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【漫画】新米姉妹のふたりごはん8 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

姉妹の新生活

情報

作者:柊ゆたか

出版:電撃コミックスNEXT

試し読み:新米姉妹のふたりごはん 8

ざっくりあらすじ

父が再婚し、急に妹ができた。食べることが大好きな姉・サチと、料理が大好きで無口な妹・あやりの二人による美味しい匂い漂う生活は始まったばかり。

感想などなど

「パンケーキ」

パンケーキとは「小麦粉を水や卵などで溶いてフライパンで焼いたもの」であるらしい。じゃあホットケーキは何なのだ? という疑問を抱くものだが、それにも的確な答えが記載されているのが、この漫画の為になるポイントだといえる。

ちなみにホットケーキは明治時代に翻訳出版された本にのっていた薄餅が、デパートの食堂でハットケーキという名前で販売された説、パン(=フライパンのこと)ではなくホットプレートで焼かれたから説など色々あるようです。

つまりはホットケーキはパンケーキの亜種。ふむふむ、勉強になりました。

ちなみに今回、あやりが作ったパンケーキはカッテージチーズ入りのしょっぱパンケーキ。甘さだけではなく、しょっぱさを取り入れることで食卓に並んでも遜色ない味に仕上がった一品。あぁ、旨そ。

 

「コンソメスープ」

コンソメスープという名前ばかり知っていて、その実体を何一つ知らないということに気付いた一読者であるブログ主。ブイヨンも何か聞いたことがあるけれど、それを自宅のキッチンで作ろうという発想も抱いたことがなかった。

……というコンソメスープを作る過程というのも、無論だが興味深い。だが、この漫画は料理を通して不器用な少女・あやりの成長も描いているということを忘れてはいけない。

彼女がいきなりコンソメスープを作り始めたのは理由があったのだ。

その日、あやりは、校内の噴水にボールを落としてしまった少女が泣いているところに通りかかった。そこで靴を脱ぎ、噴水の中に入っていってボールを取ってきて上げた。そしてボールを受け取った少女は、突如として泣き出してしまったのだ。

自身の目つきの悪さのせいだと深く反省したあやり。とはいっても、あの場でどのようにすべきだったか分からず、悩んでも悩んでも答えが出ず、料理をして気を紛らわせようとしたのだ。

そんな妹の悩みも彼女なりの方法で解決してあげるサチは、良いお姉ちゃんである。

 

「低温調理」

低温調理器。ちょっと調べてみたが、滅茶苦茶高いこの商品。低い温度で長時間かけて料理することで、肉などは水分を保ったみずみずしい状態で仕上げることができたりするという優れものらしい(ただ食中毒のリスクもあるとか。要注意)。

それを使って最初に作った料理が、『マグロの低温料理』。

……作中でもこの名前で紹介されていたので、そのまま引用させてもらった。低温調理器を使ったら、枕詞みたいに語尾に『~の低温料理』って付くことになるのかもしれない。

それはさておき。

これもまた美味しそうなのである。低温調理器の使い方自体は、かなりシンプルで「こんなので出来るの?」と少し疑問すら抱いてしまうレベルであった。しかし、サチの食レポが上手いんだよなぁ。いつもの肉やマグロとは違う形に仕上がっていることを説明してくれている。

いやぁ、買おっかな……でも高いんだよなぁ。

 

「りんご飴」

今回は、あやりが数少ない友人・篠田なお宅に遊びに行くお話である。家にお呼ばれすることになった理由は、近づきつつある学祭に向けて、何か案を出すための企画会議ためであった。

学祭に向けて、「お化け屋敷ステーキハウス」なる奇想天外な提案をするあやり。それよりもこないだ作ってくれたパンケーキ(実はパンケーキのエピソードには彼女も登場していたのだ)、文化祭で出せばいいじゃんという読者の百人が百人思うことを言ってくれた篠田。それに対するあやりの反応は冷たく、「私が深く関わると みんな怖がってしまうかもしれないので……」と自らを卑下している。

卑下……という表現よりは、過去のトラウマとでも言うべきかもしれない。助けてあげた少女に泣かれたエピソードがあったが、そんなことが過去にもたくさんあったのだろう。

そんな彼女は実はとても優しく、篠田宅に大量にあった林檎を使って、サクッとりんご飴を作るくらいはできる子だと知って貰いたいものだ。ラスト「文化祭の実行委員 一緒にやろう」と手を握った篠田さんの気持ちが良く分かる。

ちなみに、ちょっと記憶を探ったみたが、どうやらブログ主はりんご飴を食べたことがない。

 

「野菜のテリーヌ」

長方形の形をした型に、食材を入れて、焼いたりゼラチンを詰めて固めたものをテリーヌというらしい。型にキャベツを最初に詰め、それの上に柔らかい物、固い物を交互に入れていく。あとはゼラチンを溶かしたコンソメスープを注いで、上から重石を載せて冷蔵庫で冷やし固めたら完成。

こうして列挙するとシンプルなものだ。しかしながら完成品の断面図は、様々な野菜によって彩られた綺麗な姿となるのだ。なるほどなぁ、こういう料理がインスタ映えするんだなと感心したのはブログ主だけかもしれない。

そんな料理をしている間にも、「文化祭の実行委員 一緒にやろう」と篠田さんに言われたことを思い返している可愛い子なんだよなぁ……。

 

「ガレット」

さて、悩みに悩み抜いていたあやりであるが、篠田さん、サチというコミュ力の化け物二人の後押しにより、文化祭実行委員に立候補して努めることとなった。そんな彼女の初仕事は、不安いっぱいな立ち上がりであった。

まず目つきが恐い。知っている人からしてみれば、それは緊張の表れだと分かる。しかし、彼女のことを知らない人は、威嚇されているように感じているのだから不安である。それで企画決めの話し合いが進むかと言われれば難しい。

しかも料理を決めるにしたって、食中毒の不安から生物は駄目で火を通さないといけないといった注文が次々と追加されていく。教師としては当たり前の対処ではあるが、頭ごなしに意見を否定して欲しくはなかった場面だ。

そんな教師の注文に対し、何か解決策を見出したらしい。あやりは教師と学生に、調理室に来るように一方的に告げ、会議を終わらせてしまう……もうちょっとやりようあったんちゃいますかね。まぁ、不器用な彼女なりの最善手だったのだろう。

そんな彼女が出した案は、卵なしで作れるクレープ――ガレットである。その中身を生クリームといったものではなく、痛めたキノコや野菜といったものにすることで、食中毒の危険性は徹底的にカット。なんと仕事のできる子か。雇いたい。

 

「ベリーソーダ」

さて。いよいよ文化祭当日である。そこで出される料理はガレット。前のエピソードであやりが提案した料理である。それによりお洒落なカフェのような雰囲気で、学生が文化祭で催した物とは思えないレベルのサービスが提供されていた。

そのサービスの一つがベリーソーダである。冷凍ベリーの鮮やかさと、ソーダのしゅわしゅわがマッチして、よりお洒落な空気を生み出している。おそらく、あやりが提案してメニューに入れたのだろう。

そんな感じで自分の知識を遺憾なく発揮して、文化祭をこれ以上無いくらいの成功に導いた。この文化祭があやりと大きく成長させたことは言うまでも無い。

それでも姉に甘えた盛りの可愛い妹である。ラストシーンで思わずほっこりしたのは、全読者共通の認識だと信じている。

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