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世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻

※ネタバレをしないように書いています。

勇者を殺せ――そのために転生を

情報

作者:月夜涙

イラスト:れい亜

試し読み:世界最高の暗殺者、異世界貴族に転生する 5

ざっくりあらすじ

三体目の魔族を討伐したルーグ達。ノイシュの闇落ちに後ろ髪を引かれつつ帰還していく。その間、ルーグの活躍が気に入らない貴族達は、彼を陥れるための作戦を推し進めていた。

感想などなど

出る杭は打たれるという諺がある。目立つ者は他人から叩かれがちであるという意味だ。目立つと一言でいっても、これには悪目立ちという悪評が広がったという意味や、良いことをして多くの人から羨望の眼差しを向けられるという意味も含まれている。

ルーグのように人類のために活躍していようとも、貴族としての自分の立場が脅かされようとしていれば、彼を陥れようとする輩が現れることは時間の問題だっただろう。なにせ聖騎士として魔族を倒したルーグの功績は、計り知れないものがある。民衆の人気も相当なものだろう。

そんな彼を嵌めて、殺してしまった場合、国が受ける損害はかなりのものと思われる。魔族を倒せる者は、勇者しかいないのだから、勇者の手が届かない場所は攻められ放題、殺され放題ということなのだから恐ろしい。

そんな先のことを考えず、ルーグに自分の地位を脅かされる現状だけを危惧する馬鹿が、ルーグを嵌めることなどできるだろうか?

いや、できない。ルーグの暗殺者としての手腕が遺憾なく発揮され、見るからに悪役の貴族が落ちぶれていく様は、勧善懲悪の物語を見ているような快感がある。

といっても、この第五巻で描かれるのはそれだけではなく、もっと世界の真に迫るような情報も明かされていく。それらについてのネタバレはしないように最善の注意を払いつつ感想を書いていこう。

 

さて、第四巻までで二体の魔族を倒してきた(一体目は勇者が倒した)。

第三巻の兜蟲グルト。

第四巻の百獣の王ライオゲル。

本来であれば、勇者でなければ倒すことのできない魔族を殺す魔法【魔族殺し】を使い、ギリギリの戦況をくぐり抜けてきた。これはルーグでなければできない芸当だっただろう。

そんな彼の活躍に危機感を覚え、彼に伯爵殺害の罪を被せようとする貴族がいたのだ。そいつの名はカロライナ侯爵。名前を書いてはいるが、覚えなくとも問題は無い。めっちゃ頭の切れる人間で、ルーグの裏を掻くようなことをしてくるかと思えばそんなことはないし、ルーグの手の平で最初から最後まで踊ってくれる人である。

……というように酷評はしたが、ルーグ以外の人間であれば、彼の罠にはまりなすすべも無く有罪判決からの処刑のコンボを喰らっていただろう。ただただ相手が悪かった。

カロライナ伯爵の筋書きでは、ルーグが魔族との戦闘のどさくさに紛れ、トウアハーデ男爵家との確執があったマーンレントット伯爵を殺害。流れ弾に当たったというように事故死に見せかけようとしたが、ルーグが犯人であるというたしかな証拠を掴んだ。

その証拠というのが、フラントルード伯爵の証言であり、裁判では彼が証言台に立って、ルーグの有罪を立証する手はずだったようだ。

シンプルだが覆すのは難しい……という考えは素人考えであった。ルーグは女装し、フラントルード伯爵に近づき、彼を手玉にとってルーグ陣営に引きずり込んだのだ。「ディアやタルトのハニートラップはどうした!」という怒りを抱いた読者は、おそらくだがルーグに殺されるので覚悟しておこう。

 

そんな戦いの後は、魔族との戦いが待っている。こいつがまたヤベー奴であって、一つの街を一瞬の内に消し去ってしまった。どうやら地下に潜って動き回るヘビやミミズのような魔族であるらしく、その力を使って街もろともを地下に沈めたようだ。

地下にいられると【魔族殺し】も当てられない。戦闘においては圧倒的な不利となるのだが、そこはルーグも手慣れたもので、魔族の歴史を調べ、実際に相対した時の情報も加味し、そいつの殺し方を考え出した。

流石は暗殺者、殺し方に関してはプロだ。

だが、忘れないで欲しい。もうすでに街は一つ滅びているのだ。

かつて街の人々の魂を集めて、何かを作りだそうとしていた魔族のことを思い出してもらいたい。この魔族も、今回の一件で何かを作りだそうとしていることは疑いようもない。

その ”何か” とは一体何か? もう実はできてしまっているのかもしれない。

急展開を見せる物語と、勇者や魔族の正体というものにも触れていく重要な回であった。

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