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賢者の弟子を名乗る賢者13 感想

【前:第十二巻】【第一巻】【次:第十四巻】
作品リスト

※ネタバレをしないように書いています。

賢者の弟子=賢者

情報

作者:りゅうせんひろつぐ

イラスト:藤ちょこ

試し読み:賢者の弟子を名乗る賢者 13

ざっくりあらすじ

怪盗ファジーダイスを捕まえるべく、探偵ウォルフに協力することにしたミラ。彼のこれまでのファジーダイスとの戦いの話を聞きつつ、孤児院の情報に着実に近づいていることを確信する。怪盗ファジーダイスとの戦い、ついに幕開け!

感想などなど

「第十二巻……何したっけ……」と考えた時、一番最初に思い出したのがナメクジプレイだった。人くらいの大きさのナメクジに襲われる絵面が、描かれることなく救出隊がやって来たことに安堵したことを覚えている。

……他に何かしたっけ……ふむ、覚えてないな。

という方でも第十三巻は問題ない。第十三巻を読み進めるに辺り頭に入れておくべきことは、「九賢者の一人『相克のアルテシア』の経営する孤児院の情報を怪盗ファジーダイスが持っているかもしれない」ということだけだ。

珍しくミラの強化イベントが乏しい第十三巻は、怪盗ファジーダイスとの戦いという大きな一本の柱と、「わしかわいい」で構成されている。戦いとは言っても、バチバチに戦闘するというよりは、颯爽と盗み、逃げ出そうとするファジーダイスの追走劇とでも書いた方が適切だろう。

そんなファジーダイスと連戦連敗している探偵・ウォルフに、協力を要請されたミラ。勝ったことはないにせよ、彼が持っている怪盗に関する情報はかなりのものだった。例えば、ファジーダイスは降魔術士であるということを、彼はこれまでの経験から導き出していた。

降魔術士というのは、魔物や魔獣、聖霊といったヒト以外の存在が扱う魔法を、術式に変換して会得、行使することができる。使える魔法を増やすためには、魔物や魔獣が魔法を使っている器官を入手し、術式を手に入れたり、聖獣や聖霊に課される試練を乗り越えるといった面倒な手段を踏む必要があるようだ。

そんな候魔術士の強さは、使っている魔法を見れば『どの程度の難易度の試練を乗り越えてきたか』で判明する。それによると、このファジーダイスは九賢者に匹敵する力を持っていることが判明した。

となるとミラの脳裏には一人のヒーロー狂の名前が浮かんだ。九賢者『奇縁のラストラーダ』。もしや彼がファジーダイスなのか……? となると、ますます彼が九賢者『相克のアルテシア』に近づく鍵になることは確定的だ。

捕まえるとまでいかずとも、コンタクトを取る必要性は出てきた。こうして名探偵・ウォルフと手を組むことになる。

 

第十二巻で(ほぼ裸で)ミラを助けに来てくれた姿からも分かって貰える通り、ファジーダイスは義賊だ。そのため、彼にはとてつもない数のファンがいる。彼が予告状を出せば、そのファン達が総出で街に訪れ、活気と潤いに溢れさせつつ、彼が去った後も悪者が捕まったことで犯罪率が激減するのだという。

そんなファジーダイスを捕まえる必要性の有無については議論の余地があるだろう。

しかし、そんな怪盗を引き立たせるのは捕まえようと策を巡らす探偵であり、探偵を引き立たせるのもまた、策をかいくぐり予告通りに盗みを働く怪盗である。ウォルフは負け続けの探偵かもしれないが、その実力は本物で、怪盗をギリギリまで追い詰めることになる。

ファジーダイスの武器は、降魔術による睡眠や麻痺といった状態異常魔法と、誰の印象にも残らない特殊な変装技術だ。これまで狙われてきた悪役貴族は、選りすぐりの腕自慢に金を払い、護衛をつけてきた。しかし、その全てが眠らされるといった傷つけない方法で無力化されてきた。

今回、そのことを踏まえて状態異常に対する対策をばっちり決めた護衛が、ファジーダイスを待ち受ける。ガスマスクは通常装備、その他状態異常に対する耐性を徹底的に上げ、怪盗を待ち受ける。

しかし怪盗もそんな対策がされることは百も承知。 ”だからこそ” 警戒される穴を突き、ものの見事に仕事を果たす策略は見事。そのことも見越して更なる罠を張った名探偵は、もっと凄い。

読み返すと互いにギリギリの攻防だったことが分かる。戦闘はいつもより少なめだが、同時に寄り道も少なく、読みやすく分かりやすい巻であった。

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