※ネタバレをしないように書いています。
裏側にようこそ
情報
作者:宮澤伊織
イラスト:shirakaba
試し読み:裏世界ピクニック 3 ヤマノケハイ
ざっくりあらすじ
ネット上で怪異として語られるような存在が出現する裏世界。そこに入って探検する仁科鳥子と紙越空魚、二人の物語。
「ヤマノケハイ」「サンヌキさんとカラテカさん」「ささやきボイスは自己責任」
感想などなど
「ヤマノケハイ」
コトリバコ騒動を乗り越えた一行。いい加減、裏世界に懲りても良いのでは? という感性は彼女達には通用しないということは、これまでの話で痛いほど分かったであろう。空魚と鳥子、二人には裏世界が必要なのだ。
さて、そんな彼女達は裏世界での移動を楽にするため、小桜さん宅にゲートを作成(小桜は当然いい顔はしない)。ゲートを作れるようになる時点で、かなり裏世界との距離は近づいてしまったような気がする。
移動手段として農機のAP-1を用意。それをゲートを通して裏世界へと持ち寄る。そしてゲートからゲートへの移動手段として用いることに。ついでに地図も作成して、ゲート周辺の裏世界の地理だけでも把握しようという訳だ。ついでに弁当も持ち寄ったりして、正しくピクニックを敢行していく。
裏世界に果たして安全な場所はあるのか……甚だ疑問ではあるが。
そんな彼女達に牙を向いたのは、「ヤマノケハイ」というネット発の怪異である。
頭のない代わりに顔が胸の辺りについていて、一本しかない脚で跳ねつつ、「テンソウメツ」という謎の言葉を呟きながら近づいてきて、女性に取り憑くのだという。残念ながら、鳥子と空魚は二人とも女性であり、取り憑かれる可能性はいくらでもあった。
そして被害に遭ったのは、空魚であった。
思考だけははっきりしていた。しかし発する言葉は支離滅裂。必死に話しかけてくる鳥子の声に応えることはできない。段々と周囲の視界が揺らいでいって、世界がドロドロと溶けていくような幻覚に嵌まる。
ブログ主的には第一話のくねくねを思い出していた。あれも思考をおかしくさせる類いの怪異であった。あのときは鳥子がいたから助かった。今回も鳥子は隣にいる、なら大丈夫……。
しかし空魚の武器であった右目は最早機能しないに等しい。なにせ目に見えるもの全てが違うものに見え、鳥子も鳥子ではなくなって、自らの意思を伝えることもままならないのだから。果たして鳥子はそんな空魚を助けられるのだろうか?
「サンヌキさんとカラテカさん」
カラテカさんというのは、第二巻「猫の忍者に襲われる」にて空魚たちが助けた女子大生・瀬戸茜理のことである。空手を習っていたためかなり強く、猫の忍者を薙ぎ倒す戦闘力はかなり頼りになるであろう。
しかし、空魚としてはあまり彼女を歓迎していない。猫の忍者事件依頼、大学でしきりと話しかけてくる彼女に対し、冷たくあしらっているようだ。それでもめげない茜理のメンタルは見習ってもいいかもしれない。
その行き過ぎたメンタルもとい行動力により、小桜との関係性を突き止め、わざわざ小桜宅へとやって来てまで依頼をしてくる始末。まぁ、彼女は自身の幼馴染みである市川夏妃のために頑張ったらしいし、攻めることはできまい。
彼女の幼馴染み・夏妃が巻き込まれている怪異は「サンヌキカノ」。
いきなりテレパシーのようなもので猿が話しかけてきて、「サンヌキカノというのがクルから、これを見せろ。自分で取ったと言えば向こうもくれるから、後は丹羽に埋めてしまえ」といって人間の歯を渡してくるというもの。
これだけでも十分に気持ち悪いが、本番はこれから。
そんな奇怪な状況に遭遇した場合、普通は歯をどうするか。歯を渡された、「よーし大事に取っておこう」という人間は多くない。市川夏妃も一般的な思考の持ち主であり、そんな歯は気持ち悪いと捨ててしまった。
すると次の日、庭の木にぶら下がって知らない婆さんが首を吊って死んでいたのだ。
そこから起こる不穏な事件の数々。父親は肋骨バキバキ、母はひき逃げ包丁持ったおっさんが笑いながら近づいてきて、夜中に電話がかかってきて出ると女が笑っていたりと……もう散々な状況である。
空魚と鳥子が来なければどうなっていたことか。正直、あまり想像したくない。
「ささやきボイスは自己責任」
自己責任系の恐い話を御存知だろうか?
最後まで話を聞いてしまうと、何かしらの事件に巻き込まれるというものだ。つまり最後まで話を聞いた人が悪い。自己責任、という訳だ。これにも色々なバリエーションがあるらしく、話に限定せずとも「動画を最後まで見てしまったら」とか「音楽を最後まで聴いてしまったら」とか、一度位は聞いたことがあるのではないだろうか。
そんな自己責任系の怪異を避ける方法は簡単。最後まで見なければ良い。
今回は自己責任系の動画に沙月が関わっているかもしれないという話を聞きつけ、調査に乗り出した小鳥と空魚が事件に巻き込まれていく内容となっている。今回、当然怪異も出てくるが、一番の敵は人間である。
しかし、ただの人間ではない。裏世界の影響を受け、空魚や鳥子と同じように肉体の一部が不可思議な感じになってしまってい、科学では解明できないような力を身につけてしまったようである。
さらに、その力を駆使してとんでもない新興宗教を作り上げ、空魚たちに襲いかかってくる。目的はただ一つ……沙月であった。ここでも沙月かーい、と思わず突っ込んでしまった。
沙月は多くの人に影響だけ与えて消えてしまった。裏世界に関わった者達の記憶から、沙月という存在が消えることはない……ふと、そんなことを考えてしまうようなホラーであった。