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【漫画】鬼滅の刃1 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

情報

作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 1

ざっくりあらすじ

山奥で家族と過ごしていた少年・竈門炭治郎が、麓の街で炭を売って帰って来ると、鬼に家族が皆殺しにされていた。生き残るも鬼になってしまった妹・禰豆子を人に戻すための第一歩として、鱗滝左近次に修行を付けて貰うことに……

感想などなど

鬼という異形の存在を、日本人はいつしか刷り込まれる。節分では豆をぶつけて払い、避けるべき方角のことを鬼門と呼んだりする。ともに払うべき対象として、忌み嫌われる存在として日常に溶け込んでいる。

大抵の人が思い浮かべる鬼の容姿も一致するはずだ。頭に角が生え、筋骨隆々の大きな身体を有し、腰布一枚に金棒を担いでいたりするのだろう。少なくともブログ主はそんな絵を思い浮かべる。

この「鬼滅の刃」はそんな鬼という存在に、数々の設定を加えることで厄介極まりない人類の怨敵として描ききっている。

例えば。

鬼は人肉を喰らう。冒頭にて、街で炭を売って戻って来た丹治郎の眼前に広がる血の海は、鬼による襲撃を受けたことが原因だ。鬼にとって、人は食料でしかないのだろう。女だとか子供だとかは関係ない。

そんな人肉を喰らう鬼は、人が鬼の血を浴びて適応してしまった者がなってしまう成れの果てであることが語られる。つまり丹治郎の妹・禰豆子は、鬼の血に適応してしまって鬼になってしまったのである。となると人肉を喰らいたいという欲求に駆られてしまうのだ。その相手が例え、家族であろうとも……。

さらに鬼はただ首を切り落としただけでは死なず、人だった頃とは比べものにならない力を手に入れる。疲れなんて知らないし、老いることもない。人は鬼に一方的に喰われるしかないのだろうか。

そんな鬼の数少ないが致命的な弱点が日光である。当たればボロボロに崩れ落ちて消え去る。だからこそ人が寝静まった夜の闇に乗じて鬼は現れ、人を喰っていく。時代背景は大正時代ということもあり、田舎は街灯や電気なんてないだろう。夜の闇は、本当に一寸先も見えないほどに暗くなる。そんな状況下、人が鬼に抗うすべなどない。

 

さて、そんな鬼になってしまった禰豆子。どうにも彼女は普通の鬼とはどうにも様子が違うようだ。

先ほども書いたように鬼は人肉が大好物。好物というよりは、喰わないと生きていけない食料だ。人が数日食い物がなければ辛いように、鬼にとっても人が喰えないと辛い。目の前に食料が置かれている状態で放置されることが辛いように、鬼の前に人を置いておいて放置しておけば、さぞかし辛かろう。

禰豆子が置かれている状況はそれだ。兄であろうとも人は人、食い物である。

これまで鬼を狩ることを生業にしている鬼殺隊の一員として、数多くの鬼を見てきた富岡義勇は語る。『飢餓状態になっている鬼は親でも兄弟でも殺して食べる』『今までそういう場面を山ほど見てきた』

それでも禰豆子は兄である丹治郎を喰わない。むしろ守るような行動を――。

そんな状況に希望を見出したのか、禰豆子を狩ることを止め、鱗滝左近次という男を紹介して彼の手助けをするようになっていくことになる。

 

話の大筋としてはこんな感じ。個人的な印象として、丹治郎の精神が既に完成されきっていることが驚きであった。例え家族を殺されていたとしても、生き残っている禰豆子を背負って助けようという胆力が働く。例え彼女が鬼と化していて牙を向いてきたとしても、「助けてやれなくて ごめんな」と自分のことよりも禰豆子のことを思う優しさがある。

鱗滝左近次の下で修行し、鬼と戦えるような力を身につけようとする際だって、ただひたむきに努力する姿勢が描かれる。サボる描写どころか、サボろうとする姿や心境すらない。

彼は優しく真面目で真摯な男だ。そんな彼のことを応援したくなるのは自然な流れなのではないだろうか。

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