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【漫画】鬼滅の刃14 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

情報

作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 14

ざっくりあらすじ

感情ごとに分裂していた上弦の肆・半天狗が、集結して炭治郎たちを襲う。一方、霞柱・時透無一郎は上弦の伍・玉壺との戦いで、失っていた記憶を徐々に取り戻していき……。

感想などなど

上弦の鬼は、これまで百、二百という人間を喰らってきた。その中には柱が何人も含まれていることだろう。だからこそ、柱を圧倒できる力というものを手に入れることができたのだ。ただ無為に長く生きているだけが上弦の鬼ではない。

その厄介さは上弦の鬼の力を見ていれば分かるだろう。

半天狗は、自身の感情を分裂させた鬼に戦わせ、自分は小さくなって逃げまどうというシンプルだが厄介な方法で生き残ってきたようだ。もしも見つけたとしても、上弦の鬼というだけあって、首に刃を当てても簡単に斬ることができないというのは、これまた厄介さを際立たせる。

玉壺もそうだ。霞柱・時透無一郎を相手に余裕を見せる。こちらも上弦というだけあって、多くの人を喰らってきたのだろう。壺から壺へ移動する技で相手を翻弄し、空中を飛んで毒針を飛ばしてくる金魚を使役し、水に相手を封じ込めるという技まで使うというバリエーションの豊富さがあまりに厄介である。

双方の戦いで、鬼殺隊が苦労しそうだ。だが、そんな戦いも終わりが見えてきた。

 

この第十四巻は、前半で「霞柱 VS 玉壺」、後半で「炭治郎たち&恋柱 VS 半天狗」の戦いが描かれていく。見所はいろいろあるが、個人的に一番のおすすめは、前半戦で戦闘と同時進行で描かれていく、霞柱の失われた過去に関するエピソードだ。

これまで冷酷な人間として描かれていた霞柱。その大きな理由は、記憶を失っていることが挙げられる。その失われた過去が、炭治郎と会話した内容を皮切りにして蘇っていく。

「なんで炭治郎との会話で取り戻されていくのか?」

どうやら彼の父親も、炭治郎と同じような赤い瞳だったようなのだ。

そして語られる彼の過去。それは1話で収まるような短い話だ。具合が悪い身体を押して働いて死んだ母、嵐の中を薬草を取りに出て死んだ父。そして山奥に残された無一郎とその兄、二人の息の詰まるような苦しい生活。

兄は「無一郎の無は、”無能” の ”無” 」「無一郎の無は、”無意味” の "無"」というように弟を責めた。代々が剣士としての家系だったらしく、剣士となるように誘いを受けるも断った兄は、「剣士として人たちを助けてあげようよ」という弟に対し、「俺たちにできること 犬死にと無駄死にだよ」「父さんと母さんの子供だからな」と突っぱねる。

兄は人として優しくするにも才能がいると語った。きっとその言葉は正しい。

弟である無一郎が記憶を失うきっかけであり、兄が死ぬ事件――鬼の襲撃が起きたのは、そんな時だ。死の間際に兄が語った、忘れてしまっていた言葉が、記憶を取り戻した今は無一郎を突き動かす。

戦う意味、背中を押してくれる兄の言葉を得たとき、無一郎は覚醒する。そこから始まる無一郎 VS 玉壺の戦いは、それはそれは圧倒的であった。

 

さて後半では、これまで分裂していた感情たちが一人に集結し、超強化された半天狗の分身が現れたことで、追い詰められた炭治郎たちのもとに、恋柱・甘露寺蜜璃がやって来ての半天狗との戦いになります。

一気に強くなった鬼に対して、も柱がやって来て超強化された鬼殺隊で迎え撃つが、相手は上弦の肆。そう簡単に戦況はひっくり返らない。だが、半天狗の分身を柱一人に任せ、炭治郎たちは本体の討伐に集中できるというのは大きい。

弱者面して逃げまどう上弦。そんな上弦に対して、罪を償わせると怒りをあらわにして迫る炭治郎。その鬼ごっこに決着はつくのだろうか。

上弦との戦いはいよいよクライマックス。印象に残るセリフの多い十四巻であった。

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