※ネタバレをしないように書いています。
転生したら、まともな人生を
情報
作者:理不尽な孫の手
イラスト:シロタカ
ざっくりあらすじ
シルフィと結婚することに決めたルーデウス。新居探しに披露宴と、前世ではできなかった結婚生活には苦労の連続であった。
感想などなど
ルーデウスもついに結婚か……10巻もかかったというべきか。正直なところ、大学もまだ卒業してからと思っていたのだが、大学に入った当初の目的である ”男の自信を取り戻す” という諸問題は解決したのだ。しかもそれを解決してくれたのはシルフィなのだから、これは結婚するしかないという奴なのかもしれない。
といっても、シルフィはフィッツという名前の男として生活している。その理由はアリエルの護衛として働くには、田舎育ちの女性よりは、どこから来たかも分からない謎多き男という方が都合が良かったから。
今まで良くも隠し通せたものだと思う。本人が強くなければ無理だったろうに。
そんなシルフィの上司――というよりは友人などの表現の方が本人たちとしては適切かもしれないが、シルフィと結婚するには色々と話をしておかなければいけない。これから先、護衛としての役目も色々と考えなければいけないだろう。もしかしたら結婚も反対されるかもしれない。
だが、それは杞憂だった。
意外にもアリエルたちは結婚に反対しなかった。まぁ、泣かせたら許さない的な雰囲気を醸し出し、シルフィに淡い恋心を抱いていた者は、ルーデウスに決闘を申し込んだりしていた。
男の格好をしていたとはいえ、その裏の顔は可愛らしい乙女である。
前半部はそんなシルフィとの結婚のために準備に奔走する様子や、シルフィとのいちゃいちゃが描かれていく。甘い結婚生活……ちょっと、いや、かなりのエ〇で構成されている。
新婚夫婦がいちゃいちゃするのは、世間一般的に言っても普通だろう。逆に新婚でいちゃいちゃしなかったら、いついちゃいちゃするというのか。両親が死んで葬式の真っ只中、パソコンに溜め込んだエ〇画像で自家発電に励んでいたような男だ。自制ができるはずもない。
しかも数年間もの間、 ”男の自信” を失っていたことで溜まりに溜まった欲求が爆発している。
……まぁ、いい。語りたいのは後半だ。
ナナホシはルーデウスとは違い、元の世界に戻るために転移魔法についての研究をしている。ルーデウスの結婚を祝いつつも、その裏では研究に明け暮れる日々を過ごしていたのだろう。
その成果をルーデウスの魔力を借りつつ試す時が来た。いきなり人を転移させるのは無理ということで、元の世界の物体を、こちらの世界に持ってくる魔方陣を作ったというのだ。理論上は完成し、小さな物体は持ってくることはできるとのこと。
しかし。
ナナホシは失敗した。
魔方陣が発動しても、地球からの物体は何も来なかった。そのことに絶望し、ナナホシは発狂。完全に壊れてしまった。これまでの疲れや苦労、それら全てが彼女を押しつぶしたのだ。
そんなナナホシをルーデウスは助けることができない。なにせ彼は元の世界に戻ることを諦めた人間だ。転移魔法について詳しい訳でもない。
そんな彼女を救ったのは、彼女が決して頼ろうとはしなかった異世界の人々――ザノバやクリフであった。彼らのアイデアは、彼女をより一段階上の領域へと押し上げた。そうして完成した魔方陣と成果には、読者もルーデウスも驚かされたことだろう。
もしかしたら戻れるかもしれない。そんな希望が見えてきた。
さらに、ルイジェルドも登場する。なんと父パウロに頼まれて、ノルンとアイシャを連れてきてくれたという。パウロは転移事件に巻き込まれて失踪したゼニスを探すため、娘達を安全な場所であるルーデウスのところに送ったという訳だ。
この娘達、つまりはルーデウスの妹達というのが、厄介なのだ。特にノルンは。
アイシャはルーデウスのことを慕っていた。かつて格好よく助けて貰ったこともあり、良い印象を持っているのだろう。母親にも色々としつけられていたようだ。
だがノルンの場合、ルーデウスがパウロをボコボコに殴っているシーンを間近に見ている。ブログ主としてはパウロが殴られても仕方がないと思ってしまったし、本人達も互いに反省し解決した問題であるが、ノルンとしてはそうではない。
あのシーンは脳裏に焼き付いていて、兄であるルーデウスに抱く感情は恐怖。それでも周囲の者達はルーデウスを褒め称えているのだから、とても居心地が悪かっただろう。
さて、そんなノルンはルーデウス達との生活に馴染めるのか。幸せ絶頂とはいえ、まだまだ問題の絶えない第十巻であった。