工大生のメモ帳

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転生したら剣でした11 感想

【前:第十巻】【第一巻】【次:第十二巻
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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 11

ざっくりあらすじ

獣人国の一件を解決し英雄となったフランは、そのままバルボラに戻り、ガルスと再会するために調査を開始する。すると悪い噂の絶えない貴族に連れ去られたまま行方不明だと知る。

感想などなど

本作にはあまり「○○編」という区切りはない。

しかし獣人国でのキアラ婆さんとの出会いから、黒猫族の村を守るための一連の戦い、神級鍛冶師アリステアに色々と教えて貰って、国から英雄として褒美を貰った第十巻までの物語を「獣人編」とするならば、あまりに濃い内容だった。

フランが戦闘面、心理面で強くなったというだけではなく、この世界に関しても多くのことが判明した。雑魚種族である黒猫族の未来にも、いくらかの希望の光も見えた。フランのみならず、インテリジェンスウェポンの師匠も強化されたことは言わずもがな。

この第十一巻からは、カレーに食卓が席巻されたバルボラに戻り、忘れかけていたガルスの捜索を再開する。ここからの物語を「○○編」とくくるなら、自分は「狂信剣編」と名付けようと思う。

無難な名付けなのではないだろうか。その真意が分かるのは、第十一巻でもかなり最後の方になるが。前半部分の平穏さが、一気に瓦解し壊れていく後半は、ある意味でホラーのようである。

ネタバレは避けつつ、その雰囲気を伝えられれば良いのだが……とにかく語っていこう。

 

ガルス爺さんというのは、第一巻でもお世話になった黒猫シリーズ装備を一式作ってくれた鍛冶師である。読み返してみると、ダンジョンマスターという混沌の神の眷属の話を、一番最初にしてくれたのはこの人だったりする。

そんなガルス爺さんの行方を捜す……ためにまずはオークションに参加することに。

失踪する直前にフランが受け取ったガルス爺さんからの手紙には、不自然な形で武具オーディションについてと鞘を作ったことが書かれていた(第七巻)。これは数少ないガルス爺さんが残した痕跡であり、オーディションで再会できることを期待していた。しかしながらオーディションにガルス爺さんは現れず、落札した鞘に刻まれた『蠍獅子に睨まれた戦乙女のいる屋敷』という暗号だけが残った。

その調査の過程で浮かび上がったのが、オルメス伯爵家である。

当然ながらフランは調査に乗り出す。師匠の静止がなければ、単身で乗り込んで大事件を起こしていたところだったがグッと堪える。ちなみにこのオルメス伯爵家の家のすぐ近くに、嫌われ者のアシュトナー侯爵家もある。

ここらを調査すると出てくる、出てくる怪しい話が。

そもそもアシュトナー家というのは、フランの魔剣を奪うためにアレコレしたり、女性を篭絡して不正をさせていたあのセルディオを、薬漬けにして裏で操っていた侯爵家である。そんな貴族に良い話を期待するというのが間違っている。

そのオルメス伯爵との間で密偵を遣わせ、何やら怪しげなことをしているらしい。その怪しいことが何かが分かればいいのだが……という矢先、フランの持っている魔剣を買いたいという男が現れる。

……薬漬けにされた挙句に魔剣を集めるためにあらゆる犯罪に手を染めたセルディオ。魔剣を買うために交渉に来た怪しい男。すべては魔剣を中心にして事件は動き出す。

 

事件の黒幕たるアシュトナー侯爵家が動き出した時、街は戦場となる。

キアラ婆さんが死んだことを皮切りにしたのか、情け容赦なく人が死んでいくようになった。敵の使う技の数々も、倫理観を捨て去ったかのような強烈なものになっている。文章だから読めているが、リアルな絵柄で描写されたら大層えげつないことになると思う。

こいつらをどう倒すのか? ガルス爺さんは……? 気になるところで終わった第十一巻、十二巻まで一緒に買っておくことをお勧めする。

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