※ネタバレをしないように書いています。
この旅に目的地はない
情報
作者:支援BIS
イラスト:笹井一個
試し読み:辺境の老騎士 II 新生の森
ざっくりあらすじ
行き倒れた女騎士を助けたバルド達は、彼女に魔獣狩りの相談を受ける。騎士としての力を見せつけるために必要なことだと言うが、魔獣を狩ることは簡単ではなくて……。
感想などなど
騎士とはどうやってなるのか?
寝て起きていたら勝手になっているものではないのは当然として、血筋で決まるような単純なものでもない。強さは騎士としての必要条件かもしれないが、騎士であることを満たす十分条件とは言いがたい。
第一巻の冒頭に、バルドを殺すために雇われて、なんやかんやで一緒に旅をすることになったヴェン・ウリルはとてつもなく強い。作中の説明で「流れの騎士」というように説明されているが、正確に言うと彼は騎士ではない。
彼は依頼されて決闘を挑み、相手を殺す仕事を生業としていた。その強さだけはたしかで、尾びれ背びれ付いた噂が、彼を「流れの騎士」というように呼ばせたのだ。彼自身、「流れの騎士」というように自己紹介はしないであろう。
そんな彼と対するかのように、「人民の騎士」と呼ばれる辺境の騎士・バルドは、かつて人民に忠誠を誓ったことからそう呼ばれている。その近いに忠実に生き、自身が仕えた主の地を離れ、旅をすることになったとしても変わりない。
そんなバルドの生き様を見ていると、騎士とは自分が仕えるべき相手を決めた強者が、名乗ることのできる名なのではないだろうか、とふと感じた。そういう意味で、ヴェン・ウリルは騎士ではないと思う。
そんなヴェン・ウリルが騎士となる物語が、この第二巻における一つの柱だった。ただ強いだけではない、もっと何か別の魅力がある騎士・バルドの旅について行くこととなったヴェンが、何を学んでいくのか。
期待せずにはいられない。
そんな男ヴェンと同じように、騎士としての道を志す者がいた。彼女の名はドリアテッサ。ゴリオラ皇国のファファーレン侯爵家の娘として、姫を護衛する女武官という役職に就いた。
彼女は武芸の鍛練を積み、騎士となった。
ただ彼女は女騎士。稽古はされても試合には出ない。ましてや戦争に出ることもない。
彼女は強くなったかもしれないが、その強さをもってして勝利を掴んだことがただの一度もないのだ。そこで辺境競武会に出てみたい、と彼女はぽろりと漏らした。それが姫の耳に入り、彼女は出場者にエントリー。
しかし出場するには実績がいる。そのために魔獣を三ヶ月以内に狩って、その首を持ち帰るようにというチャンスが与えられたのだ。名前だけではない、騎士としてのプライドが彼女を突き動かした。
バルドは魔獣を狩ったことがあるが、それは彼の持っている魔剣であったり、これまでの経験といった強みがあったからこそ勝てた。十九歳という若き女性騎士が、簡単に魔獣など狩れるはずがない。
そこでバルドはヴェン・ウリルに、ドリアテッサの修行をつけるように言い渡す。彼女は魔獣を狩れるレベルにまで強くなれるのだろうか。
バルドの料理談義も健在だ。料理の一工夫で大きく味が変わる材達。これがまぁ美味そうで。山で採れる山菜や、各地を流浪していたからこそ知っているヴァンの料理など見所はたくさん。
美食と騎士道が学べる第二巻であった。