※ネタバレをしないように書いています。
地球は狙われている
情報
作者:入間人間
イラスト:ブリキ
ざっくりあらすじ
自称宇宙人の藤和エリオが、社会復帰のためにバイトをしたいと言い出した。その声に応えるためにバイトを探すが、布団グルグル巻きで歩き回ったことは街の皆が知るところであって、彼女を雇ってくれるようなところはなかった。そんな中、女々がバイト先として近所の駄菓子屋を見つけてきてくれたことで、エリオは働き始めることに。
感想などなど
人間は一週間も引きこもっていると、声を出すことができず、まともな会話ができなくなる。これはブログ主の体験談である。
やはりどんな理由であれ外に出て、人と話す機会を得るということは、人間らしく生きる上で最低限必要な行為であると実感した。人は人と接することで、人となり得るのだ。
藤和エリオは高校を中退し、母親の女々さんとも会話らしい会話をせず、布団グルグル巻きで夜の街を歩き回るという社会から逸脱した生活を送ってきた。そこからいきなり社会に放り出され、「労働して金を稼げ」「税金を納めろ」と言われたところで無理である。
なにせ会話がままならない。仕事の話をしているつもりが、宇宙という壮大な神秘な話になっても困る。信じて送り出した部下が、布団でグルグル巻きになって街を歩き回っていても困る。
最低限度の生活を送るためには、宇宙人ではなく、地球人にならなければいけないのだ。郷には入れば郷に従え、とも言うであろう。藤和エリオが例え空を飛んでも、ここは地球で重力があるという事実に変わりはないのである。
さて、第一巻で自転車で海に飛び込んだ藤和エリオ。社会復帰のために、地球人を目指すの巻。
できることならネコみたいに自由気ままに寝て生きていきたいが、社会に所属する人間なので労働からは逃れることができない。彼女は年齢的に学生だが、学生を飛び出してしまったのだから仕方がない。自分が蒔いた過去は、例えどんなにゴミだとしても、自らの手で刈り取らなければいけないのだ。
しかし、仕事をするにしても選ばれなければいけない。自己分析をして、履歴書の自己アピールの蘭を埋め、自分が向いていると思う会社に提出。試験や面接を経て、選ばれた者だけが仕事をすることができる。この世の全ての人間に仕事を与えることが理想なのだろう、しかし、それができていないのが実情であるし、会社にも雇う者を選ぶ権利があるのだ。
結論として……エリオを雇うような心の広い店はなかった。
まぁ、彼女にまともな接客ができるとは思えない。実際できない。
彼女の悪名は世間で知らぬ者はいないほどに知れ渡っている。そんな悪評を店に取り入れようという物好きはいなかった。
そんな中、珍しくファインプレーを放ち、エリオの働き口を用意した女々であった。場所は近所の駄菓子屋。相当にお歳を召したおばあちゃんが店主で、エリオほどではないにせよ、そこそこの電波を放っているお方であった。
スタンド使いはスタンド使いと惹かれ合うように、電波は電波を引き寄せる運命なのかもしれない。
この第二巻は丹羽視点だけでなく、女々視点、リューシ視点、前川さん視点なども加わって展開されていく。
大人になって頭が良くなって、忘れてしまった馬鹿なことに、全力で打ち込む笑顔が、とても魅力的な第二巻であった。