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【漫画】熱帯魚は雪に焦がれる5 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

いっそ蛙になれたら

情報

作者:萩埜まこと

試し読み:熱帯魚は雪に焦がれる 5

ざっくりあらすじ

進路を決めなければいけない時期にさしかかかった小雪は、将来を意識し始める。成績優秀、眉目秀麗、生活態度文句なしの彼女の心配など、誰一人もしていない。しかし、彼女は思い悩む。

感想などなど

高校生は将来を意識せざるを得ない時期がやってくる。かくいうブログ主も大学進学か、はたまた就職かの選択を迫られた。親はあなたの好きにすれば良いと言い、その言葉に従って好きに選んだ。工業大学に進学したことを、特に後悔はしていないが、文系の大学に進めばまた違った人生もあったのではと思う。

もう少し、自分と向き合って将来について考えていたら。

理系ではなく文系を選択していたら。

そんな後悔というか、「もしも」を考え出したらキリがないが、考えてしまうのは人としての性なのではないだろうか。ただどうすれば良かったかについては、今になっても良く分からない。

なので今、進路に迷っている高校生がいるとするならば、言いたいことはただ一つ。

盛大に悩め、と。

どんなに悩んだところで後悔し、「もしも」を想像してしまうのは避けられない。

かくいう本作のヒロイン・小雪は進路について盛大に悩んでいる。この第五巻はその悩み藻掻くシーンをずっと描いている。劇的なドラマは特にない。物語としての進展はほぼない。ただ何か決断をするための感情の発露が、繰り返されていく。

その感情の揺れ動きと、それに伴う言動に納得できるかどうかで評価が大きく割れる気がする。

 

自分の将来を決める上で重要視すべきことは何だろう。

ブログ主は大人であるが、残念ながら正しい答えを示すことはできない。多くの大人がそうであろう。もしも明確な答えを示すことができるという方もいるかもしれないが、その答えが小雪に適するかは分からない。

小雪は水族館部という特殊な部に所属している。そこで魚を飼育した経験は、他では得がたい経験であり、これから先の人生において大きな強みとなるであろう。その強みを生かせる大学として、小雪は東京海遊大学の資料を取り寄せた。

しかし彼女は迷っていた。その理由は地元を離れ、一人で東京の大学に行くということに寂しさを感じていたのだ。田舎町から遠く離れた東京という大都会で、たった一人でやっていくことに。

ただ周囲の人は、優秀な彼女がそんな不安を抱えていることを想像できない。彼女はきっとどこへいってもやっていける。なにせ彼女は眉目秀麗・成績優秀な生徒なのだから。

 

そんな彼女の寂しさを理解できる者がいるのか?

小雪はそういう存在を求めていた。ただその寂しさを言葉にして周囲に語る術を、彼女はまだ知らなかった。その方法を力業で教えてくれたのは、小夏でも父親でもなく、意外にも広瀬さんだった。

広瀬さんの助言は助言とは言い難いくらいにシンプルだ。それができれば苦労しないよというような内容だが。

そもそも他人と心を通じ合うことが難しい。それなのに自分の寂しさを理解して欲しいというのは、どこかおこがましさすらある。それでもいつかは理解して欲しいと願うことは悪いことではない。

そういう前向きな終わり方であった。

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