※ネタバレをしないように書いています。
妄想を実現させるだけの力を
情報
作者:東西
イラスト:逢沢大介
試し読み:陰の実力者になりたくて! 04
ざっくりあらすじ
父を殺してしまったローズは、母・レイナ王妃を守るためにドエナ公爵との結婚を受けるか否かの選択を迫られる。それを阻止すべくシドは動き出した。
感想などなど
シャドーことシドを、正義の味方と勘違いしている読者はいないだろうか?
……いや、さすがにいないか。ただ彼のこれまで行ってきた所業を並べ立ててみると、表には出てこないとはいえ、結果として正義の味方っぽいムーブをしているように見える。
魔人復活を阻止。
学園襲撃犯を撃退。
血の女王を撃破。
ただそれらを成し遂げた動機は、正義だとか誰かを守るためだとかではなく、純粋に『陰の実力者』として楽しみたいという欲求を満たすためだということを忘れてはいけない。
それが巡り巡って、世界の真実を言い当てたり、『シャドーガーデン』を発展させているに過ぎないのだ。いや、それも十分凄すぎるのだが……相変わらず彼の言ったこと=世界の真実という計算式は成り立ち続けることは、第四巻でも全く変わらない。
彼の部下達は「シャドー様は絶対に間違えない」と信仰心を高め続け、「彼は私たちには見えない世界を見ている」と勝手に理解度を上げていく。第三巻の後半では読者も良く理解出来なかったシャドー様の行動を、必死にくみ取ろうとした彼女たちの頑張りに敬意を評しつつ、この第四巻でもきっと振り回されるんだろうなと思う。
その予感は的中する。
ローズという女の子を覚えているだろうか。まぁ、覚えていない方はいないだろう。なかなかにインパクトのあるキャラクターである。
簡単に説明すると、『学校襲撃事件でシドに庇って貰って以来、シドとの駆け落ちを画策する姫君』から、『父親を殺害し逃げた先でシャドーに能力を与えられ、666番として新しい人生を歩むエルフ』となり、第四巻では『王国に連れて行かれ、ドエナ公爵と結婚させられる姫君』という波瀾万丈な人生を送っている女性である。
そもそも彼女が父親であるオリアナ国王を殺したのは、誰かに操られている傀儡であることを察したため。このままでは、国王を何らかの手段で操っている何者かの思惑のままになってしまう。それを阻止するために父を殺したのだ。
その覚悟は相当なものだった。そしてそのまま反逆罪で殺されるはずのところを守ったのが、他でもないシャドーである。彼はその一連の行動を、「良いアドリブだった」と振り返り、ローズの父親殺しを「王になるためにそこまでやるなんで凄いな」と思っている(やっぱりズレてるんだよなぁ……)。
そんなローズが、王国へと戻りドエナ公爵と結婚しようという話を聞いたシャドーは激怒する。「王になるために父親まで殺したくせに、どうしてドエナ公爵と結婚なんてするんだ!」と。
……? あぁ、そっか。シドはそういう勘違いをしていたんだった、と理解が遅れた読者もいたのではないだろうか。かくいうブログ主がそうである。シドが何を考えているのか、読者ですら追いつけなくなることが増えてきた今日この頃。シドはローズの元に駆け寄り、「なんで結婚なんてするんだ!」と問い詰める。
そのシドの行動を、ローズ目線で見ていこう。
かつて自分を庇って大けがを負い、駆け落ち一歩手前まで愛を育んだ相手が、「なんで結婚なんてするんだ⁉」と問い詰めてきた。あぁ、なんて熱い恋物語なのだろう。主人公が違えば、感涙必死の大長編恋愛活劇の幕開けである。
そんなシドの熱い後押しを受け、彼女は覚悟を決めた。
国王を操っている男はドエナ公爵である。読者目線では明かなのでネタバレもなにもない。分からない方は第二巻辺りから読み直してみよう。
第二巻から継続していたドエナ公爵の悪行の数々、そして最終目的がこの第四巻で明かされる。その怒濤の展開に驚かされた読者も多いはずだ。
なにせこの第四巻、後半の舞台は日本に移る。
……疑いたい気持ちも分かるが、シャドーの無茶な行動と、「なんかかっこいいから」という理由で行った行動で日本に転移してしまうのだ。これも言ったこと=真実になるシドだからこそなせる技か。
日本でも怒濤過ぎる展開が待っているので、是非とも読んでみていただきたい。これ以上のネタバレはされないように注意しよう。