりごはん6 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

姉妹の新生活

情報

作者:柊ゆたか

出版:電撃コミックスNEXT

試し読み:新米姉妹のふたりごはん 6

ざっくりあらすじ

父が再婚し、急に妹ができた。食べることが大好きな姉・サチと、料理が大好きで無口な妹・あやりの二人による美味しい匂い漂う生活は始まったばかり。

「ハンバーグ」「クリームシチュー」「クレープ」「焼き桃アイス」「オリヴィアサラダ」「鹿のシチュー」「筑前煮」

感想などなど

「ハンバーグ」

子供が大好きなハンバーグ。「大人になったら喰えなくなるぞ!」と言われて育ったが、そんなことはなく未だにハンバーグが好きな子供舌だ。ただ自作しようとしたことはなく、食べるとしても外食や冷凍食品の完成されたハンバーグを食べている。

ハンバーグは、カレーと並んで、家庭科の授業で作る料理の一つではないだろうか。ひき肉や卵といった材料を、手でこねて混ぜ合わせた経験が、記憶の片隅にある。

つまり自分でも簡単に作れるのではないか?

この「新米姉妹のふたりごはん」には、それぞれ作中で取り上げられた料理のレシピが乗っている。しかも料理漫画研究科の杉村啓さんのエッセイも添えられており、料理の歴史や小ネタも学ぶことができる。

ハンバーグは「ドイツのハンブルグで誕生した説」と「ミートローフが元になった説」の二つがあるということを学びつつ、作り方や細かな注意点や、どういった工夫で美味しくなるかまで学ぶことができる。

しかもキャラクターがみんな可愛いという。もしやこの漫画に欠点ないのでは……?

 

「クリームシチュー」

雨の日は嫌なことを思い出す。あやりにとって、雨は憂鬱の象徴だった。

断言されたわけではないが、どうやらあやりの父が死んだのは、雨の日だったらしい。雨の降るたびに、その記憶が思い返されるというならば、雨が嫌いになるのも無理はない。

そんな雨の中、ぐしょぐしょに濡れた状態で帰宅したサチ。そんな寒そうな姉のために、風呂に入ってもらっている間に身体があったまるクリームシチューを作り出すできた妹あやり。

風呂に一時間も入ってはいないだろう。長く見積もって三十分として、その間にクリームシチューを完成させることはできるのか? まぁ、普通は無理だ。食材を準備して切ったり、それを煮込んで柔らかくする必要があるのだ。

その中で一番時間がかかるのは、”煮込む” であろう。

それを短縮する調理器具が圧力鍋である。これは圧力鍋の販売促進漫画か?

そしてできあがったシチューも旨そうに食べてくれるサチの笑顔に、彼女の「雨が好き」という言葉に救われるあやりの笑顔が好きだ。

ついでにエッセイで「ご飯にシチューをかけるのはありか論争」に決着をつけたのも評価したい。歴史的にはありだそうなので、ご飯にシチューをかける人は、どんどんかけて食べるようにしよう。

 

「クレープ」

絵梨と彼女の妹・莉菜が、サチとあやりの家に遊びに来た。おそらく小学生低学年と思われる彼女とサチが仲睦まじくする光景は微笑ましい。まるで本当の姉妹のようにじゃれ合い、共にゲームに興じる。

一方、あやりはというと。

「あのお姉ちゃんオニさんみたい」と莉菜はあやりへの第一印象を語った。ついでに防犯用のホイッスルを吹かれ、家にいながら不審者として通報されるに至る。

これは酷い。「オニさんみたい」なんて、おおよそ女子高生に向けて言われるべき言葉ではない。とはいっても読者から見た引きつった笑みに、見開かれた目は狂気じみて見えた。

自然な笑顔を心がけたようだが、その緊張感が逆効果である。

そんなあやりは、これまで料理を通じて友達を作ってきた。姉のサチとの関係性も、絵梨と友人になれたのも、篠田さんと友達になれたのだって、ただの一つの例外もなく全て料理によってできた繋がりだ。

