※ネタバレをしないように書いています。
賭ケグルイ前史
情報
原作:河本ほむら
作画:斎木桂
試し読み:賭ケグルイ双 2巻
ざっくりあらすじ
立ち上げた賭場で荒稼ぎしていたところを邪魔してきたのは、生徒会執行役員・壬生臣葵。彼は生徒会長・桃喰輝羅莉を潰すという目的のため、芽亜里の協力が必要だと語るが――。
感想などなど
名門・私立百花王学園においてはギャンブルの強さが全てを決定づける。
つまり生徒会役員にまで上り詰めた者達は皆、例外なくギャンブルが強い。本編では蛇喰夢子にボッコボコにされて人間味ある姿を晒しているが、前史に当たる本作では強者の雰囲気をまとっている。
壬生臣葵もそんな生徒会役員の一人であり、よっぽどのことがない限り負けることのないゲーム「魔法のダイスゲーム」で、逆に賭場を潰してしまった男である。方法はいたってシンプルな「マーチンゲール法」だ。
負けるたびに賭け金を倍に上げることで、いずれ勝った時にそれまでも負債を上回る払い戻しを貰うことで、結果として勝つ。絶対に勝てないギャンブルでない限り、絶対に損をしない理論上の必勝法である。
理論上といったのは、いずれ勝つまで賭け金を倍にし続けるという理屈が現実にはできないため実施不可能であるため。また、賭け金を倍々にし続け、いずれ来るであろう莫大な払い戻しが発生した際、賭場側が支払いできない可能性があるというため。
その最悪な事象が、今回は発生した。莫大な払い戻しが発生し、賭場が支払いできなくなってしまった。これまで儲けは全て無に帰した。そんな芽亜里達に、壬生臣葵が持ちかけたのは現生徒会長・桃喰輝羅莉ための作戦の実行者になって欲しいという内容であった。
壬生臣葵は語る。現在の家畜制度の酷さ、家畜が不満のはけ口になっていることで大半の生徒が現状維持を望んでいるという実情を。そしてそれらから家畜が解放されるには、制度を潰す=生徒会長を潰すしかないということを。
その第一段階として、家畜たちの解放を制度に則って行おうとしている。そのために必要なのは大量の金。その金稼ぎを芽亜里に行って欲しいという訳だ。壬生臣葵がやれと言いたいが、まぁ、芽亜里は賭場を潰されたことで金に困っている。ある種の脅迫により、彼女は「カップリングパーティ」というゲームに参加することになる。
このゲーム、一筋縄ではいかない。
敗者は金だけではなく身体まで差し出す可能性があるのだ。
このゲームは男性五人、女性五人でそれぞれチームを作って対戦(?)する。まず女性チームは、男性チームの内から一人を「告白相手」として選択する。男性チームは、女性チームの内から一人を「告白を受け入れる相手」を選択する。
それぞれ「告白相手」と「告白を受け入れる相手」が合致した場合、「カップル成立」として女性が男性に賭け金を支払う。合致しなかった場合、「カップル不成立」として男性が女性に賭け金を支払う。
また、女性側には特典が用意されている。それが「告白相手」選択時に『乙女の約束』という名の義務を宣言することで、敗北時にその義務を負うことで賭け金を値引きできるというものだ。
この『乙女の約束』の内容としては、「電話番号交換」で賭け金が半分。「一緒にお食事」で3分の1。「一日デート」で5分の1。「一日お泊まり」で10分の1といった風になっている。
ちなみにこの『乙女の約束』は、一度宣言したからには撤回はできない。絶対服従なのでお忘れなく……身体を差し出す可能性というのは、こういうことである。ここまで書けば分かって貰えると思うが、男女ともに目的は金稼ぎだ。婚活パーティのように主催者は説明しているが、どう見ても賭場である。男女ともにギラついた表情は、異性を漁りに来ているのとは別種である。
そういえば賭け金に言及するのを忘れていたが、賭け金は一律100万円である。さすがは名門のお金持ち学校、動く金の額が違う。追い詰められた者が『乙女の約束』を使うことは、往々にしてあるのだ。
事実、早乙女達は『乙女の約束』の「一緒にお食事」を宣言し、「告白相手」を決めた。もしもここで「カップル成立」してしまえば、相手と一緒にお食事をしつつ、さらに33万円を支払うという最悪の展開が待っている。
そして、そういった最悪の予想というのは的中する。
第一巻では3つのゲームを行っていたが、この第二巻では「カップリングゲーム」だけとなっている。しかし、かなり満足度は高い。このゲームを通して、起承転結がカッチリ決まっているのだ。
最初は「カップリングゲーム」の罠にしっかりはまり損をし、そこから軌道修正して勝ちをもぎ取ろうとする。その間の疑心暗鬼から、裏切り者判明のシーンまでが良く出来ている。今更だが絵の上手さも、ここでは光った。
勝者となって敗者をあざ笑う芽亜里が最高であった。最後に一言言い放つ彼女を、かっこいいと思った者はブログ主だけではないだろう。このシーンだけでも読む価値はあったと思う。