工大生のメモ帳

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電波女と青春男 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

地球は狙われている

情報

作者:入間人間

イラスト:ブリキ

ざっくりあらすじ

田舎から都会に引っ越して来た丹羽真は、青春ポイントが大量に貰えることを期待していた。しかし、お世話になる家には、藤和エリオという布団を上半身にグルグル巻きにした自称宇宙人が住んでいた。

感想などなど

青春っぽいことをするとポイントが貯まっていく。このポイントが貯まったからといって何があるということでもないが、卒業後にふと思いを馳せることには困らなくなる。そんなことを考えながら学校生活に勤しもうとする男子高校生が、本作の主人公・丹羽真である。

この青春ポイントという概念により、「青春っぽいことをする」ということを目的に青春を頑張るという何とも言い難い状況が作り出され、それを阻害するように家でゴロゴロしている自称宇宙人の藤和エリオとの日常が、この作品のストーリーである。

まっすぐな青春を目指していたら、青春の形が順調に歪んでいくというような表現が、適切だろうか? なんとも分かりやすい。

神秘は神秘らしく謎に包まれて希望に溢れているべきであるように、青春は青春らしく青臭くあるべきなのだが、常に電波を放出し続ける布団女がいると上手くはいかないようだ。

 

「地球は狙われている」らしい。その発言者でありソース元の藤和エリオは、布団で上半身をグルグル巻きにしつつ、ピザを頭上の空いた穴から突っ込んで喰い、それによりチーズが髪にへばりつこうが気にせず生きている。

布団越しであるがゆえに、声が籠もって聞き取りにくいが、彼女は常に宇宙とのやり取りを欠かさないようだ。なんと勤勉なんだろう、と感心したいが、彼女はとある事件を起こして高校を中退、それからは布団で夜の街を出歩くマスコット? いや、天然記念物的な存在として、知らぬ者はいないという不名誉な知名度の高さを得ているのであった。

丹羽真が高校で会って親睦を深めていく、自転車に乗る時には黄色いヘルメットを欠かせない御船流子や、恐ろしいまでの身体の弱さをほこる前川さんなど、青春ポイント急上昇要因の面々も、さすがに藤和エリオという自称宇宙人のことは存じ上げているらしい。

今となっては見る影もないが、藤和エリオには女子高生だった時期があるのだ。二人とも――藤和エリオが覚えているかは置いておくとして、顔を合わせたことはあるかもしれない。

なにせ藤和エリオが起こした事件は、かなり厄介で、謎に満ちたものなのだから。

 

宇宙は謎に満ちている。だからこそ大気圏の外側を、そのまた先の月までも行こうとした。そこにはきっと神秘的な世界があると信じて。謎は希望であるべきなのだ。畏怖する対象にすべきではない。

自分の抱える大きな謎を、宇宙の神秘で隠そうとした。きっとそれは彼女なりの防衛本能で、いずれ暴くべきベールだったのだろう。丹羽真は青春ポイントを多大に投げ捨て、それを達成した。

失われた青春ポイントが、これから先の学校生活で回復していくことを願う。青春を知らぬまま電波女になったエリオも、きっとまだ間に合う。未来は謎で満ちているのだから、きっと神秘的な日々が待っているのだから。

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