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【漫画】止まり木の鎮守府1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

艦娘達の止まり木

情報

原作:C2機関

作者:ヒロイチ

試し読み:艦隊これくしょん -艦これ- 止まり木の鎮守府 1

ざっくりあらすじ

重巡洋艦・熊野が着任したのは、深海棲艦の出現しない平和な鎮守府。緊張感のないのほほんとした空気に当てられた、先に着任していた鈴谷にいら立ちを隠せない熊野だったが、この鎮守府は重要な使命を与えられていて――。

感想などなど

 『艦これ』とは、DMMが提供するブラウザゲームをはじめとしたコンテンツであり、実在する艦隊をモチーフにした擬人化された娘達、通称『艦娘』と深海棲艦との戦いを描いている。

ブラウザゲームでは実在する名称の鎮守府に、提督として着任し、深海棲艦に支配された海域を開放していくことで資源や物資を集め、新しい艦娘を仲間にしていく。ゲーム最大の特徴として、一度轟沈した艦娘は復活しないということが上げられる。

愛着のある艦娘を頑張って最大練度(=レベル)まで上げたとしても、ちょっと油断すれば轟沈からのロストというコンボで泣きを見ることとなる。最大練度まで上げれば、指輪を渡して結婚できるというシステムも憎い。自分の艦隊に迎え入れた艦娘に愛着が沸くようしているところで永久ロストは心に来る。

ちなみにブログ主は、本作の主役である鈴谷を轟沈からロストさせたことがある。轟沈自体は注意しておけば絶対にさせることはないのだが、少しでも気を抜いてしまえば情け容赦なく沈められる。それを身に染みて体感した。

つまり何が言いたいかといえば、艦これは嘗めているとトラウマを植え付けられるということ。アニメ1期にて描かれた如月轟沈は、ゲームをプレイしていた者からすれば洒落になっていない。

本作『止まり木の鎮守府』は、深海棲艦からの侵攻のない平和な鎮守府なのだという。それなのにどこか不穏な感じがするのは、気のせいではない。

 

『艦これ』の漫画や小説に何を求めているか。

ガチのミリタリーによる戦争を描くか、はたまた平和なのほほんとした日常を描くか。ブログ主的にはどっちも面白ければ良いという感じなのだが、本作はその中間あたりに位置する。

戦闘はない、襲撃もない。

では何をしているかと言われれば、鎮守府の掃除に訓練、疲れた時は入浴。なんだ、ただの日常ではないかという合間に、それぞれの艦娘のモチーフとなった艦隊の轟沈までの回顧録が描かれている。

例えば。

重巡洋艦・熊野はフィリピンのサマール沖にて半壊。そこから日本へと戻ることとなるが、あまりにボロボロ過ぎたために味方からの爆撃といったハプニングに見舞われる。それでも日本に戻るためにと、ほぼ航行不能の状態で一か月も進み続けた。そんな熊野の最期は、敵艦載機による爆撃を受け、魚雷が五本、爆弾が四発命中により轟沈であった。

そんな史実の影響、作中の表現を引用するなら艦隊だった頃の記憶の影響で、艦娘の熊野は「望んだ目的地に絶対に辿り着けない」という厄介な性質を持つようになってしまっているようだ。

そういった史実の影響が、止まり木の鎮守府にいる艦娘達には色濃く表れている。戦闘はないのにシリアスというのは、そういった戦争による影響が色濃く表れているから。それでも笑顔で過ごそうとしている様子に、空回りした明るさを感じるのはブログ主だけではないだろう。

登場するのは艦娘達だけ。街に買い物に出かけても店員一人すら出ないのは、漫画的な演出なのだろうか。提督が登場しないのはどうしてなのだろうか。考え出せばキリがない不穏な発想の数々。

とりあえず願うは鈴谷と熊野の平和な日常である。ゲームの空気感が色濃く出ている漫画だと個人的には思った。

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