※ネタバレをしないように書いています。
終わりから始まる物語
情報
原作:山田鐘人
作画:アベツカサ
試し読み:葬送のフリーレン (6)
ざっくりあらすじ
第二次試験は誰も攻略できなかった迷宮攻略。その理由は最深部にある宝物庫の前に立ち塞がる敵が理由で――。
感想などなど
第一次試験ではチームごとに敵対し、殺し合って生き残ることが求められた。合格者は6チームの計18名のみで、かなり多くの人間が死んだと思われる。一級魔法使いの資格がどれほど難しいかが伺える。
第二次試験は零落の王墓という未踏破の迷宮を攻略すること。
この試験を企画し、試験管を務めているのがゼンゼという一級魔法使いだ。彼女はこれまで一人も合格者を出していないらしく、今回も合格者を出すつもりはないようだ。これまで数多くの者が挑み、帰ってこなかった難攻不落の迷宮を攻略させることの重みを、今回は身に染みて痛感させられる回となっている。
せめてもの救いが、争う必要がないということだろうか。
全員で協力すれば攻略できるだけの人材は揃っている。フリーレンは世界で最も迷宮を攻略したパーティの一員だし、フェルンはその弟子。デンケンは王宮に勤めていた魔法使いで、ほかの面々も第一次試験を攻略できるだけの技術があるということだ。
迷宮に仕掛けられたトラップは、骨すら残らない圧殺ギミックや、動き出すガーゴイル像、閉じ込められれば外に出られない密室など、そこら中に目白押しとなっている。いくらかの犠牲はあったものの、それぞれ最深部へと足を踏み入れていく。
ただ彼らは疑問に思う。たしかにトラップは苛烈で、難しいものだ。だが難攻不落、未踏破というほどではない……と。
その理由は最深部に踏み入れたら判明する。
この迷宮における最大にして最恐のギミックは、『魔法によって作られた複製体』である。
フェルンパーティに負けたヴィアベル達の前に現れたのは、『魔法によって作られた複製体』のヴィアベル達だった。その実力は模倣された魔法使いと同等の技量であり、この迷宮の主・水鏡の悪魔の作り出したものであった。
迷宮に入り込んだ人物の記憶を読み取り、対象者の複製体を作り出す。しかもその複製体は実態を持ち、実力も魔力も技術さえも模倣している。これが未踏破とされてきた理由である。
そんな諸悪の根源である水鏡の悪魔は、最深部の部屋にいる。その扉を守っているのが、今回のメンバーの中で最強の魔法使い・フリーレンだった。
フリーレンを欺いて扉をくぐろうにも ”命懸けで宝物庫の扉を閉じる魔法” により封じられた扉は開かない。壁を破ろうにもフリーレンのことだ、幾重にも対策を張っていることだろう。つまり合格するためにはフリーレンを倒さなければいけない。
その絶望感はかなりのものだろう。
ここまで残った者は全員が全員、フリーレンの実力は認めている。しかし合格のために、それぞれが策を出し合ってフリーレンを倒そうと画策する。そうしてフリーレンとフェルンの二人でフリーレンと対峙し、それ以外の面々は、ほかの複製体に挟み撃ちにされないように背中を守るということで話がまとまった。
フリーレンの魔法の高みを垣間見ることができる、フリーレン VS フリーレン&フェルン戦。最高のバトルだった。
この第六巻で第二次試験の決着から、第三次試験まで描かれていく。ここで語られるゼーリエとフリーレンの一連の会話が個人的には好きだ。
ゼーリエというのはフリーレンの師匠であるフランメの師匠のエルフだ。一級魔法使いの試験を最終的に取り仕切っているのは彼女で、この世にあるありとあらゆる魔法を知っているとされている。
そんな彼女はフリーレンのことをかなり嫌っている。理由としては、魔法に対する考え方が大きく違っているから。
フリーレンにとって魔法とは探求する過程が面白い、一方のゼーリエは過程を重視しない。フリーレンが好きだと語っている ”花畑を出す魔法” を下らないと切り捨てる。魔法を誰でも使えるものにしようとしたフランメの夢を否定し、魔法は特別なものであるべきだと主張した。
長い年月を魔法と向き合って過ごした二人の会話は、これから先の物語の根幹を担う哲学になるような気がしてならない。印象に残る巻であった。