工大生のメモ帳

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涼宮ハルヒの暴走 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

語り継がれる伝説

情報

作者:谷川流

イラスト:いとうのいぢ

試し読み:涼宮ハルヒの暴走

ざっくりあらすじ

終わらない夏休みに、コンピュータ研究会とのゲーム対決、嵐に巻き込まれた冬休みの雪山といった波乱に満ちたSOS団の日常を描いた中編小説集。

感想などなど

『エンドレスエイト』

アニメでは八回も同じ話を放映するという暴挙で賛否が上がり、名前だけでも聞いたことがあるという方もいるのではないだろうか。そんな問題作「エンドレスエイト」は、第五巻に収録された中編であり、アニメとは違って15000回以上繰り返されるループの内で、最後の最後にループを抜ける回のみを描いている。

もうループしていて最後は抜けるという結末まで書いてしまったが、改めて内容を説明しよう。時制は夏休み、前巻「涼宮ハルヒの消失」が起きるより前の話である。

冒頭は一般的な夏休みの朝から始まり、涼宮ハルヒからの電話により、プールやら盆踊りやら夏祭りやら天体観測、花火に昆虫採取といった夏休みらしいことを全てやってしまおうという暴走に巻き込まれていく。

いつもに比べれば平和な日常であり、これぞ夏休みといったイベントが目白押しなのも、なんとも健全な夏休みの風景が描かれていく。

しかし、その合間でキョンは違和感に苛まれる。頭痛や、この光景を以前も見たような感覚――いわゆるデジャブに。だがそんなはずもないので、単純に体調が悪いのでは無いかというように考えていたキョン。

しかし、朝比奈みくるが未来と通信ができなくなったと報告してきたところから事態は急変する。なんと永遠に8月が繰り返され、9月に進むことができなくなっているというのだ。つまりはエンドレスエイト……キョン達の記憶が保持されていないことだけが救いとも言える。

ただ一人、記憶を保持し続けていた長門有希は、15498回ものループを繰り返し、少しずつ変化する夏休みを観測し続けた。所々で垣間見えた彼女の退屈そうな表情は、アンドロイドに芽生えた感情の一端なのかもしれない。

そんな感情の芽生えが「涼宮ハルヒの消失」に繋がっていったのかもしれないと思うと、この事件は確定された事象なのかもしれない。さて、キョン達はこの無限ループを抜け出すことができるのか?

全てはキョン、お前にかかっている。

 

『射手座の日』

コンピューター研究会を覚えているだろうか。会長の男は朝比奈みくるの胸を揉んだ大罪人であり、パソコンを強奪されたままである被害者でもある。この二つの罪を天稟に乗せた時、どちらが重いのか。男として、この答えは出さないでおくことにする。

そんなコンピューター研究会が、SOS団に勝負を仕掛けてきた。彼らが製作したゲームを使って雌雄を決し、コンピ研が勝てばパソコンと長門有希を、SOS団が勝てばパソコンはそのままに人数分のノートパソコンを貰うという話でまとまった。

このエピソードを総括すると、長門有希が可愛かった(というか、この巻を通して彼女の魅力が押し出されている気がする)。

ゲームの内容は宇宙のとある惑星を舞台にしており、その星にある二国間が前線で戦争するというストーリーになっている。それぞれの国が有する艦隊ユニットを操作し、探索して敵を見つけ、攻撃するというシンプルなルールであり、単純であるが故に奥が深そうなものとなっている。

勝敗の付け方は、敵の総大将である艦隊を撃滅すること。SOS団の場合、涼宮ハルヒの操作する艦隊が破壊された時点で負けである。だがハルヒは相手に突っ込んでいく性格。ここでもキョンが活躍し、ハルヒの暴走を食い止め、小さい勝ちをもぎ取ろうと動いていた。

しかし、一番頑張っていたのは有希であろう。キョンに「チートはつかうな」と釘を刺されていたが、その中でも最善を尽くし、しかも楽しそうにゲームを攻略していく様は可愛いと言わざるを得ない。

最後も彼女らしい締めであった。長門有希に幸あれ。

 

『雪山症候群』

夏に起きた殺人事件を思い出して欲しい。あれは酷い事件であった……まさかの仕組まれた殺人ゲームの一幕だったとわね。ハルヒも楽しんでいたし、良しとしよう。

そんな推理ゲームが冬にも開催されることになった。しかも雪山のペンションという雰囲気だけは孤島と双璧をなすミステリオタクにはたまらない場所である。今回はキョン妹と、SOS団の名誉顧問に就任なされた鶴屋さんも加わり(ペンション自体は鶴屋家の持ち物である)、ペンションで起こる殺人事件の謎に迫る!

とミステリを期待した方には謝罪をしておく。

舞台は雪山……吹雪の中で遭難してしまったSOS団のエピソードである。しかもただの遭難ではない。長門有希には手も足も出ず、そのまま発熱でぶっ倒れてしまうくらいの危機的状況に追い込まれてしまうのだ。

嵐から逃げるために駆け込んだ屋敷。誰もいないはずなのに点いていた明かり。逃げようにも開かなくなってしまった扉。

……あれ、もしやミステリか?

ちょっとした謎解きありの緊急事態。ちょっと嫉妬したハルヒも見ることができたし、弱った長門有希も見ることができたし、誘惑してくる(偽)朝比奈みくるも見ることができたし、大満足のエピソードでした。

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