工大生のメモ帳

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葉桜が来た夏4 ノクターン 感想

【前:第三巻】【第一巻】【次:第五巻
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

※これまでのネタバレを含みます。

憎しみの連鎖

情報

作者:夏海公司

イラスト:森井しづき

ざっくりあらすじ

ラパーチェ事件の責任を負い評議員候補の資格を剥奪された葉桜。さらに法院から監察を受けることとなる。そしてやってきたのはゴスロリ服を着たアポストリの憲兵・稻雀、同じ家で生活をすることとなる。

感想などなど

ラパーチェ事件にて学が見せた男気は格好よかったですね。無事に事件は解決し……まぁ、したのですが被害は甚大であるということに変わりはないわけで、このような事態になってしまった責任を、誰かが負わなければいけない。

そこで白羽の矢がたったのが、ラパーチェを庇おうとしていた葉桜であって、第四巻における読者と葉桜のファーストコンタクトは、法廷に立ち誇りであった記章を叩き潰されている姿であった。

これまでの彼女の努力と誇りを知っている読者と学からしてみれば、見ていて心地いいものではない。まぁ、多くの人達の抱える不満とを天秤にかけると仕方のない処置だとも思える。「葉桜がもっと早く上に白夜のことを報告しておけば、ここまで被害は広がらなかった」という指摘もごもっともではあるし。

こうして事件の幕引きから新たな生活の始まり方としては、最悪な状況と言っていいかもしれない。しかし、冒頭はもっと最悪である。

とある少女の視点から、反アポストリ派の政治家が演説している最中にいきなり襲撃を受け、周囲にいた人々も巻き込んで皆殺しにされていくシーンから始まっていくのだ。いやはやアポストリと人類の共存は、遙か彼方の幻想にしか見えないのはブログ主だけだろうか?

 

さて、散々最悪な状況というものを書き連ねてきたが、もっとさらに最悪な情報というものを書かねばならない。「良いニュースと悪いニュースがある」と言いたい所だが、残念ながら悪いニュースしかない。

まず一つ。監察(ようは監視である)としてゴスロリのアポストリ・稲雀が、葉桜と学の家に住むこととなった。ラノベとしては「ハーレム要因が増えた!」と喜ぶべき展開かもしれないが、本シリーズにおいてはそのような甘い展開は存在しない。

色々と稲雀に関して注意しなければならない点はある。例えば彼女はゴスロリ服だが憲兵である。つまりはめちゃくちゃ強い。葉桜も強いが、実力的には甲乙付けがたいだろう。そして何を考えているのか分からないというのも大きい。どっかの学とかいう奴のせいで、ブログ主もまずは相手の発言を疑うという癖がついてしまった。これが現実においても影響しないことを祈るばかりである。

次に――これが一番最悪なニュースだが――学の父である恵吾が死んだ。しかも世間には事故として公表されるような巧妙な殺人である。アポストリと人類を繋ぎ止めるシステムを構築し、今の平和を維持している張本人と言っても過言ではない男であるため、殺されてもおかしくはなかったが。

 

家庭を捨ててまでアポストリとの平和を作るために尽力した男の死……この後、何も事件が起こらないはずもない。ここで冒頭で起こっていた殺戮が発生し、反アポストリ派の政治家が殺されることになる。

ここで想像して欲しい。反アポストリ派の政治家がテロのような形で殺されたと聞いて、容疑者として思い浮かぶ者は誰か。者という表現は正しくないかもしれない。存在とでも言うべきだろうか。

人類はアポストリが野蛮な行動に出たんだ、そう判断した。マスコミも煽る、他の政治家も煽る。世論を変えるという行為は、こんなに簡単なんだということを知らしめられる。まぁ、元々微かだが心に抱えていたであろう不満がくすぶり、爆発させたという表現が適切だろう。

このままでは例え仮初めだったとしても、作られていた平和の形が壊れてしまう。学は立ち上がることになる。個人で挑むにはあまりに巨大な相手、物語は佳境に向かいつつあることを感じさせるストーリーだった。

みんなに幸せがあらんことを。

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