※ネタバレをしないように書いています。
賭ケグルイ前史
情報
原作:河本ほむら
作画:斎木桂
試し読み:賭ケグルイ双 15巻
ざっくりあらすじ
ギャンブル「封建遊戯」を進めていく中で、イカサマを見抜かれていたことを突き付けられた神々廻は絶望に打ちひしがれるが、それでも強者二人に抗っていく。勝者になるために戦ってきた早乙女の物語の結末は如何に……。
感想などなど
神々廻 vs 早乙女 vs 聚楽
強者三人が挑むギャンブル「封建遊戯」は、負ければ1億近い負債を背負うことになる上、勝者はたった一人という厳しいゲームだ。早乙女がこのゲームにおける "勝者" になるためには、神々廻と聚楽の二人を出し抜くことが必要になる。
しかし、それが難しいことはここまで読んできた方ならば分かるだろう。
聚楽との因縁は第5巻から始まり、かつては自分の跡を継がないかと言われながら、ついでのように文芸部の賭場を潰された。こちらの思いや願いが見透かされているような気持ち悪さと、早乙女とは方向性の違う強さを見せつけられてきた。
第十四巻において、神々廻達は調査した結果から聚楽の強さを下記のように評価している。
そのスタイルは一言で言うなら「圧倒」
ただ勝つだけじゃない
相手の作戦も工作もイカサマすら
すべてを読んで それを叩き潰し…心を折る
首輪をつけた家畜・佐渡みくらを連れていることからも、壬生臣葵が負けたことを面白かったと言っていたことからも、ドSだということは知っていたが、ギャンブルをする彼女はただ勝つだけでなく、相手の心をどうやれば壊せるかも考えているようだ。そんな中、どんなにやっても壊れない早乙女との戦いは楽しかったのではないかと思う。
そんな変態に下剋上を仕掛けた神々廻だが、彼女も早乙女に一度泥をつけて文芸部を奪った強者である。イカサマを使ってゲームを仕掛け、相手には見抜かれるだろうことまで見越すという勝負強さは見事であった。
さて、そんな二人に挟まれた早乙女はこのゲームにどう臨むのか。
15巻はいきなり早乙女達が形勢逆転する展開から始まっていく。終始、有利に進めていた神々廻の風向きが怪しくなって、いつしか聚楽と早乙女の戦いになりつつあった中、早乙女が神々廻のイカサマに気付いたことを語り出す。そして聚楽は "最初から" 神々廻のイカサマには気付いていたという衝撃の事実まで明かされていく。
それにしたって、聚楽の読みの精度は圧倒的だった。だからこそ神々廻はイカサマを疑い、イカサマを見抜こうと躍起になっていた。しかし、どうやら聚楽はイカサマなんてしていなかった。彼女は神々廻の目線の動きから、どの駒を出すのかを判断していたのである。
イカサマを見抜かれ、イカサマをしていると思っていた相手はしていなかった。これまでの余裕のある笑みは一気に崩れ、苦々しい表情で下を見ることしかできない。自分と聚楽と早乙女の間に、実力差があったことを見せつけられた訳だ。
とはいえ、ここで落ち込んでいるようでは勝者になれない。彼女の背中を押すように、早乙女の言葉が続く。
あんたの弱みは今晒された…改善できる
なら ここからが勝負でしょ
この弱みを改善できれば、まだゲームに逆転できる。
それにしても、どうしてこのような背中を押すようなことを早乙女は言ったのだろうか? 敵であるはずの相手を助けるようなことをする意味はあったのだろうか?
1巻から一貫して、勝者になることへの強い拘りを持ってギャンブルをしてきた。それに感化されるように彼女の周りに集まったのが文芸部メンバーである。とはいえ、ここで彼女が言う勝者とは一体どういった存在なのだろうか。
1巻において、ギャンブルに勝利することで幼馴染みである花手毬つづらを救ったのは、遠い昔の記憶である。しかし、あの時の彼女は正しく勝者だった。あの時の彼女の姿を見たからこそ、つづらはここまで付いてきたのだ。
この第十五巻における聚楽との対決は、早乙女と、彼女の勝者になるという意思を受け入れて覚悟を決めた文芸部メンバーがいたからこそ、数少ないチャンスの全てを手繰り寄せることができた故の最高の決着だったと思う。
本編『賭ケグルイ』の冒頭では落ちぶれていた早乙女に繋がることを考えると、本作はバットエンド確定だと思っていた。だからこそ、最終巻を読み進める手は進まなかった。ギリギリまで追い詰められて、このまま負ける未来ばかり想像していた。読者である自分が、まるっきり諦めていた。
早乙女達は全く諦めていなかったというのに。
ただギャンブルに強いというだけでは決して描けないギャンブル漫画であり、早乙女だからこそ導けた結末だったと思う。良いギャンブル漫画でした。