それは今回も例外ではない。彼女と莉菜ちゃんとの仲を取り持つのも料理なのだ。その料理の名はクレープ。あの片手で食べられるお手軽スイーツだ。クレープ生地って家で作れるんだな……と器用に薄く丸い生地を作るあやりを見て、「ムリダナ」と諦めるブログ主であった。

 

「焼き桃アイス」

ボーイッシュ篠田さんが再び、サチとあやりの家に遊びに来た。彼女の手には桃狩りで取り過ぎたという桃がどっさり。食べきれないので、何か美味しい料理を教えて貰いつつのお裾分けという訳だ。

そこであやりが作った料理は二つ。

一つは「桃のスープ」。牛乳や生クリーム、レモン汁を加えてミキサーにかけ塩で味付け。それを冷蔵庫で冷やす。冷やされたスープに刻んだ桃を乗せて白胡椒を引くと完成。超簡単に作れて、それでいて旨そう。

二つ目は表題にもなっている「焼き桃アイス」。こちらも作り方はシンプルで、半割にして皮をむいた桃に砂糖を振りかけ、バーナーで焼く。それにアイスを添えれば完成である。

……あぁ、食べたい。桃なんてしばらく食っていない。フルーツ自体久しく食べてないような気がするけれど、その久し振りのフルーツが桃になるかもしれない。

 

「オリヴィアサラダ」

オリヴィエサラダはロシアのサラダで、細かく切った野菜や肉、ピクルスをマヨネーズソースで和えた物……だそうです。知らんかった。

料理風景が食材を細かく切っているだけだったので、これは作れそう……マヨネーズソースを作るのに必要なマスタードもマヨネーズもヨーグルトも冷蔵庫にある。というわけで作って見たら普通に旨くできた。写真は載せないので勘弁(食い終わった後の皿なら……)。

そんなことはさておき。

サチはあやりのとっておいたプリンを食べてしまったという事件が、あやりが料理を作っている裏で起きていた。料理の恨みは根深いが、姉大好きあやりの反応や如何に。

尊い話であった。

 

「鹿のシチュー」

鹿を撃って捌く動画がYouTubeに上がっていたので、じっくりと見たことがある。血がドバドバと出てくるのは当然として、そのグロさよりも、その手際の良さと内臓の色鮮やかさに驚かされた記憶がある。検索して出てくるサムネにも血が出てくるので、苦手な人はそもそも検索しない方がいい。

こうして生きて動いていた動物が、食卓に並ぶ肉となるんだな……とネット社会だからこそできる学びと、こうして働いてくれる方々に感謝する必要性を噛みしめた。

この漫画でも鹿を撃ち、水にさらしたり解体する過程が描かれていく。白黒なのでグロさはないが、サチとあやりが出てくるまで台詞のない、自然の音だけの展開にはドキドキさせられた。

そうして出来上がった鹿肉を、あやりがご馳走にする。シチューにロテイにスペアリブ煮込みという贅沢三昧の食卓が出来上がった。やっぱり一度で良いから、ちゃんとしたジビエ肉が食ってみたいと、夢が膨らみ続ける。

 

「筑前煮」

いきなり帰って来た有名写真家の父とその妻。こうして揃った一家団欒に合わせて、あやりが作った料理が「筑前煮」だった。

筑前というのは福岡当たりを指す古い地名のことで、福岡県民は小学生の給食などで馴染みのある郷土料理のことを「筑前煮」という。どうやら父と母の好きな料理であるらしい。

そんな筑前煮を作る手伝いをするサチに、彼女が撮った写真も眺めつつ、成長を噛みしめる両親。いつもはいない両親だけど、やっぱり家族としての食卓の風景は最高だった。

複雑な関係性かもしれないけれど、やはり良い家族だと思う。微笑ましい物語であった。

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