※ネタバレをしないように書いています。
魔王(演技)
情報
作者:むらさきゆきや
イラスト:鶴崎貴大
試し読み:異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 (4)
ざっくりあらすじ
ディアブロはある日、聖騎士に襲われていた聖女を助けた。彼女は教会にとって超重要人物であること、彼女を取り巻く事情を知ったディアブロ達は、魔王領の都市ジルコンタワーまでの護衛を引き受けることに……
感想などなど
信仰と狂気は紙一重と言われているが、そのヤバさは聖騎士サドラーが証明してくれた。神ではなく悪魔を信仰する聖騎士アリシアも、一種の狂気に取り憑かれた信仰者と呼べるだろう。
この世界はゲームとは違い、死ねばそれまで。科学技術が発展している訳ではなく、レベルを上げる前に死んでしまうからという理由で元素魔術が育たないとされている。となると人々が宗教に縋りたくなる気持ちも分かる。
この世界において、最も強い力を持っているのは教会といっても差し支えないだろう。だからこそ、魔王クレブスクルムは正体を隠すことを求められたのだ。
さて、そんな教会の最高位者にして大主神官のルキマーナが、聖騎士に殺されそうになっていた。これは一体、何を意味するのか? 聖女の語る教会の裏は、かなりの悪が潜んでいるのだった。
創作において、教会は悪とされがちである。この作品も例外ではなかった。
ルキマーナが殺されそうになっていた理由は、彼女が教会の悪事に気付き、それを成敗しようとしたが失敗したから。失敗もなにも、彼女は何も考えず、悪事を辞めるように説得しに行っただけというのだから、平和ボケしているというべきか。まっすぐ正直者過ぎるというべきか。
教会側としては、のこのこと悪事を成敗しに来たルキマーナを殺して、証拠隠滅を試みたのだろう。そのために聖騎士ゲイバルドを送り込んだ訳だ。
だが、それはたまたま空を飛ぶ魔法を試してたディアブロによって阻止されることとなる。聖騎士というだけあって、ゲイバルドの召喚する魔物の強さはかなりのもので、その使い方も巧みだった。地中に潜ませてトラップのように使ったり、自分を飲み込ませて防御したり、複数の召喚した魔物を組み合わせて攻撃したり、ディアブロの使う元素魔術に関しても、それなりの知識を有しているらしかった。かなりの経験と知略を元に積み上げた技が光る。
ちなみにゲイバルドは筋肉マッチョのオカマ口調である。見た目と口調に騙されていては怪我するという訳だ。人は見かけで判断してはいけない。
しかし、魔王の敵ではなかった。ディアブロの魔法で全て消し飛ばされては意味がない。
そうして助けられたルキマーナ。ディアブロが空を飛んできたことから、彼のことを神と勘違いすることになるのだが、恋愛感情とは違うのでハーレム要員ではないだろう……たぶん、おそらく、きっと。
そうして教会に追われる身となったルキマーナは、バドゥタという厳正と評される男を頼りに、彼の治める教会がある国・ジルコンタワーへと足を運ぼうとしていた。その護衛を、ディアブロは引き受けることにしたのだ。
決してルキマーナの色香に惑わされたとか、彼女が可愛かったからとかそういう理由ではなく、大主神官から貰える報酬を期待しての出発となった。お金は大事だからね、仕方がない。ついでに彼がゲーム世界で作ったダンジョンも、ジルコンタワーの近くだったことも理由としては挙げられる。ゲームとは違う世界とはいえ、彼の所有物であったダンジョンの扱われ方も気になるところだ。
そうして訪れたジルコンタワー。そこはかなり悲惨な状況であった。
謎の奇病が蔓延し、その病を治すために教会が多額の金を巻き上げている。そして教会を憎んでいる国の領主・ラムニテス。ディアブロが来た途端に、《サンドホエール》という超巨大生物が国に突っ込んでくるという危機的状況。
ディアブロも冷や汗を流しつつ、事態の収拾に辺り、相変わらず魔王ムーブをしている。そして、この街で行われている悪事に気付いた時、ディアブロと強敵との戦いが幕を開けた。
この敵が滅茶苦茶つよい。ディアブロを若造扱いし、両者の間にあるはずのレベル差をものともしない経験と知略、事前準備の多さは歴戦のプロゲーマーを彷彿とさせる。果たしてディアブロは勝てるのか?
この国の行く末は、彼にかかっている。手に汗握る戦いであった。