工大生のメモ帳

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涼宮ハルヒの驚愕(前) 感想

【前:第九巻】【第一巻】【次:第十一巻】
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※ネタバレをしないように書いています。

語り継がれる伝説

情報

作者:谷川流

イラスト:いとうのいぢ

試し読み:涼宮ハルヒの驚愕 (前)

ざっくりあらすじ

長門有希が熱を出して寝込んだ。情報統合思念体である彼女が、日本の冬で猛威を振るう風邪菌に負けるはずがない。これを仕組んだと思われる九曜や藤原、橘達に、佐々木を通じてコンタクトを受けたキョンは、そこで衝撃の取引を持ちかけられる。

感想などなど

スキー場のある山奥で、長門有希が熱を出して寝込んだことがある。あの時は、夢落ちという形で幕を閉じ、原因の調査については先送りという不完全燃焼的な結末だった。それから幾ばくかの時を経て、再び長門有希が寝込んでしまった。

涼宮ハルヒの力を奪って利用するような宇宙人が、人間を数日間体調不良に陥らせる程度の風邪菌に負けるとは思えない。おそらく山荘事件の時と同じように、何者かからの干渉があっていると考えるのが妥当だ。

ただ干渉と言っても、情報統合思念体に攻撃できるような存在は限られる。

まず涼宮ハルヒ。SOS団の団長である。ただ寝込んだ長門を熱心に看病する彼女の様子を見るに、団員に対する優しさだけは信頼できる彼女がこのような事態を引き起こすとは考えにくい。

次に超能力者……と言いたいところだが、おそらく無理であろう。彼らが使う超能力は、ハルヒが作り出す閉鎖空間倒すことにしか使うことができない。シチュエーションとバリエーションが限られすぎている。

次に未来人……時間跳躍によって長門有希に何かできるとは思えない。

残っているのは、有希と同じような宇宙人。なつかしの喜緑さん、海外に飛ばされたことになっている朝倉涼子といった存在は、一応、有希と同じ所属の情報統合思念体だ。有希に傷を与えることができる対象として、まっさきに朝倉涼子の顔が思い浮かぶかもしれないが、こてんぱんにやられたことを思い出すに考えにくい。

とまぁ考えていると、わざわざ敵からコンタクトを取ってくる。有希がいない間、天蓋領域と名乗る宇宙人・九曜が強襲――それを迎え撃つは喜緑さんに朝倉。人智を超えた戦闘が起きても、驚かずにいつも通りでいるキョンは、変わり者というべきか。はたまた成長か。

おそらくはその両方だ。

 

キョンの中学時代の同級生にして親友・佐々木。美少女だが、口調は男っぽく、語る内容は知的なものばかり。その知的さに負けず劣らずの進学校へと進学し、勉学に打ち込んでいるらしい。

そんな彼女の背後には、天蓋領域・九曜に、超能力者・橘、未来人・藤原といったコミュニケーション能力欠如の具合が甚だしい面々に囲まれている。佐々木はそれに巻き込まれたような、彼・彼女らの話を受け入れているかのような、なんとも言えない立ち位置にいた。

そんな彼女から誘われて、九曜や藤原との話し合いの場を設けられたキョン。

そこでは長々と、それぞれの立場をとうとうと語ってくれているが、結論だけ書くとシンプルで分かりやすい。

「拒否権はない」

「ハルヒの力を佐々木に譲渡せよ」

その目的に関しては、ひとまず置いておこう。九曜、藤原、橘の三人の間でも、目的に関しては一本化されていない。藤原は煽るようなことしか話さないし、九曜は何を言っているのか分からない。唯一、会話をしているような感じがする橘は、「ハルヒが持っているよりも佐々木が持っている方が閉鎖空間がなくて安定する」と明確な目的を語ってくれているが。

そんな話をされたキョンは、当然ながら拒絶する。ただこのままでは長門有希を苦しめ続けると宣言されてしまう。有希を救いたい、しかしハルヒの力を譲渡していいのか? そもそも大前提として、その話をキョンにする理由は何か?

これまでキョンは第三者的な立場で、宇宙人でも超能力者でも未来人でもない普通の人として、SOS団に関わってきた。彼の役割は何なのかという命題は、これまで読者が気になっていたポイントであるし、作中でも話題としてのぼったこともある。

ただキョンは一般人という結論が変わったことはない。

その大前提が、この第十巻にして崩れていこうとしていた。キョンは自らの役割を真剣に考え、何をすべきかの答えを出さないといけない。有希を助けるため、そしてこれからのSOS団のために。

タイトルにもある通り前半部であり、謎が謎を呼び、風呂敷が一気に広げられた物語であった。後半も買っておくことをおすすめしたい。

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