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異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術5 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

魔王(演技)

情報

作者:むらさきゆきや

イラスト:鶴崎貴大

試し読み:異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術 (5)

ざっくりあらすじ

呪詛により呪われてしまったルキマーナを助けるため、最近になって発見されたというダンジョンに向かうこととなったディアブロ一行。そのダンジョンは、実はディアブロがゲーム上で作ったものであって……

感想などなど

厳正な男と評されていたバドゥタが、聖職者を色欲に溺れさせることで呪詛を発生させ、告死病を蔓延させていた。初登場時からバドゥタは悪そうな顔をしており、黒幕っぽいムーブをしていたため、驚かなかったという人の方が多いのではないだろうか。

しかし、そんなバドゥタが意外にもディアブロを追い詰め、あわや彼を殺さんというところまで迫ったというのは、感嘆に値すると個人的に思う。どれだけ準備を積み重ねるかで勝利が決まるという彼の考え方は、ディアブロとも共通していたりと、印象深い敵であった。

そんな彼が死んでもなお残した傷は、かなり深い。

聖女ルキマーナが、告死病に感染していたのだ……感染という言い方は正しくないか。なにせこれは呪詛。薬で治るような病気ではない。

ルキマーナが生き残るためには特別なアイテムが必要であった。それはゲーム内ではイベントをクリアすることで入手が可能であった。しかし今いる世界はゲームのようにイベントが示される訳ではない。攻略サイト通りに事が運ばない。

そこでディアブロは一つの賭けに出た。ジルコンタワー近辺で新たに発見されたというダンジョンが、ディアブロがゲームで作っていたダンジョンであると考えると、そこにはアノスがイベントで入手した特殊アイテムも貯蔵されているはず。

そのアイテムの名は《白牛象》。黒死病を治して感謝されるイベントが起きるだけ、というゲームでは何の価値もないアイテムであった。しかし、これさえあれば、ルキマーナの呪詛を治すことができる!

ダンジョンの場所を知っているというグラスウォーカーという種族のホルンと共に、ディアブロの作ったダンジョンへと向かうのであった。

 

ディアブロが作ったというダンジョン、かなり特殊な作りであった。仲間達からの評判はすこぶる悪い。

色々と突っ込みたいところはある。最初の特定の敵を倒すことで先へ進めたり、時間経過で道が変わる迷路というのはゲームで良くありそうだ。ゲームとして良くできていると思う。

しかし、階層を進むごとにディアブロの色が濃く出てくる。

とある階層は出されるクイズに答え、正解していかなければ先へ進むことができない。出されるクイズは、モンスターの倒し方や特徴を理解していなければ解けないオタク向けの内容であり、しかもチームメンバーの一人一人が答えなければならないというのも厄介だ。

とある階層ではダンスを踊って、モンスター達を楽しませなければいけない。楽しませることができなければ、実質的に無理ゲーな戦闘を強いられる。ゲームではこのダンス部分をどのようにやっていたのか、とても気になる部分である。

最下層にいるドラゴンも厄介なことこの上ない。ディアブロがいなければ、普通にみんな死んでいたと思う。それらを乗り越えなければディアブロの元に辿り着けないということは、そこまで辿り付いた時点でかなりの強者ということが伺える。

ディアブロというダンジョン制作者がいなければ無理ゲー。コントローラーを投げ出していたかもしれない。

 

さて、そんなダンジョン攻略は制作者がいるのだし苦労することもない。強いて言えば女性陣がちょっとエッチな姿を見せたりというサービスシーンくらいなものだ。みんな暑ければすぐに服を脱ぎ出すし、ディアブロがいても気にしないくらいなのだから、男にとっては精神力の勝負になる。

それにディアブロ達にとっての勝負は、ダンジョン校略後からが本番といっても過言ではない。

ダンジョン攻略の裏で、ジルコンタワーに迫る魔族の侵略。その対策に追われる者達。魔族と人の間にある絶望的なまでの力の差。それが如実に描かれ、平気で人が死んでいく世界観であるということを改めて知らしめられる。

この世界はゲームではなかった。ゲームらしい展開と、魔族と人との死闘というギャップに、それらの両面を持ったディアブロが組み合わさると、スカッとする結末が待っている。

ディアブロの新たな仲間も増え、肌面積も同時に増えた気がする第五巻であった。

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