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転生したら剣でした10 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 10

ざっくりあらすじ

ミューレリアを倒したフランと師匠たちは、神級鍛冶師アリステアに助けられる。もともとの目的の一つに、神級鍛冶師に会って師匠の解析をしてもらうことがあったフランたちは、さっそくアリステアに依頼することに……。

感想などなど

黒猫族が進化が封印された原因を作り出した元凶・ミューレリア。彼女の復讐心は長い年月を経て、良い形で果たすことができたのではないだろうか。数々の犠牲を経て討伐された彼女の最期は、すべてに終止符を打って、成仏させることができたのではないだろうか。

数々の犠牲者の内の一人、それがキアラ師匠である。

キアラ師匠は最弱と言われた黒猫族の中でも異例の強さを誇る強者だ。その強さを見初められ、現獣王リグディスの師匠として彼を鍛え上げた実績を持つ。そんな彼女の戦闘シーンは第九巻でお披露目となった。その活躍に興奮した読者もいたのではないだろうか。

しかし、そのあとにミューレリアとの戦闘で命を落とすこととなる。

フランにとって仲間が死ぬのは二度目だ。一度目はウルムットのダンジョン攻略時に、パーティメンバーに騙されて同じ黒猫族の仲間・イニーニャが殺された。犯人は騙し討ちの天才のような奴で、正面切って戦えば負けることなどありえない相手だったことが悔やまれる。二度目がキアラ師匠ということになる。

強くなると幾たびも誓い、進化まで獲得して、それでも師匠を助けることはできなかった。

ミューレリアとの戦いは死闘であった。あの状況下で、死者がキアラ師匠だけというのは奇跡と言っていい。それに年老いて寿命で死ぬようなことを、キアラ師匠は望んでいない。きっと戦って戦って戦い抜いて死ぬ結末を求めていただろうと思う。

彼女にとって死ぬべくして死んだ戦いだったのかもしれない。

 

死者の思いを生者が想像で語ったところで妄想にしかならない。生きている者達のその後について、つまりは第十巻の展開について語っていきたい。

ついに念願の神級鍛冶師アリステアと顔合わせ、勝手な想像でいかついオッサン像を思い描いていたのだが、想像と何一つかすりもしない美女が現れた。しかも面倒見がよくて、金にがめつくなくて、説明一つとってしてもかみ砕いて分かりやすくしてくれる。

勝手に職人気質で頑固でがめつい人を想像していたので謝罪したいくらいなのだが、そんな彼女のおかげで師匠についてかなりのことが分かった。とはいえ、彼女の憶測などが混じっているらしいので、今後覆る可能性も考慮しておかねばなるまい。

むしろ神級鍛冶師であっても、憶測で語るしかない部分が多いというのが、インテリジェンスウェポンの凄まじさを物語っている。彼女の話は全部ネタバレのようなものなので多くを語れないが、一部だけ興味惹かれる部分を抜粋して語りたい。

まず、なんと師匠は壊れかけていた。

スキルを使用しようとする度に、謎の激痛に襲われるようになった師匠。何かしらの異常が起きていることは間違いないが、その原因が分からずじまいでいた。人間ならば疲労が溜まれば、そういうこともあるかもしれないが、その発想がインテリジェンスウェポンに通用するとも思えない。

どうやら師匠が取得できるスキルには限りがあるようなのだ。ただむやみやたらにスキルを取れば寿命を縮めることになり、効率を考えなければならなかったという訳だ。そこらへんをバッチリ対処してくれた。

他にも、師匠を作っている素材は、オレイカルコスとかいう神級鍛冶師にしか生み出すことができない特殊な金属であると分かったり、師匠は複数人で作成された可能性が高いと判明したり(中身と外身で違う)、様々な情報が判明する。

神剣について理解が捗る、読んでいて楽しい話であった。

 

神級鍛冶師アリステアによる神剣に関する学びだけでなく、師匠やフランの装備が超強化も目の当たりにできる巻となっている。例えば先ほどスキルの数に限りがあるという話をした。

その状況を解消するため、いらないと思われるスキルを削除した他、組み合わせて強化できるスキルを組み合わせることでスキルの数を減らしている。これが意外なシナジーを生んだり、単純に強くなったりしている。

他にも神級鍛冶師の装備を貰ったりと、「そこまでしてもらっていいんですか?」と首をかしげたくなるくらいに色々なものを貰った。神級鍛冶師アリステアだけではない。国を守った英雄として、獣王から報酬を貰ったりもした。これまで虐げられることの多かったフランが、多くの人から尊敬されるように、感謝の言葉を述べられるようになった。

キアラ師匠の死を悲しむ余裕はない。まだまだこれからすべきことがある。

悲しみの中に希望が見いだせる第十巻であった。

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