工大生のメモ帳

読書感想その他もろもろ

転生大聖女の目覚め 〜瘴気を浄化し続けること二十年、起きたら伝説の大聖女になってました〜 感想

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻

※ネタバレをしないように書いています。

世界を救った大英雄

情報

作者:錬金王

イラスト:keepout

試し読み:転生大聖女の目覚め〜瘴気を浄化し続けること二十年、起きたら伝説の大聖女になってました〜

ざっくりあらすじ

世界を脅かす魔王を討伐するも、死に際に放たれた瘴気が世界を滅ぼす勢いで広がっていこうとしていた。その瘴気を、自分の身を犠牲にして封じ込めた聖女ソフィアは、二十年後の世界で目を覚ます。

感想などなど

自分を犠牲にすれば世界を救えるという場面に直面し、自分を犠牲にできる者がこの世界にどれほどいるか。誰だって自分の身は可愛いし、生きられるのならば生き残りたい。

とっさに死ぬ覚悟ができる者などそうそういない……だが、そういったことができる者こそ、世界を救う救世主になる条件なのかもしれない。

そんな条件を満たした者が、本作の主人公・ソフィアである。一応、元日本人の転生者で、剣と魔法のファンタジー世界にやって来て困惑しながらも聖女としての特訓を受け大成。聖女として勇者パーティメンバーに加わり、魔王討伐では面目躍如の活躍を見せた。

そして魔王にトドメを刺したその刹那、魔王の瘴気が世界を滅ぼす勢いで広がろうとしていた。瘴気というのは、いわゆる生命を滅ぼす空気のようなもので、もしも全世界に広がりでもすれば生き物の住むことのできない死んだ世界となってしまう。

その瘴気を抑えるだけの力は、その場にいる誰にも残っていない。

ただ一つ残された可能性、それが女神の加護を受けたソフィアが、その瘴気全てをその身一つで受け、長い年月をかけて浄化するというもの。あくまで “できるかもしれない” という可能性の話であり、むしろ失敗する可能性の方が高い。

しかしソフィアはその作戦に乗った。そして全ての魔力を解放、浄化の結界を作り、自分もろとも瘴気と共に閉じこもった。物語はここから二十年後、浄化を完了して結界の外に出てから始まる。

 

二十年もあれば子供はすっかり大人となり、結婚して子供がいてもおかしくない。当時ソフィアと共に魔王を討伐したメンバーも、引退している頃かもしれない。とにかく二十年という歳月はあまりに長い。

現代でいえばガラケーがスマホに、ゲーム機は四世代くらい進んでいる。大きな技術革新の一つや二つくらい起きて、風景が変わっていることだって考えられる。そんな変わった世界をソフィアは目の当たりにする。

色々と語りたいことはあるが……ソフィアから見た大きな変化①。

可愛がっていた子供(五歳)が大人になって聖騎士となり、超強くなってる。よちよち歩きくらいの子供だと思っていたら、気付けば歩くようになっていた程度の変化ではなく、剣を振る聖騎士となっていたという驚きの大変身。二十年という歳月の長さを物語っている。

しかも、その子はいつか目覚めたソフィアを守るために聖騎士になったというのだから涙を誘う。当時呼んでいたように、「ルーちゃん」と呼ぶと照れて恥ずかしげな表情を浮かべる辺り、超可愛い。

ソフィアから見た大きな変化②。

勇者パーティのリーダー・アークが、結婚して子供も授かり、ついでに街の領主となっていた。ソフィアが世界を救ってから色々あったらしいと、彼の話から伺える。まず、ソフィアが瘴気を浄化するために閉じこもった結界を、さっさと壊すべきではないかという者達を説得。結界を守るために領主となり教会を設立、いつかは浄化し終えて戻ってくることを信じていたようだ。これだけで本一冊書けるのではないだろうか。

その他、勇者パーティもすっかり老けてしまわれて。ただあまり力が衰えていないらしく、世界各地で残党狩りをしたり、研究に専念したりと頑張っているらしい。

ソフィアから見た大きな変化③。

聖女は魔物系モンスターと戦う上で必須な聖魔法の使い手である。他にも治癒魔法や強化魔法を使い、パーティーメンバーの力を底上げの役割を担う。どこに行くにしても必須と言っても過言ではない。

そんな聖女の実力が、年々低下の一途を辿っているらしい。

魔王いないし、聖魔法? 別にいらないじゃん? という平和ボケが進んだせいか。はたまた別の要因か。とにかくソフィアほどの実力がある聖女がもういない。後進が育ってない現在、魔物の動きが活発化するある実情も踏まえると、早急に対する対抗手段が求められる。

 

この第一巻ではかつての仲間達との顔合わせが主となる。それぞれがソフィアに対して抱いている感情の大きさが、二十年間積み重なり続けた思いが吐露されていく。そのそれぞれが重く、心にのしかかってくる。

しかもソフィアは二十年前の姿のままというのが、これまた憎い。

登場人物の中には、二十年前のソフィアに恋をしていた者もいる。二十年という時間はまた別の恋をして結婚するということもある。ソフィアに鞍替え……という無神経な者はいないが、それぞれ複雑な思いを抱えていることだろう。

これから先、二十年という時間を取り戻すかのように色々なことに挑戦していく。

例えば……魔王の残党狩りとか、魔物に蹂躙された国の奪還を単機で行うとか……何というかさすがは魔王討伐した勇者パーティーのメンバーというべきか。彼女の戦いはまだ終わっていないらしい。

面白い導入であった。

【前:な し】【第一巻】【次:第二巻