※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
これは愛です。
情報
作者:日日日
イラスト:x6suke
ざっくりあらすじ
凰火の恋人だった死神三番が帰ってきた。彼が猫耳幼女と結婚していることを知らなかった彼女は刀を手に取り、飛びかかっていく。
感想などなど
狂乱家族日記も参冊目に突入。奇天烈な家族構成にも慣れてしまい、最初はどこかギクシャクとしていた家族もいつしか絆が芽生え、世界を相手取って戦える最強の家族となっています。
今回は『凰火の過去』と『凶華の正体』に焦点を当てた物語となっています。これまで謎だらけ……いや、むしろ謎しかなかったことが徐々に明かされていきます。基本的に凰火視点で描かれている作品ですが、今回は凶華視点の描写がふんだんに組み込まれ、これまでぶっ飛んだ行動で読者を楽しませてくれた彼女の思いが分かります。
まずは『凰火の過去』について。これまでの話より、彼がとある事件に巻き込まれ、家族も友人も殺されて、同時に心も殺され、愛というものを忘れていたことが分かっています。
では、そこからどのように復帰したのか? 仲間はいなかったのか? どのようにして超常現象対策課に所属することになったのか(これに関してはぼんやりと示唆されてましたね)?
それら全て疑問の答えは、凰火の過去を知り、彼の恋人を名乗る死神三番の登場によって明かされていきます。
ここではそんな死神三番のことについても語らなければいけないでしょう。彼女のことを一言で言うなれば『人であることを捨てた恋する乙女』とでもしましょうか。
般若の面を被り、常にスーツを着こなす姿は奇妙そのもの。化け物千体を相手取って殺戮の限りを尽くす様は正しく人外。刀を持てば、凶華と対等に渡り合うことができる……と言えば彼女の強さというものが分かって貰えるはず。
今となっては上記のように人外化してしまった彼女ですが、凰火の過去に出てくる彼女は可愛らしい乙女なのです。過去が明かされるにつれて、一人の少女としての思いや過去の因縁が引き起こす運命の悪戯を知ってしまうこととなるのでした。
さて、そんな過去の物語と同時に『凶華の正体』という超重要なことが判明するのが、この参冊目です。猫耳を生やし、携帯電話というよく分からない能力を駆使して、人を操り、人知を越えた怪力から繰り出される攻撃は巨石をも砕く幼女……どう考えても人間ではないことは分かります。
そんな言ってしまえば無茶苦茶とも取れる設定ですが、本作では妙に納得できるように構成が練られ、物語に組み込まれていました。一度読んでしまえば、上記の全てに説明ができるのが凄いところです。
古い作品ですが、異世界転生が多い昨今だからこそ目新しく楽しめる作品なのではと思いました(逆にね)。テンプレから大きく外れた世界観、ぶっとんだキャラクター達とそれぞれの設定に納得がいくバックボーン、そんな作品が最近あるでしょうか。