工大生のメモ帳

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神様のメモ帳4 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

友情は永遠に

情報

作者:杉井光

イラスト:岸田メル

ざっくりあらすじ

四代目が音楽イベントの運営に乗り出し、藤島鳴海も広告担当として奔走することとなる。しかし、そのイベントは平坂錬次という男によって次々と妨害を受け、ことは次第に平坂組との全面抗争へと移っていく。

感想などなど

羽矢野友彦が自分の命を賭けて守った場所――そんな真実を暴き出した事件から、あっという間に時間は経ち、今回は四代目の過去に関わる事件を追うこととなります。

四代目は、藤島鳴海と義兄弟の杯を交わし、互いに何だかんだ信頼し合って、助け合って来た関係性です。それは、これまでの話を読んできた方なら分かって貰えるでしょう。四代目の男らしさ、鳴海を心配し気遣う思いやりに惚れた男も少なくないことと思います。

しかし、彼の過去についてはほとんど明かされておりません。彼自身に誰も聞こうとしなかったということも理由の一つでしょうが、何よりも『彼自身が話そうとはしなかった』ということが一番大きいように思います。

誰だって、一生秘密にしておきたい過去の秘密が一つや二つあるはずです。それは可愛らしいことかもしれませんし、もしかすると ”犯罪行為” だったり? ちなみに自分の話したくない過去は(自主規制)。

どれにせよ、秘密には秘密たり得る理由が存在します。犯罪行為はバレたら捕まるから隠しますし、過去のとんでもない失敗談は恥ずかしいから・経歴に傷が付くから。

今回の事件では、四代目が誰にも話そうとしてこなかった過去の秘密を、ニート探偵・アリスが暴きます。その秘密の内容ももちろんですが、何故隠そうとしているのか? といった点にも着目しながら読むと、作品に対する理解が深まるように思います。

 

事件の内容としては『四代目が運営する音楽イベントの妨害行為』です。

ヤクザが音楽イベント運営? と頭に疑問を浮かべているでしょう。その疑問は最もで、やることになったきっかけ自体は本当に偶然だったように思います。

音楽事務所がとあるプロモーターに運営を任せていたけれど、彼らのバックについている柳原会がうさんくさいということで、(比較的に)うさんくさくない四代目の元に依頼が来たようです。

……ふぅーむ。どっちもうさんくs(ry

しかし、その音楽事務所も見る目があったと言わざるを得ません。配下のメンバーは筋肉馬鹿ばかりですが、パソコン部であり文才に恵まれたハイスペックニート予備軍・鳴海と社会人の鑑であり男気の塊・四代目ら二人による敏腕ぶりは目を見張るものがあります。

例えば鳴海は音楽イベントに関するブログの更新、広告の作成、ライブハウスとの調整から日程の調整、デザインの作成その他諸々……どう考えても一人でこなすべき内容ではありません。上の人間が下々の人々に丁寧に割り振るべき仕事量です。しかも彼は高校生……? うん、高校生。高校生です。彼はきっと大物になることでしょう。

四代目の仕事内容に関しては漠然としませんが、鳴海がしていないこと以外の全てと考えると死ねます。意味が分かりません。

そんな彼ら二人とその他筋肉達による音楽イベントは順調すぎる程、順調に進んでいきます。取材の依頼もひっきりなしであり、ネット上に公開した音楽の評判は上の上、ブログも面白いということでかなりのアクセスを叩き出します(羨ましい)。

そんな彼らに降りかかる事件。それはあまりに理不尽で、目を覆いたくなるものでした。

 

始まりは地味です。いや、地味という言い方は正しくありませんね。致命傷にはならないけれど、かなりの痛手を負うギリギリ、といったところでしょうか。

鳴海が直接遭遇した事件は「イベントハウスに対する放火」「鳴海と美嘉(プロデュースしているバンドの女の子)に対する暴力行為(ただし死なない程度)」というもの。

地味です。なにせ ”誰も死んでいません” 。

今回の四代目によるイベント運営を止めたいならば、簡単な方法があります。『バンドの女の子の殺害』です。重罪であるというリスクに目を瞑れば、一番確実です。

しかし、今回の敵は死なないギリギリを攻めてくるのです。痛手ではあるものの、イベントができないことはない……ここで考えるべきは ”敵” の思惑です。

何が目的なのか?

何をしようとしているのか?

その目的が分からない限り、対策の取りようがありません。ただ筋肉馬鹿達を配備していれば解決するという問題でもないのです。

 

そんな事件が起こる最中、鳴海は偶然にも平坂錬次という男に出会います。

名前で察する人もいるのではないでしょうか。そう、彼は平坂組(現在、四代目が引き連れいている組織)の名前の由来となっている男です。話を進めていく内に、『四代目と杯を交わしたこと』『杯以上にもっと大切なものを交換したこと』などが明かされ、彼と四代目に過去 ”何かがあった” ことが漠然と伝わってきます。

そして、その ”何か” のせいで永遠とも思われた二人の関係性は壊れた……今回の事件を起こしていた主犯格は平坂錬次だったのです。

……あれ、あっという間に犯人が分かっちゃった。

とはいきません。彼は四代目と元友人であり、対等に渡り合った男。一筋縄に行くはずもなく、行方をくらました彼の姿を追うことは叶わず、自分が決してでてくることなく部下を使わせる姑息な手段、攻め手に困った四代目側の面々には疲労が見えます。

また、四代目が積極的に戦おうという意思を見せていないことも見て取れます。なにせ事件が起きた時点で犯人に目星がついていて、そのことをひた隠しにしていたのですから。

……そんな二人の過去と因縁に巻き込まれていく鳴海。彼の詐欺師の才能や、その他諸々の才能が光る話となっていました。

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