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【漫画】葬送のフリーレン(9) 感想

【前:第八巻】【第一巻】【次:第十巻】

※ネタバレをしないように書いています。

終わりから始まる物語

情報

原作:山田鐘人

作画:アベツカサ

試し読み:葬送のフリーレン(9)

ざっくりあらすじ

魔法協会からの依頼で、七崩賢の一人・黄金郷のマハトによって黄金に変えられた城塞都市ヴァイゼを訪れたフリーレン一行。そこを覆っている結界の管理者デンケンに協力するようにという依頼であったが……。

感想などなど

フリーレンはこれまで11人の魔法使いに負けたらしい。一人は石化により封印していたクヴァールであるが、この第九巻でもう一人が判明する。七崩賢の一人・黄金郷のマハトである。

この第九巻では、このマハトが黄金に変えた街を目前にしつつ、マハトを倒す策をどうにかして導き出そうと、デンケンの集めた情報などを元に考察していく内容となっている。

かつてのクヴァールは対人に特化した防御不能の攻撃魔法を開発し、フリーレン達一行を苦しめ、石化して封印することでしか勝つことは叶わなかった。二度目は完封することができたが、何十年とかけて開発した防御魔法によるところが大きい。もしも開発することができなかったら、と考えると末恐ろしい話である。

さて、マハトは ”万物を黄金に変える魔法” を使い、人一人どころか街一つを黄金に変えることができる。かつてのクヴァールと同様に、防御魔法を開発することができれば……という期待はしない方がいいらしい。

どうやらこの ”万物を黄金に変える魔法” は魔法と言っておきながら、呪いに近しいものであるらしい。黄金に変えられた物体は、確かに魔法で黄金に変化させられているにも関わらず、魔力を全く感じない。魔法であるはずなのに魔法ではないという気持ち悪さが、マハトの強さであるといえよう。

そんなマハトは魔族でありながら、人と一緒に過ごしていたという異色の過去を持っていることも、気持ち悪さを加速させる。マハトとは一体何を考えているのか。人と魔族は互いに相容れない存在であることは、これまでの物語で十二分に理解しているつもりであるが、その決定的な差というものがこの第九巻では理解できるようになっている。

 

マハトを倒す術がない現状、黄金郷の中にいるマハトを結界で閉じ込め、寿命まで待つという時間はかかるが確実な作戦が遂行されていた。フリーレンは魔法協会からの依頼を受け、黄金郷の結界を管理しているというデンケンの元に足を運んだ。

結界の管理といえど、一年に一回程度足を運び、少しずつ拡大する黄金郷に合わせて結界のサイズを調整するだけであり、いつまでも居座る必要はない。これまでの管理者もそのように仕事をこなしてきたのだという。

それなのにデンケンは管理者として黄金郷の近くに居座り続けた。どうやらデンケンは元より、少しずつ領土を拡大しているとされる黄金郷の飲み込まれたかつての故郷にある妻の墓参りのため、この黄金郷の結界の管理という任務についたのだという。その墓参りはとうに済ませ、後は立ち去っても良いという状況で、デンケンはマハトの情報を集めることにしたらしい。

彼の胸中に渦巻く環状は複雑だ。これまでずっと先送りにし続けた墓参りを済ませたことにより何かが吹っ切れたのかもしれない。黄金になったとはいえ、そのままの姿で残り続けるそのままの姿の町並みが、デンケンを煽ったのかもしれない。

そうして行動を開始したデンケンは、『自分一人では勝てないが負けることもない』という結論を出し、フリーレンに協力を仰いだという訳だ。そんな彼が掴んだ情報が語られていく。

この第九巻の面白いポイントは、魔族と人間の間にある差を考察していくことにある。設定を紐解いていく楽しみがありつつ、それでもマハトを殺すことはできないのではという諦観が思考を支配していく。

第十巻への期待が否応に高まる第九巻であった。

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