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【漫画】鬼滅の刃19 感想

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※ネタバレをしないように書いています。

絶望を断つ刃となれ

情報

作者:吾峠呼世晴

試し読み:鬼滅の刃 19

ざっくりあらすじ

カナヲと伊之助は上弦の弐・童磨との戦いは佳境へ。強力な血鬼術に苦しめられるが、その逆境を覆したのは――。

感想などなど

個人的なベストバトル、水柱・富岡義勇と炭治郎 VS 猗窩座が終結した第十八巻。『透明な世界』という新たな概念が登場し、インフレ化したかと言われればそういうこともない。絶妙なバランスで構成されているように感じる。

猗窩座が鬼になる前の物語――狛治としての生き様も描かれており、自身の弱さと向き合って克服し、そして絶望するまでの悲劇が読者の心を打ったことだろう。無惨の言葉を振り切って、最後には炭治郎に対して感謝しながら自ら死んでいった。

強くなりたいためだけに、鬼として鍛錬を積んできた。その理由を忘れてしまったから、きっと炭治郎に負けたのだろうと何となく思う。だが理由を覚えていたら、鬼として強くなろうということは思わなかったのだろう。鬼というのは、そういった自己矛盾を抱えた悲しき生物なのかもしれない。

その自己矛盾を受け入れた者が、鬼としての強者と呼べるのかもしれない。

例えば、カナヲと伊之助が相対する鬼・童磨は、鬼になる前の記憶というものを保持している。それでも人を喰らうということに躊躇いはなく、むしろそれを救済と考えているのだから、狂っていると言わざるを得ない。

人の心がないからこそ、伊之助の母を喰らった過去を陽気に話す。生きる意味がなかったという言葉を口にできる。

だからこそ、滅茶苦茶強い。

 

上弦の鬼はそれぞれ特殊な血鬼術を使っている。最初に討伐した上弦の鬼・堕姫は、兄弟の首を同時に落とさなければいけなかった。その次に遭遇した半天狗、玉壺も、それぞれが初見殺し的な能力を使っていた。

猗窩座の場合は、異常なほどの再生能力の高さと、攻撃を察知することのできる羅針が脅威だったと言える。これまで多人数とも戦闘したことはあったのだろうが、それを全ていなすことができたのは、この強みがあったからであろう。

位的には彼らよりも強いとされている上弦の弐。彼の強みとは何か。

それは、相手の呼吸を封じることのできる肺が凍り付くような冷気攻撃だろう。剣士はそれぞれ、〇〇の呼吸というように、呼吸によって身体の強化、多様な技を使うことができるようになっている。その呼吸を塞ぐことができるとなれば、これは勝ったも同然。

カナヲは胡蝶しのぶにその血鬼術のことを聞いていたため、伊之助は敏感すぎる感覚により吸ってはいけないことを察知した。それぞれが技の特性を看破し、対応できたからこそ今でも死なずにすんでいる。

もしもカナヲが少しでも遅れていたら、伊之助ではなく善逸だったとしたら、この戦いは負けていた。ほんの少しの運命で、命を繋いでいるという綱渡りが行われているということが良く分かる。

とはいっても。童磨の強さはただそれだけではない(だからこその”弐”である)。豊富で多様な技は、弐であるということを、その身に実感させられる。童磨と同じ強さの分身を複数も生み出し、それぞれが協力して攻撃を仕掛けてくる。

一体いるだけでも厳しいのに、それが二体、三体ともなれば勝ち目はない。戦闘はその分身に任せ、自分だけ逃げようとする童磨。そんな卑劣で凶悪な鬼を追い詰めたのは、意外な人間であった。

人の思いの強さが、鬼にはない覚悟の強さが、この勝利を引きずり出したのだと思う。白熱の戦いであった。

 

そんな上弦の弐との戦いを終えると、次は上弦の壱である。最初にそいつと相対したのは、玉壺を単独撃破した霞柱・時透無一郎である。霞の呼吸という独特な緩急が特徴的な呼吸を操り、他の柱達からも一目置かれる天才だ。

だが、彼の技は上弦の壱には全く通用しなかった。

上弦の壱の名は黒死牟。目は複数あり、鬼らしい外観に変貌していた。元は鬼狩りの剣士であったらしい。その腰には刀が見える。

そんな上弦の壱が扱う呼吸は、月の呼吸。彼が剣を一度ふるえば、あの時透無一郎の片腕が飛んでいく。その一瞬過ぎる展開に、読者はただただ驚かされるばかりだ。その上、時透無一郎は彼の子孫だと語るのだから、驚きの連続である。

鬼としての再生能力の高さ、月の呼吸の剣士としての強さ……それらが恐ろしいまでの強さを生み出している。そんな鬼に挑むのは、片腕を失った時透無一郎と、遅れてやってきた岩柱、鬼を喰って鬼狩りを続けていた玄弥、そして彼の兄である風柱である。

岩柱と風柱は、柱の中でも二強とされていた。そんな二人のタッグが、上弦の壱を追い詰めることができるのか。

まだ戦いは始まったばかり。皆がもう既に血を流しているが、死んではいない。希望はある。

先が気になる幕引きで終わり、緊張続きの十九巻であった。

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