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【漫画】賭ケグルイ双11 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

賭ケグルイ前史

情報

原作:河本ほむら

作画:斎木桂

試し読み:賭ケグルイ双 11巻

ざっくりあらすじ

壬生臣葵と芽亜里の二人による最後のゲーム『国盗り合戦』が始まった。しかしその実態は、芽亜里にわざと勝たせることで生じる莫大な払戻金により、生徒会を潰すことが目的だった。芽亜里達は10億の負債を背負ってでも、葵に負けるために動き始めるが……。

感想などなど

ゲーム『国盗り合戦』は、敗者が勝者に2000万近くを支払うという ”どちらかが必ず破滅する” ルールとなっている。どんなに葵がギャンブルに自信があるとはいえ、そのようなゲームを仕掛けるにはリスクが高すぎるのではないか……? 誰もが抱く疑問である。

しかし、この一連の決起により、高確率で大金を得つつ生徒会を潰すことができるようになっていた。

文化祭では多数の賭場が経営されている。その賭場の中で、最も利益を上げると思う賭場に金を賭ける生徒会が胴元のギャンブル『繚乱賞記念』が開催されていた。それぞれの賭場には前評判に応じた倍率が設定されており、我らが文芸部の倍率は500倍。もしも文芸部の利益が最も多かった場合、文芸部に1万賭けていただけで500万の払い戻しが、生徒会から行われるということだ。

ただ倍率が高いということは勝ちの目が低いと生徒会に思われているということだ。そんな文芸部に、壬生臣葵は10億円を賭けた。

それは何故か?

文芸部がゲーム『国盗り合戦』で勝利した場合の配当金は、観客達が予想した勝敗に応じてベットした金額によって決まる。正確には予想を的中させた者達に二倍の払い戻しをした後、残った金額を文芸部が総取りする仕組みになっている。要は一連のギャンブルは、文芸部が胴元として行った ”体” ということである。

そんな中で壬生臣葵は『壬生臣葵の勝利』に10億円をベットした。つまりこのベットの予想が外れた場合――文芸部が勝利した場合、文芸部は10億円の利益を得るということである。これは他の賭場では追従できないくらいに莫大な利益であり、トップに躍り出ることは疑いようがない。

そのような状況になった時、生徒会は10億円の500倍、5000億円という払戻金を壬生臣葵に支払わなければならなくなる。そんな破格な金額を支払う能力は、生徒会といえどない。払えたとしても生徒会の基盤が崩れ去るには十分すぎる金が動く。

そのために葵は、『国盗り合戦』では芽亜里に勝たせようと動いていた。このままいけば葵は生徒会を潰せて満足、芽亜里は大金をゲットしつつ勝者に一歩近づく。互いにWIN WINの勝負ということである。

しかしその道筋は自分の望んだ勝者ではないと、払い戻しで支払わなければならなくなる10億円の負債を背負ってでも負ける道を模索し始めた。互いに負けようと画策するゲームが始まる! ……といった熱い場面で聚楽が介入、『文芸部の勝利』に10億円をベットしたのだ。

 

葵の計画としては(これまで説明したように)、10億円の負債を背負わないために全力で勝とうとする芽亜里達にわざと負けることで文芸部に荒稼ぎさせ、それによって生じる『繚乱賞記念』の払戻金5000億円を生徒会に支払わせることを目論んでいる。たとえ10億円の負債に怯まず、芽亜里が全力で負けると宣言する不測の事態になったとしても「葵が負けようとする」という計画は変わらない。

それが聚楽の介入によりひっくり返った。

壬生臣葵が勝利した場合、文芸部は壬生臣葵に対して払い戻し金の10億円を支払う必要がある。その負債となる10億円が聚楽から提供される10億円で相殺される。また文芸部が勝ったとしても、利益になるはずの10億円は聚楽への払戻金で使われてしまう。要はどう足掻いても文芸部の利益の10億円はなくなってしまったのだ。

壬生臣葵の作戦は完璧だった。しかし芽亜里の意思を尊重して負ける道を選ばせてくれた文芸部の仲間達、芽亜里に対する歪んだ想いを向ける聚楽といった周囲の人の予想だにしない行動により瓦解した。

ここから先は互いの意地のぶつかり合い、勝つためのギャンブルが幕を開けた。ここからは葵の視点も交えつつ、『国盗り合戦』の奥深さを理解しつつ、騙し合いの頭脳戦が繰り広げられていく。

 

芽亜里というギャンブラーに影響されたギャンブラーは多い。彼女の強さは多くの人を動かし、惹きつける魅力がある。その強さ=本作の魅力であり、この『国盗り合戦』においても描かれていく。

おそらく最も壬生臣葵のことを理解することができた人間は、許嫁の咲良でも、彼を心酔する下月売でもなく、芽亜里なのだろうと思う。彼が決起にいたるまでの経緯や、ターゲットとして芽亜里を選んだ理由、その全てに納得がいく壬生臣葵という人間が心に抱えている気持ちを暴き出し、その全てを利用した。

この勝利は頭が良いとか、運が良いとかそういった単純なものではなく、芽亜里という人間の強さが引っ張り込んだものだったと思う。良いゲームであった。

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