※ネタバレをしないように書いています。
※これまでのネタバレを含みます。
これはただの暇つぶし。
情報
作者:片山憲太郎
イラスト:山本ヤマト
ざっくりあらすじ
《弧人要塞》星噛絶奈に遭遇し、彼女から失踪した女性の情報を得ようとするも、人知を越えた能力に敗北する。……それでも、紅真九郎は立ち上がった。
感想などなど
……この巻が出てから六年間も新刊が出なかったらしい。何というか……残酷ですね。ネタバレになりそうですが、この巻かなーり中途半端な場所で終わってます。例えるならば、ラスボス手前で「俺たちの冒険はこれからだ!」エンドといったところでしょうか。
事件自体は、事件の真相は分かりましたけれども……といった感じ。この感想を書いている時点ではまだ次の巻を読んでいないのですが、きちんと決着は付けてくれるのでしょうか……。定期的に出してくれれば、まず間違いなく傑作として語り継がれる作品になれたというのに。
悲しいなぁ。本当に面白い作品なんですよ、これ。
さて、少しばかり前回の復習を。
紅への依頼の概要は、「妹を置いて失踪した姉を捜索して欲しい」というもの。失踪事件が厄介な理由は前回説明した通り(紅 ~醜悪祭~ 上 感想)。
今回の事件のポイントは大きく二つ。
まず一つ目は「赤い手紙が来てから姉の様子がおかしくなった」という点。この情報からして、姉が何かしらの事件に巻き込まれたことは明らかです。しかし、彼女は誰にも相談しようとしなかった。それは何故なのでしょう。
そして二つ目は「妹たった一人を置いて失踪してしまった」という点。たった一人の肉親である妹を大切にしていたという話は、これまでの捜査からも明らかです。そんな姉が妹を置いて、ましてや理由すらも説明せずに失踪するほどの理由とは一体何なのでしょうか。
……ふむ、まとめると「誰かに相談すらできない事件に姉は巻き込まれた」……しかも、「妹をたった一人置いて行くほどの事情」がある……それの全ての鍵が赤い手紙。
情報屋・銀子の支えもあり、姉が最後に見かけられたという場所近辺のカジノへと足を運び、出会いました《孤人要塞》星噛絶奈。電車に轢かれてもなお立ち上がる彼女の姿は中々に絶望的でした。自分は「こいつに勝てるのかよ……」とリアルに声が出ました。どうやら彼女の体は全て機械の体であり、だからこその耐久力だったようです。上巻でアルコールを浴びるように飲んでいたのはある意味伏線だったということですね。
そんな彼女の発言からして、事件の鍵を握っているというのは明らかです。
しかし、彼女から情報を得るにしても、主人公である紅は如何せん弱すぎる。まぁ、電車に轢かれても平然と立ち上がる化け物に、火力の化け物である紅真九郎が勝てるかと言われると……どうなんでしょう?
とりあえず上巻ではあっけなく敗北。ただ逃げることしかできなかった紅真九郎でした。
上巻では「柔沢紅香」が死亡した、という話が飛び出しました。はっきりいって目の前で爆弾が爆発しようが、平然としていそうな柔沢紅香ですが、どうやら本当に死んでしまった様子。しかも、どうやら《孤人要塞》に殺されたようです。
そんな《孤人要塞》が求めている情報は、「柔沢紅香の息子の居場所」。ここで『電波的な彼女』を読んでいた自分は、「へぇ、紅香が家に帰らないのは、自分の息子だって知られないためだったんすね」とちょっとした感動があるわけですが、それはひとまず置いておきましょう。
ここで《孤人要塞》と紅真九郎の間で行われる取引――柔沢紅香の息子の居場所の情報(実際、紅真九郎も知らないでしょうが)と失踪した妹の居場所の情報の交換。当然紅真九郎は断った訳ですが、彼の行動は《孤人要塞》に対して「柔沢紅香には息子がいる」という確信を与えました。ここらは嘘が下手過ぎたのが、あれでした。
真九郎は自分の依頼が達成されないだけでなく、柔沢紅香に迷惑を掛けるという失態まで犯してしまったという状況。最悪です。
はっきりいって勝てるビジョンが見えてきません。ここから一気に事件を解決なんてできるのか!?
と思っていたら、何というか微妙な所でこの巻は終了いたします……。そこから六年間……作者は廃人にでもなってしまったのでしょうか。
一応擁護しますと、事件の真相は分かります。残酷な裏社会の闇が明るみになりました。そして、真実を知った真九郎が取った行動は、おそらく読者の想像通りでしょう。彼が非人道的な組織の闇を放っておくような人間ではありませんでした。
どうやら結末はファンブックにて書かれていたようです。その結末と上下巻の内容を合わせた新装版が出ているようなので、そちらの購入を強くお勧めします。
↓上下巻の内容とファンブックの内容を合わせた新装版の購入を強くおすすめします。