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【漫画】熱帯魚は雪に焦がれる3 感想

【前:第二巻】【第一巻】【次:第四巻

※ネタバレをしないように書いています。

いっそ蛙になれたら

情報

作者:萩埜まこと

試し読み:熱帯魚は雪に焦がれる 3

ざっくりあらすじ

「初めて会ったあのとき、どうしてわたしに声をかけてくれたんですか?」小夏は以前から気になっていた質問を、小雪に問いかける。もっと互いのことを知りたいと、相思相愛のはずの二人の関係性はどうなっていくか。

感想などなど

恋愛作品において、相思相愛の二人の想いがすれ違っていく展開は定番だ。本作ではそれぞれの想いの伝え方が婉曲的過ぎて、そのもどかしさによる緊張感が強い……想いの伝え方? いや、よくよく考えると互いに全くもってその想いを伝えていないのか。

この作品におけるストーリーは明確な筋があるというものではない。一応、水族館部として先輩の力になりたい小夏が、小雪がやっていたハマチショーに挑戦するという大筋がなくもないのだが。

記事を書きながら改めて思う。この作品は難しい、と。

何故かと問われれば、この物語の終着点が見えないのかもしれない……ふとそう思った。冒頭で「初めて会ったあのとき、どうしてわたしに声をかけてくれたんですか?」と小夏が小雪に問いかけるシーンから始まっていく。

画としての美しさは、花火と二人の表情が相まってかなりのものだったと思う。ただそこから得られる二人の進展はない。小雪は「どうしてだろう 勢いでかな……」という答えになっていない言葉で返し、小夏は自分が「特別」ではなかったことに落ち込み、「聞かないほうがよかったかも……」とまで語っている。

そして二人の関係は現状維持。知らない方が良いこともあると考えつつ、相手のことを知りたいという矛盾した感情を抱えている。その矛盾に対して、どのように折り合いをつけていくのか? そこが第三巻における大筋になるのかと思っていた。

しかしどうにもそういうことではないらしい。

 

二人が抱えている問題の多さが、巻を進めるごとに増えていく。思春期とはそんなものだと言われればそれまでだが。

小夏は小雪の特別になりたい、力になりたいという気持ちでいる。一方、小雪は小夏に自分の居場所という名の救いを求めている。しかしそんなことが分からない両者は、それぞれのやり方で寄り添っていく。

小夏などは分かりやすい。先輩と自分しかいない水族館部メンバーとして、ハマチショーを自分もできるように練習に励んでいる。最初は全くできなかったけれど、文化祭という本番に向けて少しずつ上手になっていく。

小雪は小夏に救いを求めている。しかしそれを言葉にすることはなく、クラスメイトから文化祭準備を手伝って欲しいと言われればそれに従い、水族館部へ足が向かうことも減っていく。小夏の元に行きたいという彼女の願いを、叶えてくれる者は一人もいない。皆が彼女を頼り、彼女の周囲にはいつも誰かがいるが、その中心にいる小雪はどこか孤独だ。

そんな先輩の苦労を見かね、水族館部としての活動は全て自分一人でもできるように、必至に頑張る小夏。ただ小夏が求めているのは、その居場所に手を引いてくれるような行動だったのに。

二人とも確かに互いのことを思っているのに、ここから幸せになっていくビジョンがどうにも見えない。

 

そういう不安と緊張にかられつつ読み進めると、最後には小さいけれど、二人にとっては大きな幸せなシーンがやって来る。やはり言葉にすることは大切で、それによってでしか伝わらない想いはあるのだろう。

これから先、二人がしっかりと想いを通じ合える間柄になるまで、一体どれほどの次巻がかかるのやら。まぁ、ゆっくりと見ていくことにしよう。緊張と不安の第三巻であった。

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