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転生したら剣でした5 感想

【前:第四巻】【第一巻】【次:第六巻
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※ネタバレをしないように書いています。

剣として生きていく

情報

作者:棚架ユウ

イラスト:るろを

試し読み:転生したら剣でした 5

ざっくりあらすじ

ついにウルムットに到着したフランと師匠。そこで念願のダンジョン探索を始めるが、その前に、猫人族の進化条件を知っているという存在が、ダンジョンの最深部にいるという話を聞きつける。

感想などなど

フランの目標は第一巻から共通し、黒猫族の進化だ。

進化とはそれぞれの種族が持っているはずのフォームチェンジスキルのことであり、それにより容姿が変わるだけでなく、ステータスも大幅に強化される。黒猫族は、かつて大罪を犯したことにより進化が神によって剥奪された種族である。その罪の内容は明かされていないが、それからというもの進化をした猫人族はいない。

そのために受けてきた迫害は、これまで幾度となく描かれてきた。誰もがフランのことを馬鹿にし、雑魚扱いし、そのたびに返り討ちに遭っている。そんなフランの活躍によって徐々に猫人族に対する考え方、向き合い方も変化しているように感じるが、それでもまだまだ足りないだろう。

この第五巻でも冒頭からいきなりセルディオ・レセップス子爵に絡まれてしまう。絡み方もサイテーだ。「魔剣をよこせ」「君のような若い子が使うよりも自分が使った方が有益だ」「金は払おう(ただし安銭)」「金がいらないなら妾にしてあげよう」……といった感じで魔剣を奪いつつ、フランも自分のものにしようとしてくる。

師匠はブチギレ、スキルをぶっ放そうとするが、代わりにフランが素手でボコボコにする。魔剣がふるわれなかったことに感謝すべきだ。そんな騒ぎを聞きつけた兵士は、フランが悪いと決めつけて連行しようとする。なんとも酷い話だ。

そんな彼女を助けてくれたのが、ディアスという冒険者だ。年老いた老人ではあるが、その力は絶大で、兵士達からの信頼も厚い様子。彼のような人物もいるから、世界は捨てたもんじゃないなと思える。

そして黒猫族の進化の情報を持っているのが、このディアスという男なのだ。

 

正確にはディアスが進化の情報を持っている訳ではない。進化の情報を持っている存在を知っているというべきだ。

人物ではなく存在と書いたのには、それなりの理由がある。

なんとその存在は、ウルムットのダンジョンの最深部にいるダンジョンマスターだからだ。

ダンジョンマスターというのは、かつての浮遊島でのダンジョンマスターと同様に人がなることもある。ダンジョンマスターとなった者は、ダンジョンに適した容姿や人格へと変貌を遂げ、絶大な力を得ることができる。そしてダンジョンのボスとして君臨し、ダンジョン内の魔獣やトラップを管理する。

ダンジョンは魔獣のあふれ出る危険性もあるが(第一巻で魔獣がゴブリンが大量発生していた)、ダンジョンで採取できるアイテムなどは重要な資源となる。ダンジョンマスターと良いお付き合いをしていくことは、ダンジョンを中心にして栄える街にとって重要な生命線となる。

ディアスはウルムットのダンジョンマスターと交渉し、ダンジョン内に魔獣が発生しすぎないように調整させるという大役を担っているらしい。そんな彼が、ダンジョンマスターは黒猫族の進化の条件を知っていると教えてくれたのだ。

となるとダンジョンを攻略しない訳にはいかない。

この攻略が意外にも超過酷だった。

 

ダンジョン攻略は一人でやるものではない。大抵は複数人でパーティを組み、それぞれに役割を与えてダンジョンを攻略していく。地図を作る人だったり、罠を発見/解除する人だったり、前衛だったり、回復職だったり……フランの場合には師匠というインテリジェンスウェポンがついているといえ、仲間が欲しいところだ。

しかしフランは黒猫族。Dランクになったとはいえ、まだまだ冒険者からは舐められる立場にある。そんな彼女が初めて信頼できるかもしれない、同じ黒猫族の仲間と出会った。

彼女の名はイニーニャ。可愛い名前である。

彼女もまた、フランと同じく黒猫族の進化のために奮闘しており、仲間と共にダンジョン攻略など頑張っているらしかった。口数は少ないが、同類を見つけたフランはどこか嬉しそうだ。

ただ彼女もフランも冒険者……いつ死んでもおかしくない。死ぬ覚悟はしているのだ。

 

数々の犠牲の下、フランはダンジョンを攻略する。そこで明かされるのは黒猫族の歴史だった。この第五巻だけで大きく物語は進んでいく。

ダンジョン攻略の緊張感、世界についての謎が明かされていく展開……読み応えのある第五巻であった。とりあえず本シリーズを読み始めた方は、この第五巻まで読むことをおすすめしたい。

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