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【漫画】新米姉妹のふたりごはん9 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

姉妹の新生活

情報

作者:柊ゆたか

出版:電撃コミックスNEXT

試し読み:新米姉妹のふたりごはん 9

ざっくりあらすじ

父が再婚し、急に妹ができた。食べることが大好きな姉・サチと、料理が大好きで無口な妹・あやりの二人による美味しい匂い漂う生活は始まったばかり。

感想などなど

「手打ちうどん」

小学生の頃、自宅でうどんを作ったことがある。小麦粉をこねれば作れるだろうと考えていたので、できあがったものは酷く不味い出来だったが、今となっては良い思い出である。

そんなことを思い出してしまった第九巻の冒頭の話。うどんは家でも作れると語ってはいるが、それなりの手間をかけなければ美味しいうどんはできないということを再認識させられる。

二人でうどんの生地を踏んでこねるシーンがあるのだが、その微笑ましさに心が洗われた気分である。ちなみにうどんは福岡の柔らかうどんが個人的に好きなのだが、あれはどう作っているのだろう。是非とも誰かに描いて欲しい。

 

「ハンバーガー」

ダイエットの停滞期に突入し、なかなか体重が減らない日々を過ごしていた絵梨。ダイエットには体が危機感を覚えて、体重を減らさないようにする期間に入ってしまうことがあるのだという。

そうなってしまったらどうするのが正解か?

絵梨曰く、チートデイというものを設け、ダイエットを一時的に休止し、好きなものを食べる日を作るのだという。そこで何を食べたいかとサチに聞かれ、「ハンバーガー」と答えたことで、チートデイならぬハンバーガーデイが決まったのだ。

マ〇クに行くとかではなく、あやりが作ったハンバーガー……目の前で焼かれていく肉とできたてのパン、好きなものを好きなだけハンバーガーに舌鼓を打つ休日。最高すぎる……それにしても絵梨が美人な回であった。

 

「サンマの塩焼き」

冷凍技術の進歩により一年中いつでも食べようと思えば食べられるようになったサンマ。しかし、秋の脂の乗ったサンマは格別である。旬の醍醐味というものを感じさせてくれる。

そんなサンマの代表的な食べ方が塩焼きであろう。大根おろしと一緒に食べると、これがまた旨いのである。しかしそうはいっても、魚の調理というのは簡単ではない。ブログ主も何度失敗してきたことか……料理の上達する喜びを、面倒が上回ってしまった。それ以来、魚料理は外食に限る主義になってしまった。

それはさておき、あやりの作る料理はどれも手際が違う。持っている調理器具の差だけでは説明ができない、経験と計算のなせる技である。そんなあやりの料理を毎日食べることができているサチは、どうにかして恩返しがしたいと考えているようだが。

 

「豚汁」

サプライズが下手な人間がいる。嘘が下手とも言い換えられるかもしれない。サチはそんな人間の代表格である。クリスマスに向けて、マンションの屋上を住民が共有して使える菜園場にしてしまおうと考えたサチは、あやりに内緒で行動を開始した。

だが、サチの行動はあやりに筒抜け。何かを隠そうとしていることは分かるのだが、その隠しているブツは屋上にあること、何やら電話している相手がいるということ、気になる情報だけチラ見せしてくるサチ。逆に気になって仕方が無いあやり。上手く隠しているつもりのサチ。屋上にいることを知っているから、お弁当でも作って持っていってあげようとするあやり。

何だコレは……可愛いかよ。

結局はサプライズにならず、一緒に屋上の菜園場を作ることになったのだが、一緒に飲む豚汁は美味しかったので全てヨシ。

 

「シュトーレン」

漫画の仲間キャラの名前でありそうなシュトーレンだが、実際はドイツ発祥の発酵菓子である。ドライフルーツやナッツが詰まっており、粉砂糖が振りかけられている。一度だけ食べたことがあるが、ドライフルーツがふんだんに使われた高級感と、しっとりとしたパンのような感じがマッチした美味しい菓子である。

そんな高級感が売りの一つなのだろうが、本場のドイツでは家で作ったりもするらしい。それに習い、サチ達も作ることと相成った。

そして出来上がったシュトーレンは、あやりの父が教えてくれた味である。シュトーレンというのは、店や家庭によって酒を入れたり、スパイスの調合が異なっていたりと、それぞれの個性が色濃く出てくる。

それも、シュトーレンの大きな醍醐味なのだろう。いつの間にか、近隣住民とのシュトーレン大交換会が催され、オレンジビールが入っているシュトーレン(未成年ですよ!)だったりと、その個性の強さにドギマギしながら、冬が過ぎていく。

寒いながらも温まるエピソードであった。

 

「ポットパイ」

ポットパイというのは、その名の通り、ポットにパイを被せた料理である。パイを破ると、ポットの中に入っているシチューが顔を出す。サクッサクのパイ生地を、シチューに浸してしんなりとさせ食べる。全くもって知らない料理であったが、そんな描写だけでも美味しいと分かる。

そんな料理は、絵梨も篠田さんもやって来ての食卓。最初はかなり距離感があった関係性も、すっかりと近づいてしまって、そのことに寂しさを感じる姉サチ。どこか冷たい風が吹いている話であった。

 

「ロブスター」

さて、寂しさを感じていた姉は、姉として妹のために動くことを決めた。その一環が、これまでお世話になった人々を招いてのパーティ企画である。だがしかし、このパーティ企画に参加を表明してくれた者は零人であった。

決して虐められていたとかそういう訳ではなく、それぞれが家族だったりと過ごすクリスマスを企画しており、そちらを優先させたという仕方の無い理由があってのお断りである。しかし、サチの胸中はあやりに寂しいクリスマスを過ごさせないという想いがある。その必死さはかなりのものだった。

そんな姉の胸中を露知らず、姉と共に過ごせるクリスマスを楽しみにしていた妹。誰を誘っても来てくれない、と落ち込む姉を励ます妹。その姉は妹のために頑張っているのだよ。

そんなことは伝わらない。そんなすれ違いを解消したのが、あやりの「私が幸せでいられるのは姉さんと一緒にいられるからですよ」という一言だった。あやりの方から、これほどの歩み寄りを見せてくれることがとても嬉しい。

みんなの成長が、とても嬉しい第九巻であった。

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