※ネタバレをしないように書いています。
無自覚世直しファンタジー
情報
作者:秤猿鬼
イラスト:KeG
ざっくりあらすじ
囚われたエルフ族達の居場所を知ったアーク達は行動を開始する。しかし、研究者のエルフに協力して魔獣を捕縛したり、盗賊から人々を守ったりと寄り道をしつつ、「神聖レブラン帝国」を目指す。
感想などなど
これまでエルフに対して酷いことをする人間しか出てこなかった。ダークエルフの戦士・アリアンが初対面のアークを信用しなかったのは、それまで人間から受けてきた差別や侮蔑といった経験から考えると仕方のないことだったのだろう。
アークが美味い飯に舌鼓をうっている間にも、囚われたエルフは辱められている。そんなエルフ達の居場所が分かったとなると、行動は迅速にせねばなるまい。ただその道中に困っている人やエルフがいれば助けるのが、世直し旅というものである。
例えば。
とあるエルフが学者として、領主に屋敷を用意して貰って生活していた。その男の名はカーシー・ヘルド。魔獣の研究をしていたところを領主に興味を持たれ、エルフであるということを知ってからは屋敷を買い与えてくれた領主に協力し、魔獣研究をしているのだという。
そんな変わり者のエルフの行動に、疑問を抱いたアリアン。人に協力し魔獣の研究をするということは、人々が魔獣に対する対抗手段を手に入れるということ。彼女の疑問はもっともだろう。
そんなアリアンに対して、カーシーは人よりも早く魔獣の研究をして、エルフに対する意識を変えていくことにこそ意味があると語った。そんな彼の思惑にアリアンが納得したかは定かではない。しかしサンドワームの調査に協力して欲しいというカーシーの依頼を受けることに決めたアリアン。傭兵であるアークは、当然それに従う。
この行動がこれから先、誰かの命を救うかもしれない。
これまで亜人と人の間にある大きな壁ばかり見せられてきた。エルフ狩りという言葉が使われるように、亜人は狩って売買するものとして扱われている。そんな亜人と人がわかり合うことなど無理だと思われていた。
しかしアークとアリアンは、ただの傭兵と雇い主とは思えないような関係性を構築している。カーシーと領主の関係も、研究者と資金提供者という枠組みで収めて良いものではないだろう。
道中にて、エルフと人が結婚しているという様子も確認できた。てっきり囚われていると思っていたエルフが、人間の男と結婚しようとしていたのだから、アリアンは鳩に豆鉄砲を喰らったような顔をしている。
二人の様子や、アークやアリアンとの関係性を見ていると、亜人と人間はわかり合うこともできるのではないかという気がしてくる。アークの世直しも決して無駄ではないと思えるような展開が続いていく。
エルフ解放が第三巻、および本作の大きな柱である。ただ世間にはびこる悪は、それだけではない。どうやら最近になって奴隷が高く売れるようになったことで、人攫いの盗賊が活動的になったらしい。
そんな危険地帯に高く売れそうな超絶美人のダークエルフ(=アリアン)が来たとなると、彼女をさらおうと動きだザないはずがない。「ぐへへ」という嫌らしい笑みは、すっかり見慣れてしまった。
ただ相手は選ぶべきだった。隣の馬鹿でかい騎士が見えていなかったのかな?
盗賊団がボコボコにされる光景はスカッとするものである。しかも敵の闇が深ければ深いほどに。徐々に敵の裏にいる闇の大きさが分かってくるのが、この作品の楽しみの一つなのはブログ主だけではないだろう。
その辺り、これまでのエピソードとどう絡んでくるのかは読んでからのお楽しみである。
これまでの戦闘はかなり大味であった。敵の強さが大したこともないというのもあるが、アークの技がだいぶ一辺倒だったことは否めない。大抵、適当に瞬間移動して、剣を適当に振っておけば勝てたのだから仕方あるまい。
この第三巻ではわりと大技を使ってくれる。つまりはそれくらいの強敵が登場するということである。やはり強者は大技を大盤振る舞いして欲しいと思うのは、読者の性であろう。
アニメでここまでやってくれることを、少々期待していたりする。かなり物語が進展した第三巻であった。