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転生したら剣でした13 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 13

ざっくりあらすじ

師匠が始めて目覚めた魔狼の平原に戻ってきて修行することにした師匠とフラン。久しぶりのアレッサの街を懐かしむのも束の間、平原での修行が始まる。

感想などなど

アレッサ……フランと師匠が出会ってから初めて足を踏み入れた街であり、冒険者としての華々しい活躍が始まった街でもある。そこに戻ってきたのは、そこの近くにある魔狼の平原に用があるためだ。

魔狼の平原……これもまた懐かしい。『転生したら剣でした』シリーズが幕を開けた始まりの地であり、師匠が突き刺さっていた場所でもある。当時は知らなかったが、そこは冒険者ランクB以上でなければ立ち入ることが許されない危険地帯だった。

第十二巻では狂信剣が大暴れして王都が崩壊するという大事件を経験し、自分たちの無力さを思い知った二人。魔狼の平原では魔力を吸われるため、魔法に頼ることができない上、そこに生息する魔物も強いということもあり、二人が強くなるための修行場として白羽の矢が立った。

また、師匠が目覚めた場所を調査することで、謎に包まれた師匠のルーツを知ることができるのではという期待もあった。二兎を追う者は一兎も得ずというが、この第十三巻では修行も大成功、師匠のルーツもしっかり知ることができたという一石二鳥回である。

師匠のルーツについて気になっている方も多いことだろう。一応、本ブログはネタバレをしないという絶対のルールを掲げている。第十三巻において、師匠のルーツについては前半部で描かれており、どこからどこまでがネタバレなのか判断が付きにくい部分である。

ただ第十三巻を読んでも先が気になるドキドキ感は味わえるように最善を尽くすつもりである。

 

『俺の名はフェンリル。元神獣にして、邪神を喰らって狂いし邪獣。そして、師匠の中に魂を封じられている間借り人だ』

師匠の中にいてこれまで何度か声だけの登場だった男の正体が明かされた。まぁ、おおよその読者が「もしや?」と思っていたのではないだろうか。とはいえ本人の口から語られると、やはり驚いてしまうものだ。

彼が語る物語は、この世界の神話の片隅で忘れられてしまうようなエピローグのようなものであった。邪神が現れ、神がそいつを封印した。邪神を喰らって狂った邪獣も一緒に封印する必要があり、その封印の場として使われていたのが、かつて師匠が刺さっていた台座だった。

魔力を吸ってしまう特殊な大地や空間は、全て邪神を封印するというためのギミックであったということらしい。道理で生息する魔物がみんな強い訳である。そうして長い年月が経ち、邪神は浄化されつつあるというのだから、この話はめでたし、めでたし……という風に終わってくれれば話は早かった。

問題はフェンリルである。浄化したい邪神の汚れた魂は、フェンリルを少しずつ侵食しており、このままでは駄目だということで、『フェンリルを冒している邪神の魂を浄化するシステム』を作り出した。

そのシステムが師匠なのだ。

……いや、待て。だとすれば師匠の中に別世界の人間の魂が入っていることの説明がつかないではないか! と憤慨される方もいるかもしれない。そこにも説明が行われていくのだから安心して欲しい。

そこから先は読んで確認して貰おう。

 

師匠のルーツが分かったというのは大きな進歩だが、この第十三巻ではフランやウルシも爆発的に強くなる。第十二巻において自身の無力さを思い知った二人の「強くなりたい」という意思の強さが垣間見える第十三巻。

修行回というのは、物語としての進展もなく退屈なものだが、本シリーズでは強くなることが物語としての展開と直接的に繋がっていく。なにせ師匠がより高みに至るためには、自身のルーツを知ることが必要不可欠であったり、フランはフランで成長を遂げるためには一時的に師匠と離れる必要があった。ウルシもまた、フェンリルの聖地(?)とも呼べる魔狼の平原に来る必要があったと分かる。

全てが繋がって、全員の成長に繋がっていく。心身ともにたくましくなる第十三巻であった。

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